料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#48
フランス・モンサンミッシェル
文と写真・山本益博
世界遺産「モンサンミッシェル」と
カンカルのレストラン「レ・コキャージュ」に
世界遺産の「モンサンミッシェル」へ行ってまいりました。
と言っても、第1の目的は、「モンサンミッシェル」からほど近いカンカルにあるレストラン「レ・コキャージュ」です。
パリからTGV(新幹線)で終点のサンマロまで行き、そこからカンカルまではタクシーです。かつて、このカンカルには「メゾン・ド・ブリクール」という3つ星のレストランがありました。ブルターニュのこの一帯は海の幸が豊かで、とりわけ「オマール・ブルー」と呼ばれるオマール海老は世界一と呼ばれるほど有名です。このオマール・ブルーや海の幸に香辛料を巧みに組み合わせたオーナーシェフ、ピエール・ロランジェの料理は世界中の食いしん坊を魅了しました。
カンカルの海岸沿いのホテルに泊まり、翌日は、モンサンミッシェル観光です。じつは、15年前ここへやってきたとき、忘れ難い経験をしました。家族3人と姉と呼ぶほどの親しい知人の4人で出かけたのですが、レンタカーの車を野っぱらの駐車場にとめて、あの長い土手の道を歩き、モンサンミッシェルに着いたのはいいのですが、しばらくしているうちに、海の向こうに黒い雲がぽつんと見えると、みるみる大きくなって近づいてくるではありませんか。これはいけない、すぐに車に戻ろうと帰り始めたのですが、土手のところで土砂降りの雨にあってしまいました。駐車場に戻っても、雨の中、どこに自分たちの車があるのか分かりません。ずぶぬれになりながら、ようやくのことで車に戻りました。こういう思い出は決して忘れられないものです。
モンサンミッシェル遠景
モンサンミッシェルを背景に
昼ご飯をモンサンミッシェルの名物レストラン「メール・プーラール」で巨大なオムレツを食べました。当然、魚介の料理も豊富で、モンサンミッシェルのムール貝は、日本に輸入されるほど有名です。
名物のオムレツ
「メール・プーラール」の店頭で
次回は、東京です。
*この連載は毎月25日に更新です。
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山本益博(やまもと ますひろ) 1948年、東京・浅草生まれ。早稲田大学第ニ文学部卒業。卒論が『さよなら名人藝―桂文楽の世界』として出版され、評論家としてスタート。幾度も渡仏し三つ星レストランを食べ歩き、「おいしい物を食べるより、物をおいしく食べる」をモットーに、料理中心の評論活動に入る。82年、東京の飲食店格付けガイド(『東京味のグランプリ』『グルマン』)を上梓し、料理界に大きな影響を与えた。長年にわたる功績が認められ、2001年、フランス政府より農事功労勲章シュヴァリエを受勲。2014年には農事功労章オフィシエを受勲。「至福のすし『すきやばし次郎の職人芸術』」「イチロー勝利への10ヶ条」「立川談志を聴け」など著作多数。 最新刊は「東京とんかつ会議」(ぴあ刊)。
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