料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#03
北陸新幹線で冬の富山へ
富山へ出かける最大の魅力は、フランス料理の「レヴォ」と日本料理の「ふじ居」です。
富山には、日本の10指に入ると言っても過言ではない料理人と、いま私が最も惚れ込んでいる、類まれなる才能の料理人がいます。
■上質な北陸の食材と才能溢れる料理人
北陸新幹線が開通したおかげで、富山へ出かけるのがとても便利になりました。
とりわけ冬は富山キトキト空港が雪のため、飛行機が欠航になることもありましたが、そんな心配がなくなりましたし、帰る日の夕食も慌てなくても済むようになりました。
富山へ出かける最大の魅力は、フランス料理の「レヴォ」と日本料理の「ふじ居」です。
「レヴォ」は富山市外から離れた大沢野にあり、富山空港からは近いのですが、JR富山駅からは車で30分ほどかかる神通川の川沿いに立つ「リバーリトリート雅樂倶」という素敵なリゾートホテルの中にあります。
地元の食材を駆使して、鄙にも稀なフランス料理を食べさせてくれます。
今回の夕食では、富山湾の海鱒、岐阜県との県境で獲れた子猪など、季節感を盛り込んだ11皿のコースで、谷口英司シェフの個性豊かな、それでいて最新のフランス料理は、日本の10指に入ると言っても過言ではありません。わざわざ、ここで食事をするために出かける価値のあるレストランです。もうすでに5回も訪れていますが、最初に地元の知人に誘われたときは、全く期待をせずに席に着きました。
でも、ホテルのレストランなのにテーブルクロスはなく、そのかわりに、テーブルに据え付けられた引き出しにはコースで使うナイフやフォークなどのシルバーが揃っている、世界最新のサービススタイルを見て、突然期待が膨らんだものでした。いまや、夫婦で応援するレストランとなりました。
「レヴォ」で心身共に満たされた夕食を済ませたら、そのまま部屋で休めるのがいいですね。「雅樂倶」は温泉付きのリゾートで、早めにチェックインすれば、ゆっくりと羽を伸ばせて、温泉に入れば、みるみる都会の垢が落ちてゆく感じです。
翌日、時間があれば、氷見まで足を延ばすことをお薦めいたします。氷見は「ぶり」と「うどん」で有名ですが、もうひとつ忘れてはならないのがワイナリーの「セイズファーム」です。シャルドネ、メルローというぶどうの品種で素晴らしいワインを作っています。昼であればここで昼食をいただくことができます。
富山から氷見までは電車で行けますが、車だと高速を使えば1時間半ほどで着くことができます。夏、秋でしたら格好のシーズンと言えましょう。
また、富山のお土産と言えば「ます寿し」です。どれを選んでいいか迷うほどに並んでいますが、私たち夫婦のお薦めは「まつ川」の「ます寿し」、酢めしが程よくきいていて、実に上品な味わいです。本店は全日空ホテルの近くにありますが、気を付けなければならないのは、日曜日定休です。
2日目は「ふじ居」です。富山には日本料理店が数知れずありますが、出色の1軒が「ふじ居」ではないでしょうか。富山湾の魚を中心に、塩梅の誠に見事な割烹料理を楽しませてくれます。とりわけ、お椀は北陸随一と言ってよく、今回の「本ずわい蟹のしんじょ椀」は、風味豊かなしんじょに驚きながら、お椀の出汁加減に感服しました。
ご主人の藤井寛徳さんは、京都での修業歴もある富山出身の今年40歳になる料理人で、素材を見極める目の確かさといい、繊細優美な料理といい、類まれなる才能の持ち主だからこそ生み出せる技と言ってよいでしょう。いま私が最もほれ込んでいる料理人のひとりです。
「ふじ居」で6時半から夕食をとっても、21時20分富山発の「かがやき518号」に十分間に合い、東京に戻れます。富山は本当に便利になりました。
■宿泊 神通川の川沿いに建つ「リバーリトリート雅樂倶」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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雪が似合う落ち着いた佇まいの外観 | 雪景色をずっと見ていたくなるテラス | モダンな暖炉は見た目にも心地いい |
■富山1日目の夕食 フランス料理「レヴォ」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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引き出しに揃えられたシルバーのカトラリー | 地元、富山湾の海鱒 | 谷口英司シェフ |
■氷見のワイナリー「セイズファーム」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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「セイズファーム」外観 | シャルドネ、メルロー、ソーヴィニヨンブランが作られている | 「ソーヴィニヨンブラン2014」 |
■ 富山2日目の夕食 日本料理の出色の1軒「ふじ居」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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ご主人の 藤井寛徳(ひろのり)さん |
氷見の寒ブリ |
■ 富山のお土産 「まつ川」の『ます寿し』 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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凛とした美しい包 | 脂がのり艶やかな鱒 |
【店舗情報】
*この連載は毎月25日に更新です。次回は「京都&滋賀 余呉」へ。