沖縄にも暮らす 二拠点生活の日記

沖縄にも暮らす 二拠点生活の日記

#08

二拠点生活の日記 Nov.24~Dec.3

Image-6

文と写真・藤井誠二 

 

2020

11月24日  [TUE]

 

Image-113137753802066

 

 飛行機の中でタブレットで『シカゴ7裁判』を観た。那覇に着くと、さいきん恒例になっている普久原朝充君と深谷慎平君と飯に喰いに出る。栄町「りゅうぼう」の交番通り側出入り口に近くの「ホルモンすたーと」に入る。なぜだかこの店はぼくが知る限り、よく看板が変わる。そのせいもあってなんとなく足を遠ざけていたのだが、今回は「期待」をいい意味で裏切る味だった。内臓類は一皿480円。とりあえず内臓類を制覇しようと、盛り合わせ(豚ハラミ、ミノ、のどなんこつ、レバー)、のどなんこつ(追加)、エンガワ(豚のハラミ)、ハツ、豚タン、しろコロ、コブクロにうずら卵のにんにくしょうゆ漬け、にくにく揚げ、ハツ刺しをまたたくまにたいらげる。リーズナブルで美味しい。カットの仕方もいい。タレは赤唐辛子やにんにくやタマネギをみじん切りにしたものに、果物のすりおろしたものや醤油などが合わせたなかなか個性的なもので、肉にもまんべんなく丁寧ににんにくのすりおろしがまぶしてあって、じつに美味しい。ぼくはタレの中身をおかわりしてしまった。いちばん安い黒霧島の水割りを飲み続ける。そのあとはいつもの「鳳凰餃子」で焼き餃子と、オリジナルの香辛料につけこんだスペアリブなどをつまむ。食べきれないので深谷君が持ち帰った。今回の滞在で予定していた高齢者の方々とお会いする用件(取材)をいくつか延期する。いうまでもなく、コロナ対策。

 

 

11月25日  [WED]

 

13137764171247

 

 明日の「琉球新報」のぼくの月一回の連載「沖縄ひと物語」の親富祖愛さん、親富祖大輔さんの回のゲラが届く。朝から、中日新聞の書評に書く『パトリックと本を読む  絶望から立ち上がるための読書会』(ミシェル・クオ)を読む。午後になり、琉球新報社へ。担当の文化部・古堅一樹さんと打ち合わせ。そのあとは、出版部長の松永勝利さんと、連載の相棒のジャン松元さんとも打ち合わせ。「琉球新報」の連載をぼくはジャン松元の共著というかたちで琉球新報社から将来、出版してもらえることを松永さんから合意をもらった。うれしい。連載自体は来年末まで続けるつもりだが、書き下ろしと撮り下ろしを大幅に加える予定。帰宅して自炊して焼きそばを喰って、下地ローレンス吉孝さんの著書『「混血」と「日本人」  ハーフ・ダブル・ミックスの社会史』をぱらぱらと読み直す。

 

 

11月26日 [THU]

 

Image-7

 

 

 コンビニに歩いていって「琉球新報」を買う。ぼくの月一度の連載「沖縄ひと物語」が掲載されている。草木染めデザイナーの親富祖愛さんと大輔さん夫婦のルポ。文化面をほぼ丸一面使った大きな記事だ。

 愛さんについて『赤旗』(2018.9.28)に[デニー候補に期待  人権を尊重の沖縄に]と題した次のような記事が載っていたのを気づかなかった。

 

 [私もデニーさんと同様に沖縄に米兵として駐留していた父親と沖縄生まれ・育ちの母親がいます。沖縄県知事候補のデニーさんは私にとって、初めてアフリカ系米大統領になったオバマ前大統領や、沖縄にルーツを持つハワイのイゲ州知事をほうふつさせます。

 デニーさんを応援する理由は、私のような生まれのルーツを持って沖縄に住んでいる人たちが、「基地に反対すれば、親や米国、自分を全否定することになるのではないか」とモヤモヤと悩まずに基地に反対するなど、自分の思うことを貫ける、自己肯定感を持てる沖縄をつくれる希望が持てるからです。

 私は米兵個人を悪くは思っていません。沖縄に基地を押し付け続け、米軍機や人殺しの訓練を受けた兵士によって事件・事故が発生するといった構造やシステムに反対します。

 現在も、「アメリカー!」と差別的に呼ばれることがあります。また、私の場合はコーカソイド、ネグロイド、ネイティブアメリカン、モンゴロイドのルーツを持つので「ハーフ」や「ダブル」との言葉で分類されることに疑問を持っています。

 デニーさんが知事になることで、生まれのルーツなど、お互いの違いを気にせずに生きられる社会、本当の人権の尊重を学び、勝ち取れる沖縄に向かってほしいです。(以下略)]

 

