沖縄にも暮らす 二拠点生活の日記

沖縄にも暮らす 二拠点生活の日記

#13

二拠点生活の日記 Mar.29~Apr.7

文と写真・藤井誠二 

3月29日  [MON]  

 

 夜まで仕事をする。『沖縄アンダーグラウンド』の文庫版のゲラが届いたのでその確認作業に没頭。合間に洗濯など。何気なくフェイスブックを見ると、「陶・よかりよ」さんの投稿で、[嫁ぐ日の近付く。この作品も「売れる」とか考える事もなく「あぁ、良いなぁ。」という直感で買い付けたモノ。まさか!嫁ぐ日がくるとは(笑)!作家工房でのモノ選びの際に、こうした一目惚れでのチョイスの折には、躊躇の瞬間もあるが「いや、こういったモノが売れる店にならなきゃ!」という思い切りで決定に至るのです。いざ嫁ぎ先の決まると、なにやらモノ寂しい気もして微妙な心持ちであります。キム ホノ:重た塊鉢]というのを見つけた。あ、昨日のぼくのことです。晩飯は、東京から着いた相方と松山の端にある「酒月」へ。

 

3月30日  [TUE]  

 

 戦争トラウマの研究をされている當山冨士子さんと会う。彼女と親しくしている知花園子さんも同席してくれた。いろいろな本で當山さんのお仕事は存じ上げていたので、恐縮。

 近所の「märch(Lifestyle shop マーチ)」で相方と珈琲を飲み、浮島通りを散歩。暑くないが湿気がすごい。相方は「ANKH(アンク)」で古着を買っているうちに、店にいる保護猫ちゃんたちを撫でまわして、ほんとうに最近よく行くセンベロ寿司「米仙」へ。帰還して早く寝てしまいすぎて夜中に目が覚めて、どうにもこうにも眠れなくなったので仕事をすることにした。

 

3月31日  [WED]  

 

 けっきょく朝方になってから寝てしまい、相方はジュンク堂を目指して散歩。ぼくは昼頃に目が覚めて、桜坂劇場内の「さんご座キッチン」で待ち合わせて昼飯、韓国映画「KCIA 南山の部長たち」を観る。そのあと壺屋あたりを散歩しして、栄町「アラコヤ」に行くとまだ開店前。雨が降ってきたので傘を貸してもらい、近くの安酒屋で時間をつぶして、再び「アラコヤ」へ。安定の美味さ。

 帰宅してからタイムスと新報を読む。中学と高校の教科書検定の記事。文部科学省が取り上げた教科書の中に集団自決に言及がないものや、「ひめゆり部隊」と記述しているところが散見されたという。歴史修正主義者達でつくる「新しい歴史教科書をつくる会」系の、沖縄の死者の歴史を土足で踏みにじる記述に怒りを覚える。バルコニーのガジュマルのキジバトは巣をつくりじっとしている。

 

4月1日  [THU]  

 

 焼きそばをつくって食べて、仕事。洗濯。今日も相方と壷屋へ。昨日、壺屋を歩いたのも、昨年4月に17歳で死んだ愛猫の骨を入れるために、気に入った「骨壺」を探してまわるため。新しくオープンしたっぽい、やちむん屋で、店員に聞けば、ヨーガン・レールデザインの陶器部門の作品。ダチョウやエミューなどのたまごから型を起こして制作されたものだとか。オーストリア人デザイナーのヨーガン・レールさんは2014年に亡くなるまで石垣島に住んでいた。安里の「鶴千」で串焼きなどで晩飯。

 

4月2日  [FRI]  

 

 レンタカーで名護市にある「さんかく家」を目指して下道をのろのろ走る。ファン・テホさんの惣菜はどれも絶品。帰路、宜野湾の「パインプラインコーヒー」をのぞいたら、先日、撮影した宮城啓輔さんがテラス席に一人。「雨だからいないと思ったよ」と声をかけたら、「二日に一回はいますからね」。宮城さんは一心不乱にタッチペンでタブレットに絵を書いていた。パラ・アーティスト(一般社団法人・パラアーティスト・マネジメント協会)に登録したので、パラアーティストとしてプロを目指していきたい、と言った。それをぼくの「琉球新報」の月イチ連載記事に盛り込んでほしいと頼まれた。お隣の「HYGGE(ヒュッゲ)」で権聖美さんにもあいさつして、ドーナツをお土産に。だんなさんの眼鏡(遠近両用らしい)がかっこいいので、聞けば、コザのプラザハウスの斜め向いにあるOIC眼鏡店であつらえたと。アメリカ占領下の建物がそのまま使われていて、内装も当時のままで、沖縄建築愛好家たちの中では知られた「物件」で、岡本尚文さんと普久原朝充くんらがつくった『沖縄島建築』にも、もちろん登場する。クルマを返したとたんに、土砂降りの雷雨。とっさにキティちゃんで埋めつくされたホテルに駆け込む。キティちゃんに囲まれていくのは正直、ツラい。しばらく様子を見ていたが一向にやむ気配がないので、コンビニで傘を買って、びしょ濡れになって帰るよりましだろうと、タクシーに乗り、帰還。「さんかく家」はバイキングスタイルなので、つい食べすぎたため、晩飯は「HYGGE」で買ったドーナツ一個だけ。

 

4月3日  [SAT]  

 

