琉球島猫百景
#03
石垣島 〈1〉「さくらねこ」発祥の島
写真・仲程長治 文・シマネコキネマ
©シマネコキネマ
石垣島は、このコラムの島猫を撮影している写真家、仲程長治の故郷だ。彼のテリトリーは生家と実家のある「字石垣四町内(あざいしがきよんちょうない)」と呼ばれるエリアなのだが、そこは同時に多くの島猫たちのテリトリーでもある。
民家の塀の上や道端で出会う島猫たちにレンズを向けると、「ずまぬぴとぅりゃ(どこの人か)!」と言わんばかりに睨みを効かせてくる輩が多い。
字石垣四町内の猫たちは、一度は逃げても必ず振り返り、睨みを効かせてくる
このエリアには昔ながらの赤瓦家や井戸のある家もまだ多く、島で一番古い酒造所や小さな商店、御嶽なども点在している。生活の匂いがする住宅街をのんびり散策していると、ここで暮らしたことのない人でも不思議と懐かしい気分にさせられる昭和チックな空気感は、島猫たちにとっても心地よいに違いない。
駐車場や緑の木陰… 涼しい場所をよく知っている石垣島猫たち
石垣港を中心として広がり、地元の人たちはもちろん、観光客も集まる市場モールや繁華街もまた島猫出没多発エリアである。
クーラーの効いた店内で堂々と昼寝をしている看板のら猫や、ちょっと怪しい大人の社交場として知られる八番街を住処にしているシングルマザー猫など、さまざまな物語を背負っていそうな島猫たちに出会うことができる。
夕方の呑み屋街は猫の出没多発スポット
730交差点にある老舗真珠店の看板のら猫
南国の長い昼が暮れてネオンが灯る頃、スナックの軒先で母子家庭猫ファミリーに出会った
もう一つ、石垣島には忘れてはいけない島猫エリアがある。夕焼けスポットとして人気のサザンゲートブリッジを渡ったところにある人工島の八島公園。釣りやバーベキューを楽しむ人が訪れるこの公園には、たくさんの「さくらねこ」がボランティアさんの世話を受けながら平和に暮らしている。
耳先が桜の花びらのようにカットされている八島公園の「さくらねこ」
さくらねことは、不妊手術を受けて、その証として耳先をさくらの花びらのようにカットされた猫のこと。数年前までこの島では、捨てられた猫たちが大繁殖していたのだが、2012年に行政、NPO、市民らの恊働によって大規模なTNR(捕獲・不妊手術・元いた場所に戻す活動)が行われた。
それまで、不妊出術をした野良猫は全国的に「耳先カットねこ」と呼ばれていたのだが、ここ石垣島で「さくらねこ」と新たに命名されたそうだ。そこには、桜の開花前線が北上するように、猫たちの命をつなぐこの取り組みが、全国に広がっていってほしいという願いが込められている。
石垣島で命名された「さくらねこ」。その後ろには、一代限りの命を優しく見守る人たちがいる
*本コラムの姉妹企画「琉球百景」は、沖縄発信の季刊誌『モモト』(編集工房 東洋企画)で好評連載中です。
*2018年公開予定の島猫映画『NYAHA!(ニャハ!)』は、ただいま、絶賛撮影中!
公式インスタグラム→https://www.instagram.com/nyaha_28/
*本連載は毎月22日(=ニャンニャンの日)に配信予定です。次回もお楽しみに!
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仲程長治(なかほど ちょうじ) 1959年、石垣島生まれの写真家、デザイナー。20代の頃より沖縄県内であらゆる分野のアートデザインを手がける。現在は琉球・沖縄の文化誌『モモト』のカメラマンとアートディレクターとしても活躍中。2018年公開予定の映画『カーラヌカン』では、スチール並び、劇中に登場する写真の撮影、主演への撮影指導(沖縄編)を行う。初監督・撮影統括をつとめる『NYAHA!(ニャハ!)』は、2018年春完成予定。 |
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シマネコキネマ 2018年公開予定の、島猫が語る島猫目線の映画『NYAHA!(ニャハ!)』(監督/仲程長治、脚本/仲村清司、音楽/宮沢和史)の製作チーム名。ただいま、絶賛撮影中。 公式インスタグラムhttps://www.instagram.com/nyaha_28/
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