ステファン・ダントンの茶国漫遊記

ステファン・ダントンの茶国漫遊記

#59

 COREDO室町から人形町へ

ステファン・ダントン 

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おちゃらか第3章のスタート

 

 

 2020年夏、東京はオリンピックでわいているはずだった。

 

 大勢の観光客が東京中を歩いて回り、今の日本と日本文化を発見し、それを土産に家族のもとに帰っていく。そんな様子を思い描いていた。

 

 私が吉祥寺を離れ、2014年に日本橋のCOREDO室町に「おちゃらか」を移転したのは、訪日外国人のアクセスがより便利になると考えたからだった。

 

 オリンピックの夏、大勢の外国人がおちゃらかに足を運ぶ。日本茶にファーストコンタクトする外国人にも親しめるよう、私が長年かけて開発したフレーバー日本茶を楽しむ様子を思い描いていた。

 

 そしてオリンピックが終わる秋には商業ビルのCOREDO室町を出て、新たに路面店をオープンする計画を立てていた。本のまち神田にしようか、下町情緒の残る人形町にしようか悩むのも楽しかった。

 

 

2020年の春は寒かった

 

 ところが、2020年の正月が明けてしばらくすると、中国で感染症が流行っているらしいというニュースが伝わってきた。例年は中国からの観光客でいっぱいになる春節シーズンも、明らかに中国人客が少なかった。

 

 それまで症例の報告も少なく「日本ではそんなに大事にはならないだろう、なってほしくない」と考えていたが、2月には日本でも感染症が流行し始めた。

 

 感染症対策としてCOREDO室町の時間短縮営業が始まったのが2月末。3月末からは週末の営業自粛。4月の緊急事態宣言を受けての全面休館。売り上げはどんどん下がっていくが、固定費はかかる。「おちゃらか」だけじゃない。日本中が新型コロナウイルスの流行に翻弄されていた。

 

 「おちゃらか」では来店できないお客さまがオンラインショップを利用してくれたのが救いになったものの、店舗での売り上げは当然ゼロ。営業のもうひとつの中心、レストランやホテルへの卸しも大きく落ち込んだ。それでも従業員の給料、店舗家賃、仕入れ、さまざまな支払いを工面しなければならない。

 

 当初は情報も少ない中、行政から支援を得られる方法がないかと区役所に日参した。そのうち持続化給付金をはじめ、さまざまな補助が受けられることを知り、会社を存続するためにあらゆる方法を使った。負けられなかった。

 

2019年夏 COREDO室町店にて2019年夏、COREDO室町店にて

 

 

COREDO室町から人形町の路面店へ
 

 

 「おちゃらか」をオープンしてから15年。日本茶を世界のソフトドリンクにするための私の物語が始まってから15年。東京の郊外、吉祥寺の商店街から始まった「おちゃらか第1章」。日本橋の真新しいビルに拠点を移し、海外への発信力を強化した「おちゃらか第2章」。そして、私の好きな東京の下町で「おちゃらか第3章」へと続く物語を止めるわけにはいかなかった。

 

 5月、緊急事態宣言は解除された。だが「おちゃらか」はCOREDO室町での再開はせず、9月に予定していた移転を前倒しすることに決めた。とはいえ、期間内の契約解除にはそれなりの費用が発生し、退去時の原状回復にも1千万円単位の金額がかかる。頭を抱えた。COREDO室町の運営会社と掛け合った。その結果、退去のための出費を最小限に抑えることはできた。

 

 新店舗の場所は、人形町に決めた。都心に近く地下鉄や車でのアクセスがいいことに加え、店舗と住宅とオフィスが混在している。地域のつながりと下町情緒が生きていて、料理の名店も多いまち。江戸と東京をつなぐまち。伝統と今がつながるまち。人形町の路地に似つかわしい「日本茶屋さん」のイメージをふくらませ、沈みかけた心が浮き立った。

 

 イメージ通りの物件が見つかるのに時間はかからなかった。地元の不動産屋さんが、ぴったりの物件を見つけてくれた。人形町の路地の一角の路面店。周囲は住宅や飲食店。地下鉄の水天宮駅からも徒歩5分以内。

 

 問題は、審査に通るかどうか。このご時世、外国人で資産もない私に貸してくれるだろうか。心配はいらなかった。大家さんと面談したら意気投合。フランスにも縁のある素敵なマダムが「外国人にも紹介しやすい日本茶店」のオープンに大賛成してくれた。

 

 あっという間に契約まで進み、5月末には新店舗への引っ越しができると思ったのだが……。実際のオープンは、それから2カ月遅れ、7月26日に。そのあたりの私の奮闘と新店舗の様子はまた次回。

 

2020年夏 人形町の新店舗にて
2020年夏、人形町の新店舗にて。内装はまだ途中の状況だが、営業を開始した。

 

【新店舗】

東京都中央区日本橋人形町2-7-16 関根ビル1F

(東京メトロ日比谷線、都営浅草線「人形町」駅 A3出口)

 

おちゃらかHP(オンラインションップ併設)はこちら

https://www.ocharaka.co.jp/

 

おちゃらかチャンネル(YouTube)はじめました。

https://www.youtube.com/channel/UCG4PQoefB5qCe_1lQTKM6Tg

 

*この連載は毎月第1・第3月曜日(月2回)の更新連載となります。お楽しみに! 

 

写真/ステファン・ダントン    編集協力/田村広子、スタジオポルト

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ステファン・ダントン

1964年フランス・リヨン生まれ。リセ・テクニック・ホテリア・グルノーブル卒業。ソムリエ。1992年来日。日本茶に魅せられ、全国各地の茶産地を巡る。2005年日本茶専門店「おちゃらか」開業。目・鼻・口で愉しめるフレーバー茶を提案し、日本茶を世界のソフトドリンクにすべく奮闘中。2014年日本橋コレド室町店オープン。2015年シンガポールに「ocharaka international」設立。著書に『フレーバー茶で暮らしを変える』(文化出版局)。「おちゃらか」http://www.ocharaka.co.jp/

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