 昼前に桜坂劇場に出かけ、相方とほぼ同じ時間帯に上映される別々の映画を観る。ぼくは「夜明け前のうた 消された沖縄の障害者」。沖縄における私宅監置の歴史を真正面から取り上げたものだ。精神障害や精神病、知的障害や視覚障害などを理由に、家族が自宅敷地内にコンクリートや材木でできた「牢屋」に閉じ込める。これは国家の法制度で決められ、警察がそれを管轄していた。長い人は糞尿にまみれて十数年もの閉じ込められていた。その中で息絶えた人も多い。アメリカ占領下だった沖縄ではその法が廃止されるのが「本土」よりも遅れた。「名前も姿も消された人々」を追うドキュメンタリーなのだが、よくぞここまで人々の負の記憶の中まで分け入っていったなと驚いた。すばらしいドキュメンタリー映画だ。

 映画内でも指摘されていたが、沖縄は県外の二倍の精神疾患の人数がカウントされていたという。それも沖縄戦のときに子どもだった世代が多い。先日お会いした當山冨士子さんの「戦争トラウマ」の話が蘇った。映画のパンフの製作基金への協力者のところにお名前を見つけた。

 原義和監督の舞台挨拶もあった。その後、御挨拶をする。ナレーションを担当していたのは、旧知の宮城さつきさんだ。会場で久々に会った。批評家の仲里効さんもいらしていたのでごあいさつ。エンドロールに名前も出ていた。ドキュメンタリー監督の三上智恵さんともきちんと初めて言葉を交わした。じつは、彼女とは「BAR土」のごうさんの遺灰を読谷の海に撒いたときに一緒だったのだが、あいさつしそびれていた。

 そういえば、会場では名護市の行政で畜産を担当している方から、『肉の王国  沖縄で愉しむ肉グルメ』読ませてもらっていますよ、と声をかけられた。タイトルは(表紙も)いかにもカルいが「専門家」が読むに耐える内容なのだ。夜は相方は安里の「鳳凰餃子」でかるく食べる。

 

4月4日  [SUN]  

 

 朝、相方は東京に戻った。ずっと仕事をして、午後遅めの時間に来沖していたジャーナリストの二木啓孝さんと深谷君と、またまた「米仙」へ。二木さんが立ち上げた出版社から出す予定の単行本(共著)で原稿依頼を受ける。

 

4月5日  [MON]  

 

 レンタカーで午前10時にコザで元沖縄市長の新川秀清さんと会う。二度目。懇切丁寧に戦後の沖縄の「政治」を説明してくださる。恐縮。南米ペルーレストラン「ティティカカ」で、アヒデガジーナという料理を初めて喰う。たまねぎと鶏肉、牛乳、チーズ、パン粉、ゆで卵、ポテト ━とメニューに書いてある━ それらを煮込んで、ライスに添えてある。なかなかに美味い。そのあとにミニシアターの「シアター・ドーナツ」に寄ってみると、代表の宮島真一さんがいらしたのでごあいさつ。宮島さんといえば  RBCで放送している「コザの裏側」という番組MCで沖縄では知られていると思うけど、その番組を作っている神山繁さんもいっしょにいらしたので、ごあいさつ。ドーナツとアイスコーヒーでゆんたく。宮島さんは二つあるシアターでそれぞれ一組の客だけ相手に「マエセツ(前説)」と「アトセツ(後説)」をやっている。この日は「沈没家族」と「けったいな町医者」というドキュメンタリーがちょうど上映されていて、「藤井さん、アトセツ、見ます?」と誘っていただいたので、拝聴。それぞれの映画のすばらしさを観ていた人に語りかけるように解説しておられた。映画への愛がすごいな、この人。

 中央パークアベニューにできた「Butcher」でコヒーを飲んで、同通りにある「インド屋」のベクターさんを取材。パートナーも来ていただき、家族の様子も聞いた。ベクターさんはインド国籍、パートナーは神奈川県川崎市の出身。三人の子どもはもうみんな大人になっていて、長女は結婚してマレーシアにいるとか。夜、普久原朝充君と合流して栄町の「チェ鳥」と「うりずん庵」でちょっとずつ飲んで喰った。

 

4月6日  [TUE]  

 

 朝からずっと仕事。ぜんぜん終わらないが、夕刻に、「陶・よかりよ」で取り置きしてあったキム・ホノさんのオブジェを引き取りに行く。そのあとは深谷晋平君と普久原朝充君と栄町の「ムジルシ」で焼売、いまや完全に立ち食い寿司として変貌した「トミヤランドリー」で寿司をつまんで帰還。

 

4月7日  [SAT]  

 

 冷蔵庫に余っていた食材を小分けにして冷凍。昼過ぎのフライトまで、旧知の浦晋亮さんが代表をつとめるIBCパブリッシングから出された『アートがわかれば世の中が見えてくる』(前崎信也)が届いたのでくページをめくる。

 [現代でも、他人を家に頻繁に呼ぶ人にとっては、客間に何を飾るかということは大切なことです。それは自分がどんな人間であるかをお客様に伝えることができるからですあなたが美術品を買いたくなった時、自分や家族しか見ないものであれば個人の趣味で選べばよいです。] うむ、うちには「客間」もないし、めったに「客」も来ないけど、これでいいのだ。妙に納得。

 

*筆者の近況はtwitter(https://twitter.com/seijifujii1965)でご覧いただけます。

 

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藤井誠二(ふじい せいじ)

1965年名古屋生れ。ノンフィクションライター。2006年から沖縄県那覇市の中心部に仕事場を構え、東京都世田谷区と二拠点生活を送っている。著作は50冊以上。沖縄関係の著作は『沖縄アンダーグラウンド  売春街を生きた者たち』(講談社)、作家の仲村清司氏と建築家の普久原朝充氏との共著で『沖縄オトナの社会見学R18』(亜紀書房)、『肉の王国 沖縄で愉しむ肉グルメ』(双葉社)がある。『沖縄アンダーグラウンド  売春街を生きた者たち』は、2018年に第5回「沖縄書店大賞」沖縄部門で大賞を受賞。

 

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