沖縄にも暮らす 二拠点生活の日記

沖縄にも暮らす 二拠点生活の日記

#14

二拠点生活の日記 Apr.17~24

文と写真・藤井誠二 

 

4月17日  [SAT]   

 

 午後にジュンク堂那覇店でジャーナリストの西岡研介さんと沖縄タイムス記者の阿部岳さんとのトークライブにぎりぎり間に合わなかった。ジュンク堂に行ってみると、西岡さんは次の用事があるとのことで別の場所に移動されていたが、阿部さんがまだ会場にいらしたので森本浩平店長と三人で、並びのストレータホテルの最上階(15階)のテラスサロンでコーヒーを飲む。那覇の街を一望できる。那覇港の海が見える。風が強い。ここだけリゾートというか別世界。西岡さんから「会いたかったけど、またの機会に」とメッセージが森本さん経由で入る。西岡さんも阿部さんもリスペクトしている方々なので光栄。

 森本さんと晩飯でも喰おうと牧志のアーケード街を歩き回ったが軒並み、閉店の真っ最中。「まん延防止等重点措置」で酒類提供が午後19時までだからだ。時間は19時をまわっている。閉めかかっている「小ヤジ」で一人飲む島村学さんを発見。「みんな、閉めとるで」と彼が言う通り、軒並み店じまいしている。あちこちで何人か知り合いに遭遇したが、みな飲める店を探して路地を回遊していた。あきらめてぼくらは解散して、拙宅に戻り焼きそばを作って喰う。そういえば、うちのキジバトが二羽に増えている。雛が生まれて無事に育っているのだ。すでに親鳥と同じぐらいの大きさまで成長している。

 

4月18日  [SUN]  

 

 朝目覚めてバルコニーを見ると、キジバトが三羽いて、みなで何か食べ物らしきものを奪い合うようにしてつついていた。運んできたのはたぶん雄(父親)だろう。キジバトの子どもは羽をばたばたさせて飛び立つ練習でもしているのだろうか。先週は作家の仲村清司さんがうちに泊まっておられたので、バスタオルなどを洗濯。バルコニーの枯れてしまった植物を処分。バルコニーのどの位置にどんな種類の植物を置いたら順調に育つのかが十数年経ってやっとわかってきた。遅すぎるな。

 「週刊新潮」(2021.4.22)の五木寛之さんの連載「生きるヒント」(342回)に「テレビの世界の後遺症」と題した文章が載っていた。抜粋する。

 [昨年のことだが、あるテレビ局からインタビュー取材の依頼を受けた。当日、やってきたのはその年に入社したという新人アナだった。

 スタッフがえらく気をつかっているところから見ると、期待の大型新人という感じである。

 撮影がはじまると、その新人アナは待ちかまえていたような口調でこうたずねた。「あなたにとって、テレビとはなんですか?」

 「そういう質問は、やめたほうがいいです」

 と、私は言った。

 あなたにとって野球とはなんですか、とか、あなたにとって音楽とは? などというのはこの世界で一番イージーな質問なんだよ。なにか意味ありげにみえて、実はカラッポ、という質問です。これから先、プロとしてやっていくつもりなら、絶対に使わないことだね」

 年をとるというのは、こういうことである。思ったことをそのままずけずけ言ってしまう。これからは少しつつしもう。]

 五木さん、ぜんぜん慎む必要なんかないです。ぼくもどこかで書いた記憶があるけれど、五木さんの指摘は正鵠を射ている。このテの質問がテレビを中心にいかに多いことか。したり顔で質問しているインタビュアーを見ると、がっくりくる。とくに人物密着型の番組のラストはこのテの質問で締めくくられることが多くて、聞かれる側もいかにもエンディングに合うような、ちょっとジーンとすることを口にしたりする。これも「演出」の一種なのかもしれないが、思考停止したような質問をよしとしている日本のテレビ業界の「質問力」は、ほんとうにレベルが低い。

 ついでは言えばプロ野球や大相撲などのインタビューでも、「今日はいいところでヒットを打ちました」「はい、打ちにいこうと思ってました」「ありがとうございました!」というやりとりがよくある。これも質問ではない。時間がないのはわかるが、お粗末すぎる。

