旅する&恋する! 韓国ドラマ
#04
韓国ドラマ考察〈2〉LOVE! 恋する料理男子たち
文・『韓国TVドラマガイド』編集部/高橋尚子
『バリでの出来事』の「男の手料理」対決
料理男子が流行して久しい。ここ最近は韓国でも人気なのだとか。果たして、料理する男子はそんなに魅力的なのか? 個人的には、「別に…」なのだが、韓国ドラマにおける「恋する料理男子たち」については、どうも気になってしまう。なにせ、韓ドラの男たちは、恋に落ちると料理をし始めるのだから!
その最強例が、名作『バリでの出来事』だ。主人公は、愛以外、手に入らぬものはない高慢な財閥御曹司ジェミン(チョ・インソン)と、人生逆転を狙うたくましき孤児スジョン(ハ・ジウォン)、母子家庭の貧しい境遇から自力で這い上がってきたエリート、イヌク(ソ・ジソブ)、挫折知らずの金持ち令嬢ヨンジュ(パク・イェジン)。つまり、韓国的カーストでいう最上層と最下層。およそ交わるはずのない世界に生きる4人の男女が、「偶然」という名の「運命」により出会ったことから始まる愛と欲望、その果ての破滅を描いていく……。と、ざっくり言えば、そんなストーリーだが、一度観たら最後、抜けられない中毒性ドラマでなので、ぜひ観て頂くとして。
このドラマにハマる最大のポイントは、ずばり2人のいい男対決。放送当時、「ジェミンか、イヌクか」論争が巻き起こったほどだが、そんな真逆の男たちの違いを顕著に表したシーンがある。それが「男の手料理」だ。
まずは、その1。料理は家政婦か料理人が作るもの、な御曹司ジェミンの場合。
愛するスジョンを強引に高級マンションに囲った彼は、泥酔して部屋に戻らぬ彼女を迎えにいった翌朝、おそらく人生初の料理に奮闘する(13話)。長身の彼には丈が短すぎるエプロンをして(可愛い)、料理本を片手に「キュウリって、どうやって薄く切るんだ?」とかなんとかブツブツ言いながら、スジョンのために朝食を作るのだ。
「これは、ヨーロッパ旅行で食べたグラーシュというハンガリー料理だ」と、得意げに勧めるジェミンだが、口にした途端のスジョンの表情から察して相当なマズさ。そりゃ、「塩、少々」と書いてあるところ、ざばーっと入れていたのだもの。自分でも食べてみたジェミンは顔をしかめるも、黙々と(我慢して)食すスジョンに「こんなまずい料理、よく食うな。おかわりを?」と、満面の笑み。これが憎めないのだなぁ。彼女を喜ばせようという気持ち、料理はできないけど、してあげようとする男の気持ちが愛らしく、心くすぐられてしまう。
ジェミンのグラーシュ『バリでの出来事』©SBS
一方、その2。幼い頃から母親の手伝いをしてきて料理も手馴れたもの、な有能男子イヌクの場合。
スジョンと一緒に映画を観に行った(要はデート)帰り、「給料前なので家で手料理をごちそうするわ」という彼女に、イヌクは「俺が作ろう。何がいい?」と自分の部屋に招く(8話)。ちなみに、わたくし、「何がいい?」に撃沈♡
「チャーハンでいいか?スパゲティ?」なんて言いながら、あっという間に作り上げたのが、キムチチャーハン目玉焼きのせ!どこぞの国の料理のように洒落た料理ではないけれど、一口食べてすぐに「おいしい!」とスジョンが感動するほどの味。できる男はどこまでもできるもの。このときはチャーハンだったが、スパゲティも作れるのは確実で、奥様が忙しい時や具合の悪い時、彼ならさくさくって手伝ってくれるのよ、あぁ素敵!