 ぼくは彼女の出自についてはあえて「説明」しなかった。文章を読めばバイレイシャルだとはわかるようになっているのだが、拙記事でも愛さん自身が説明しているように黒人の「ルーツ」は複雑で一言で「説明」するのが難しい。愛さんたちが展開している「ブラック・ライブズ・マター」の「ブラック」はすべての黒人、あるいは黒人系の人種のことをいうわけだし、アフリカ系のアメリカ人でもアフリカ大陸に行ったことがないというのはむしろ当然のことだ。「ブラック」に仕事や立場、国やジェンダーは「関係」ない。

 めったにテレビを観ないようになって久しいがやたら「日本人なら誰でも好き」とか「日本人ならなじみがある」なんて文言が平気で臆面もなくアナウンサーや出演者のくちから出てくる。「単一民族」といつやらの首相が言っていたニュアンスに聞こえる。そんなものは幻想。ついでにいえば、沖縄のメディアが好んで使う「県系」という言い方も若干違和感がある。その定義はいったいなんだろう。判官贔屓は当然かもしれないが、その言葉を使うとき、生まれなのか、「血」なのか、育ちなのか、姻戚関係を指すのか、そして同時に、誰かを排除することはないのだろうか。ぼくの「琉球新報」の記事では、いま彼女たちが沖縄で展開している「ブラック・ライブズ・マター」について深く掘り下げた。

 昼すぎに、しばらくのあいだ、読谷村に家族で居る社会学者・下地ローレンス吉孝さんが近くのホテルまで来てくれて、インタビューさせてもらう。このホテルの一階のカフェスペースは広々としていてぼくのお気に入りなのだが、この日は閉まっていて、スペースは使ってもいいし、さらに水とお茶だけは無料で飲んでいい。(ホテル提供)つまり無料でスペースを使えるわけで、ふたりで独占。駐車場まで見送った。

 その足で国際通り沿いの屋台村へ歩く。途中で国際通り沿いにある「NEW END」という地元の若者たちが立ち上げたブランドの服を扱うショップをのぞいて、Tシャツを一枚買った。サイズがないのであきらめようと思っていたら、お兄さんが「今からプリントしますから5分ほどお待ちください」って。なんと店内に巨大なプリンターが鎮座しており、これでTシャツの柄をプリントして、別の170度のアイロンのようなプレス機で定着させる。こんな唯一無二の地元の熱意が充満している店が増えてほしいと思う。

  屋台村に着いた。そろそろあの人が来ている頃だ。のぞいてみると、いたいた。客はあの人、一人。というか、オープン前の時間帯なのだが、「裏村長」のあの人は特別扱い。元県議会議員の平良長政さん。この時間帯になると来ておられる。ぼくも「裏村長」の特権に乗っけさせてもらって泡盛を何杯かごちそうになる。しばらくしゃべっていたら、長政さんの友人の藤中寛之さんがあらわれたので、紹介していただく。福祉関係の仕事にたずさわり、沖縄と北九州を往復しながら仕事をされているそう。帰りに「一幸舎」でラーメンをすすって歩いて帰還。本を読んでいたら眠ってしまった。

 

 

10月27日 [FRI]

 

Image-3

 

 

 空腹をおぼえたら自炊して腹を満たし、取材のアポをとったり、本や資料を読んだり、原稿を書くなどして、マンション内のゴミ置き場に行く以外、外出せず。読まなければならない資料が山積みになっていて憂鬱気味。今日は金曜日なので栄町「おとん」に行こうと思っていたけれど、主の池田哲也さんが家の中で転倒して肋骨を数本折る(のちに5本のはずが9本折れていたことが検査でわかった)という重傷を負ってしまい、行けず。見舞いにも(病院のコロナ対策で)行けず。

 

11月28日 [SAT]

 

Image-1

 

 冷蔵庫を開けると、島豆腐があったので朝飯兼昼飯にする。洗濯。バルコニーの植物剪定。短い原稿が仕上がったので、ひばり屋に珈琲を飲みに行こうと散歩へ。途中、先日も寄った「NEW END」でオリジナル刺繍のTシャツを買う。ひばり屋では知花園子さんと会ってゆんたく。夕方になって「すみれ茶屋」まで歩いて移動して体調を崩していたじゅんちゃんと久々に会う。このところ、玉城丈二さんが腕をふるう料理はこっちの胃袋が満たされるまで「おまかせ」になっているが、どれも裏切らない。近海ものの魚の刺身やマース煮(塩煮)などがどんどん出てくるが、この日はシメの卵焼きが絶品。スーパーで食材などを買って歩いて帰宅。

 

11月29日  [SUN]

 

Image-4

 