 夕刻まで仕事をして、「OPTICO GUSHIKEN」で老眼鏡のかけ具合を調整。ついでに「Jacques Durand(ジャックデュラン)」のフレームがかっこよすぎて老眼鏡をまた作った。坂本龍一さんがかけていて話題になってるやつだ。そのあと一人で「米仙」へ。センベロ寿司屋台。このところはよく通っているので大将にも顔を覚えてもらった。深谷慎平君と普久原朝充君も合流して飲み食いする。そのあと、深谷君が肉をがっつきたいと言い出して、栄町の「スタート ホルモン」へ。ぼくと普久原君はすでに腹イッパイなのに深谷君はがつがつホルモンを焼いて、喰っている。テンションも高い。何かあったのかな。東京時代に、焼肉店でアルバイト経験のある彼はやはり焼くのが上手い。

 

4月19日  [MON]  

 

 今朝はキジバトが四羽もきていて騒がしい。朝から仕事をして、午後に桜坂劇場へある人に取材で会いに行く。行く途中に沖縄の若者たちがやっている「NEW END」でシャツを買う。古着をリメイクしたまさに一点もの。ジャクソン・ポロック風に色落ちしない墨を長袖シャツの片側にぶちまけてある。土産物屋だけじゃなくて、こういうオリジナリティあふれる店が増えればいいのにな。コンビニでゲラをプリントアウトして、昨日に続いて「米仙」でセンベロ寿司をつまみながらアカ入れ。深谷慎平君が合流してきた。沖縄の夜はいまは短い。歩いて「小ヤジ」にいくと、いたいた、島村学さんが。三人でかるく飲んで19時になったのでお開き。ちなみに島村さんは関西出身。沖縄の会社員である。

 

4月20日  [TUE]  

 

 キジバトは今日も二羽、巣に鎮座している。北中城村へバスで向かう。沖縄戦に関して、ある女性を取材するためだ。お会いするのは二度目。さきにぼくがインタビューさせていただき、ジャン松元さんがあとで合流してきて撮影。インタビューしたカフェは最寄りのバス停まで歩いて一時間ちょっとかかる。バス停からだらだら登り坂を一時間ほど歩いた時点で行き過ぎていることに気付き、引き返したりしていた。そこはお仲間の一人が経営していて、たまり場になっているみたいだった。いまは臨時休業しているが、特別にあけてもらった。どの席からもゴルフ場越しに海が見える。カフェのオーナーが「夏の始まりの海の色ね」と言っていた。

 帰りはジャンさんが運転する新報社のクルマで那覇へ。ジュンク堂の一階のカフェで仕事をする。そのあとでまたまた牧志のセンベロ寿司屋台「米仙」へ。明日は作家の仲村清司さんが沖縄大学 ━特任教授なのだ━ 授業なんで、うちに泊まりにくる日だ。仲村さん、「おとん」の池田哲也さん、森本浩平さんも合流して、きわめてリーズナブルで美味なるセンベロ寿司を喰らう。途中で声をかけてきた青年が。あまりにこざっぱりしていたが、前によく岡留安則さんの店で遭遇していた渥美航治さんであった。その頃は髪をのばしてヒッピー風のイケメンだったが、今は髪を切り若がえった印象。「若返ったね」とぼくが言うと、「よくそう言われるんですよ。今日は母親を連れてきているんです」。いっしょにいたのはお母様だった。いまではうるま市で会社を経営している。

 

4月21日  [WED]  

 

 仲村さんはまだ熟睡している。大学の授業に間に合うのかな。そのまま京都にとんぼ帰りして、また一週間後やってくる。そのときは、ぼくはまだ沖縄に滞在している。

 昼すぎから桜坂劇場「さんご座キッチン」で、ある人にインタビュー。いつも会っている人なのだが、あらためて聴かせていただくと、初めて聞くことばかり。ダブルルーツの彼の個人史は、きちんと座をもうけて、傾聴するべきだとあらためて思った。