(※「チャーハンでいいか?スパゲティ?」のくだりは韓国オリジナル版のみ)
イヌクのキムチチャーハン『バリでの出来事』©SBS
『仮面』の御曹司が振る舞う手料理
料理ができる男・できない男、いずれが好みかはさておき。韓ドラ界では、「恋する男と料理」は切っても切れない関係にあるらしく、最近のドラマでも遭遇した。それは、『仮面』の潔癖性御曹司チェ・ミヌ(チュ・ジフン)。政略結婚した妻(スエ)に惹かれていくミヌは、妻も一緒の社員旅行で、皆に手料理を振る舞うことになる(13話)。
妻にいいところを見せようと、そんなに上から?と思うほど高くから塩コショウを振ったり、ものすごいスピードで野菜を切ったり(社員曰く「変な切り方」)、料理をする様は奇妙なことこの上なし。
完成して皆に振舞ったのが、ステーキ・野菜ソテー添えと、ジェミンのグラーシュに張る小洒落感なのだが、一口食べて固まる妻、「よくこんな味が出せますね」と社員。つまり、食べられたものではない。それでも、懸命に料理ができるふりをして妻を喜ばせようとする姿は、愛さずにはいられないのだなぁ。
御曹司ミヌの手料理『仮面』©SBS
いずれにせよ、苦労知らずの御曹司の手料理は、「高級料理の真似・口だけ形だけ・まずい」に、好きな女のために初めて挑戦する純な気持ちが加わり、結果、美味しくないけど「嬉しい」料理になってしまう、という法則があるようだ。
一方、イヌクに代表されるように、何かと器用な見守り男子は、料理も得意で、愛する人のためにさらりと作ってあげるケースが多く、その「さらり」がまずいのか、なかなか愛が報われない。
『美しき日々』の報われないキムチチャーハン
古い作品になるが、日本でも大ヒットしたラブストーリー『美しき日々』に、そんな報われない料理男子がいる。それは、イ・ミンチョル(イ・ビョンホン)の異母弟で、キム・ヨンス(チェ・ジウ)を巡る恋敵イ・ソンジェ(リュ・シウォン)。帰宅した彼は、イ家に住み込みの家庭教師として働き始めたヨンスを見つけ、彼女のためにキムチチャーハンを作ってやる(6話)。
ヨンスに手伝わせつつ、手際よく作り上げたそれは、目玉焼きのせ&海苔まぶし。仲良く床に座って、フライパンからチャーハンを楽しそうに食べる2人は、それを目にしたミンチョルが嫉妬の眼差しを向けるほど、いい感じ(個人的には、このミンチョルにドキドキきゅ~ん)。とにかく、ソンジェの手作りキムチチャーハンでヨンスが笑顔になったのは間違いないが、その愛は受け入れてもらえないのだ。
ソンジェのキムチチャーハン『美しき日々』©SBS
しかし、料理ができる男の定番メニューが、キムチチャーハンというのは、韓国ならではか。目玉焼きをのせると美味いというのも、韓ドラ料理男子から学んだ知識。
ちなみに、恋する女たちが想いを寄せる男のために作る手料理は、チゲとキンパプ(韓国風海苔巻き)が定番で、男子がそれを作ることは稀。逆もしかりで、女子がキムチチャーハンを作るシーンには出合わないことを考えると、キムチチャーハンは「THE男の手料理」なのだろう。
が、残念ながら、昨今、この傾向は変わりつつある。男のキムチチャーハンは影を潜め、どのドラマでも男たちはこぞってパスタを作るようになった。見た目はおしゃれなのだが、どうも違う。目玉焼きをのせた美味キムチチャーハンか、見た目はしゃれた激まず料理を作ってこそ、「男ってそうよね♡」と心くすぐられるのに!
そんなこんなで結論は、男たちよ、できてもてきなくても、愛する女のために一度は料理を作れ!(できないほうが、いとおしいが)
●DVD情報
『バリでの出来事』
〈シンプルBOX 5,000円シリーズ〉発売・販売元:エスピーオー http://www.cinemart.co.jp/dc/
[2004/全20話]出演:チョ・インソン、ハ・ジウォン、ソ・ジソブ他
『仮面』
DVD-BOX1&2 発売・レンタル中
発売・販売元(セル):エスピーオー http://www.cinemart.co.jp/dc/
発売・販売元(レンタル):カルチュア・パブリッシャーズ http://culture-pub.jp/
[2015/全20話]出演:スエ、チュ・ジフン、ヨン・ジョンフン他
※レンタルは〈スペシャルエディション版〉全14巻(28話)
*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)予定です。次回もお楽しみに!
*本誌『韓国TVドラマガイド』vol.66、好評発売中! こちらもぜひお読みください!
『韓国TVドラマガイド』編集部 韓国のTVドラマ、映画、K-POP総合情報誌『韓国TVドラマガイド』(双葉社スーパームック・偶数月22日発売)編集部。本誌では人気スターのインタビューやドラマの詳しい解説、DVDリリース情報、テレビ番組表、現地エンタメの最新情報も掲載。編集部公式ツイッターはこちら→https://twitter.com/kankoku_tvguide |