 ぐっすり寝たが若干二日酔い気味。二度寝した。三時ぐらいからたまりにたまったインタビューの文字起こしをやり始まるが、やる気が起きずだらだらしていたら、韓国ドラマ『秘密の森』(シーズン1)を観だしたら止まられなくなり、気づいたら夜中3時になっていた。権力の腐敗と、権力内闘争をエンタメ化して描いたら韓国のドラマや映画に日本のそれはまったく太刀打ちできないなと思った。詳しい友人に聞いたら脚本はこれが一作目らしい。ものすごい才能と出会ってしまった。

 

 

11月30日  [MON]

 

Image-1-1

 

 写真家のジャン松元さんと合流し、糸満市へ。『モモト』編集部が入っている会社へ。編集長のいのうえちずさんの撮影。久米島の絣の着物で撮影にのぞんでいただいた。素敵すぎる。帰りに「陶 よかりよ」に寄って大好きな「キム ホノ」展を見る。どの作品にも目が釘付け。迷いに迷ったが財布をこの日は出さなかった。ちょうど「ガーブドミンゴ」の藤田俊次さんがあらわれた。作家ものだけの器を扱うプロから、器をあつかうプロが買う。その光景がいいなあと思った。そのまま市場をうろうろして「上原パーラー」に寄って「ネパールカレー」とイカとマメ(インゲンマメ)とサカナ(白身の旨味の強いやつだった。名前聞くのを忘れた)の天ぷらを二個ずつ買って帰った。食べながらワインを飲んだら睡魔におそわれ、寝入ってしまった。2~3時間寝ていただろうか。起きたら昨日の韓国ドラマ『秘密の森』(シーズン1)を観だし、気づいたら朝5時になっていた。

 

 

12月1日  [TUE]

 

Image-5

 

 昼過ぎに覚醒した。晴天が続いていたが天が降り出しそうな曇天。空気が止まったよう。バルコニーの木々は葉っぱがかすかに震える程度。夕方までインタビューの文字おこしやゲラのアカ入れなどの仕事。近くの居酒屋「鶴千」でジュンク堂森本浩平店長と広告代理店を経営する具志堅純さんと合流。「アラコヤ」の松山英樹さんとばったり会う。浮島通りをぶらぶらしていたら、今度は「琉球新報」の松元剛さんらとばったり。そのあと久米の「BAILA」というジャズバーへ初めて寄る。オーナーの猪野屋恵留さんはジャズボーカリスト。泡盛「残波」の宣伝媒体で彼女を見たことがある人が沖縄には多いはず。そのあと松山の和食居酒屋「酒月」にも顔を出して、御主人夫妻の子どもが産まれたことを祝う。

 

 

12月2日  [WED]

 

Image-10

 

 昼ぐらいに牧志の市場通りや、やちむん通りを散歩。やちむんを見てまわったあと、不登校や引きこもりの子どもを支援する「Kukulu(ククル)」へ。ある企画の末席にぼくも混ぜてもらったのでその企画会議。深谷慎平君も参加しているので、会議後、二人でいつもの浮島通りの「コション」でせんべろコース。そのあと栄町「うりずん庵」で普久原朝充君も仕事帰りに合流。隣のラーメン店「ブンキチ」で絶品醤油ラーメンを食して帰る。

 

12月3日  [THU]

 

Image-2

 

 朝七時に起きて洗濯をして室内に干して、那覇空港へ。タコライス弁当を食べる。機内では爆睡。目を覚ますと羽田空港に着陸寸前だった。

 

*筆者の近況はtwitter(https://twitter.com/seijifujii1965)でご覧いただけます。

 

 

EC89C88C-E399-4D0B-BB34-2BA11A96A371

藤井誠二(ふじい せいじ)

1965年名古屋生れ。ノンフィクションライター。2006年から沖縄県那覇市の中心部に仕事場を構え、東京都世田谷区と二拠点生活を送っている。著作は50冊以上。沖縄関係の著作は『沖縄アンダーグラウンド  売春街を生きた者たち』(講談社)、作家の仲村清司氏と建築家の普久原朝充氏との共著で『沖縄オトナの社会見学R18』(亜紀書房)、『肉の王国 沖縄で愉しむ肉グルメ』(双葉社)がある。『沖縄アンダーグラウンド  売春街を生きた者たち』は、2018年に第5回「沖縄書店大賞」沖縄部門で大賞を受賞。

 

紀行エッセイガイド好評発売中!!

okinawa00_book01

島猫と歩く那覇スージぐゎー

著・仲村清司

ISBN978-4-575-31270-6

肉の王国 沖縄で愉しむ肉グルメ

著・仲村清司/藤井誠二/普久原朝充

okinawa00_book03

一生に一度は喰いたいホルモン

著・藤井誠二

okinawa00_book04

三ツ星人生ホルモン

著・藤井誠二

関連タグ:,

沖縄にも暮らす 二拠点生活の日記
バックナンバー

その他のJAPAN CULTURE

ページトップアンカー