 15時から琉球新報社で、ジャン松元さんとの共著で出す「沖縄ひとモノガタリ」 ━まだ仮称だけど━ 打ち合わせ。出版部長の松永利勝さんと新星出版の坂本菜津子さんと写真の点数やページ数などについて詰めた議論をする。そういえば、ジャンさんとは、二度目となる「アエラ」の「現代の肖像」と、「ヤフーニュース特集」でもそれぞれ別のテーマで組むことになった。帰りに『モモト』の最新号「沖縄のまんが」特集を買う。帰還後、何日か前に買って冷蔵庫に入れておいた餃子を食べて、仕事をして早めに寝てしまう。

 

4月22日  [THU]  

 

 午前中はずっと仕事をして、午後から「夜明け前のうた」の監督の原義和さんと波の上で会う。たっぷりと二時間以上、インタビュー。帰りに牧志の知り合いのやちむんの店に顔を出したがシャッターがしまっていたので、またまたセンベロ寿司屋台「米仙」で一人で寿司をつまむ。カンパチのカマ焼きが限定一つ。まだあったので注文。このサイズで激安。ここでアーケード街を行き交う人を眺めながら激安寿司をつまむのが心安らぐようなってきた。

 

4月23日  [FRI]  

 

 午前中ずっと仕事。バルコニーで育ったキジバトの子どもがバルコニーの床を歩き回っている。気づけば、父鳥と身体を寄せ合って鉢の中でじっとしている。糞の掃除がめんどうだが、情がわいてきている自分に気づく。巣ではまた母鳥が卵をあたためている様子。「OPTICO GUSHIKEN」で「Jacques Durand(ジャックデュラン)」のフレームでつくった老眼鏡を受け取り、「EFFECTOR(エフェクター)」の色付き眼鏡(ダテ眼鏡)を衝動買いして、その足で新都心へ。午後からある女性を撮影するためにジャン松元さんと合流する予定だったが、台風接近の影響で風が強く、曇天。小雨もときおり降っているので延期に。インタビューだけさせてもらうことになった。と、ジャンさんがいきなりあらわれて、びっくり。よくよくジャンさんからのメールを見直してみたら「挨拶だけいきます」と付記してあった。見逃していた。彼からある資料を借りる。

 取材を終えて、はたまた三時からあいている、センベロ寿司屋台「米仙」へ一人で向かう。今日で五日連続である。マスターによると、そんな客は初めてらしい。いま那覇の夜は短いし、ひとりでカウンターで飲んでいたら次々に友人や知り合いが通りかかり、混じってきた。近くの「でんすけ商店」でかるく飲み直してスーパーで野菜などの食材を買って帰還。

 

4月24日  [SAT]  

 

 昼間まで寝ていた。キジバトがいなかったので、心を鬼にして巣を撤去。卵が二個あったがなぜか割れていた。糞を掃除。が、ここで生まれたであろう一羽はずっとバルコニーにいる。追い払うと飛んで行った。もう飛べるようになったのだな。ずっと原稿書き。

 近所の安里三叉路の路地にある「BourbonClub」が閉店する。1973年創業で天井まで壁一面に並べられたボトルがまるで絵画のようで、迫りくる圧のようなものすら感じるほどだった。使い込まれたカウンターもすばらしかった。何度か行ったことがあるが、このコロナ禍の時期にひっそりと沖縄の名店の灯火が消えていこうとしている。

〈#15に つづく〉

 

*筆者の近況はtwitter(https://twitter.com/seijifujii1965)でご覧いただけます。

 

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藤井誠二(ふじい せいじ)

1965年名古屋生れ。ノンフィクションライター。2006年から沖縄県那覇市の中心部に仕事場を構え、東京都世田谷区と二拠点生活を送っている。著作は50冊以上。沖縄関係の著作は『沖縄アンダーグラウンド  売春街を生きた者たち』(講談社)、作家の仲村清司氏と建築家の普久原朝充氏との共著で『沖縄オトナの社会見学R18』(亜紀書房)、『肉の王国 沖縄で愉しむ肉グルメ』(双葉社)がある。『沖縄アンダーグラウンド  売春街を生きた者たち』は、2018年に第5回「沖縄書店大賞」沖縄部門で大賞を受賞。

 

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