料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#05
食の宝庫・延岡へ
この度の「平成28年熊本地震」により被災された皆様、ならびにそのご家族の皆様に心よりお見舞い申し上げます。
皆様の安全と被災地の一日も早い復興を、心より お祈り申し上げます。 TABILISTA編集部
海の幸、里の幸、山の幸が豊富で、しかも質が高い。
何世代にもわたって土地の知恵が結集し根付いた「のべおかテロワール」へ
■不便さも気にならない、食の宝庫・延岡
延岡は、昨年高速道路が開通するまで、九州の「陸の孤島」と呼ばれていました。
東京から出かけるとなると、宮崎まで飛行機で飛び、空港から特急に乗り換えて1時間20分ほどかかります。それが例えば、佐賀から延岡へ向かうとなると4時間近くかかったのだそうです。こんな不便だった延岡を私が気に入るきっかけになったのが「エンジン01文化戦略会議」の「オープンカレッジ in のべおか」でした。作曲家の三枝成彰さんや作家の林真理子さんらが中心となって構成されている200人ほどのボランティアグループです。それぞれのジャンルの第一線で活躍しているメンバーが、年に1度、日本のどこかへ出かけて、シンポジウムをはじめ講座やハローワークを開く「文化祭」です。昨年11月にそれが延岡で開催され、私が大会委員長を仰せつかりました。
1年間に何度も延岡へ足を運ぶうちに、延岡が「食の宝庫」であることがわかりました。
豊かな土地の恵まれた食材ばかりか、優れた人材が何人も「いい仕事」をしている現場を目の当たりにしたのです。
日本料理「きたうら善漁。(ぜんりょうまる)」の吉田善兵衛さんはじめ「ビストロ・セルドール」の濵野弘太郎シェフ、料理旅館「髙平屋」主人の髙平新之助さんなど、気鋭の料理人が市内のあちこちにいらっしゃいます。ジャンルこそ違え、これらの若き料理人たちが力を結集したら、九州はおろか、全国に発信できる「美味しい革命」を起こすことができるのではないかと確信しています。
海の幸、里の幸、山の幸が豊富で、しかも質が高い。何世代にもわたって土地の知恵が結集し根付いた文化をフランスでは「テロワール」と呼びます。それに倣えば「のべおかテロワール」と名付けたいほどです。
延岡まで出かけるのであれば、1泊ではもったいないので、本当は2泊お薦めしたいところです。もしも、1泊しかできないのでしたら、宿は、延岡市内から北へ30分ほど車を走らせた北浦の「潮香ノ宿 髙平屋」へ泊まることをお薦めします。北浦の海が眼下に望め、その晩は質の高い日本料理をゆっくりと味わう楽しみが待っています。朝食も膳には余計なものが並ばず、新鮮な魚と獲れたての野菜で大満足です。
そして、昼は市内へ戻り、「ビストロ・セルドール」でフランス料理のランチです。初夏からの鮎を使ったパスタは絶対に見逃せない逸品です。
もしも、もう1泊市内で宿泊する余裕があるのでしたら、ぜひともその晩は家内も大のお気に入りの「きたうら善漁。」へ出かけてみてください。カウンターで展開される料理は、食材に最大の敬意を払った「のべおかテロワール」の日本料理の醍醐味を満喫できるはずです。市内の宿でしたら「メリージュ」がお薦めです。
■宿泊 「潮香ノ宿 髙平屋」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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雄大な北浦の海 | 海を見渡せる眺めのいいお風呂 | 新鮮な魚と獲れたての野菜が食べられる朝食 |
■日本料理 「きたうら善漁。」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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さわらと白菜 | 、ゆがいたほうれん草を添えた鯛のお造り | ご主人の吉田善兵衛さん |
■フランス料理 「ビストロ・セルドール」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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鮎を使ったパスタ |
【店舗情報】