台湾の人情食堂
#66
この夏、台南で食べるべき納涼グルメ!
文・光瀬憲子
台湾は九州ほどの大きさしかないが、北と南では気候も気温もだいぶ違う。台湾南部は北部よりも気温が高く、太陽の照りつけが厳しい。だがその分、美味しい食材があふれている。今回は南部を代表する食都・台南の夏グルメを紹介しよう。
カットフルーツ
地元の女子たちに教わっ行った『氷郷』にはかき氷メニューもあるが、カットフルーツが最強。どれも驚くほど甘い
人気店『阿田水果店』のつややかなマンゴープレート。時価で販売していてこの日は1皿60元。けっしてて安くはないが、その甘みと濃厚さで納得
台湾の夏はとにかく暑いので旅行を避ける人も多いが、暑いからこそ美味しいのがフルーツだ。台湾は初夏の6月頃から9月にかけて果物がもっとも豊富な時期を迎える。かの有名な台湾マンゴーも一番美味しくて安いのは8月。ほかにもスイカ、バナナ、パイナップル、パパイヤなどフルーツピラミッドの上位に君臨する贅沢で華やかな王道フルーツが目白押しだ。
医食同源の台湾では健康を意識してフルーツを食べる人が多い。そして台湾では暑い時期にこそ暑さ対策に最適なフルーツがもっとも美味しくなる。たとえばパパイヤ科のパパイヤやマンゴーは優れた解毒作用があり、暑気あたりや消化不良に最適。ビタミンA、C、Eが豊富なので疲れや肌荒れにも効果があるといわれる。スイカは寒性フルーツの代表格なので解熱作用が高く、台湾のものは驚くほど甘い。よく熟れた赤いスイカをそのまま砕いてジュースにしたものを夜市でよく見かける。パイナップルも喉の渇きを和らげ、消化をうながす効果があるが、実は二日酔いにも効くという。台湾を代表するフルーツのバナナも寒性フルーツであり、エネルギーを補い、便秘も解消する女性の味方。
つまり台湾では、夏に映える色鮮やかなフルーツを食べていれば健康でいられるのだ。台南のフルーツスタンドではかき氷も人気があるが、そのままカットフルーツとして食べるのが主流。脇に砂糖や塩が添えられているのでアクセントにして食べるとこれがまたクセになる。
ラム肉料理
台湾は南部へ行くほどラム肉の消費率が高くなる。これは台南や高雄周辺で新鮮なラム肉が手に入れやすいためだ。台南でもラム肉率は高く、台北で食べるよりもずっと新鮮で美味しい。
ラム肉は実は温性の食べ物なので身体を温める効果があり、冬場に人気が出るのだが、脂肪燃焼効果が高く、高タンパクで低カロリーなのでたくさん食べて力をつけたい夏場でもおすすめだ。ミネラル、鉄分、ビタミンが豊富なのでスタミナがつき、美容効果も期待できる。夏の食べ歩きにこそ、夏バテ防止のためにラム肉を取り入れてほしい。
台南の地元で調達されるラム肉。その色合いから鮮度が伝わってくる。脂身が少なく、高タンパク低カロリーなので夏バテに最適
地元の人たちに定評のある『錕羊肉』のラム肉プレート。ラムの皮を出す店はとても珍しい。驚くほど柔らかく、臭みがない
新鮮なラム肉にアツアツのスープをかけたシンプルなラム肉スープ。さっぱりとしていて暑い日でも飲みやすい
そんなラム肉が美味しいのは台南府前路沿いにひっそりと店を構える『錕羊肉』。観光客はまず立ち寄らないが、地元客がひっきりなしに訪れる名店。刻んだ新鮮なラム肉が入っただけのシンプルなスープも絶妙だが、ラム肉や皮をスライスしてショウガの千切りでいただくラム肉プレートもほかでは味わえない絶品。煮込んだラム肉が驚くほど柔らかい。
府前路でひっそりと店を構える『錕羊肉』。観光客の姿はなく、メニューもシンプルだが地元客が気さくに訪れている
サバヒー粥
台南名物のサバヒー(虱目魚)は台南よりも南でしか養殖されない南部の魚なので、台南を訪れたらぜひとも食べておきたい。サバヒーは平和性といって、寒性にも熱性にも属さない、身体にやさしい食材だ。
サバヒーはさっぱりとしたスープや粥で食べることが多いので、しっかりとタンパク質を取れるわりには味付けがあっさりしていて夏場でも食べやすい。日中の暑さで体力を吸い取られてしまうので、早起きして朝ごはんにしっかりとサバヒースープでタンパク質とカロリーを補えれば一日元気に旅を続けることができる。
サバヒー料理店で利用しやすいのはやはり西門路のロータリーにある『阿堂鹹粥』だろう。朝8時には混雑してしまうので、さらに早い時間が狙いめ。
暑い夏の朝にこそ食べてスタミナをつけたいサバヒースープ。『阿堂鹹粥』のものは骨ナシなので食べやすい
シンプルな粥だが、魚のダシがきいていて美味。消化がいいので、朝食べれば1日の活力になる
西門路のロータリーにある『阿堂鹹粥』は早朝5時から昼過ぎまでの営業。6時〜7時は観光客が少ないので狙い目
タウナギ麺
もうひとつの台南名物が鱔魚意麺(タウナギ麺)だ。タウナギは栄養価が高く、台湾では人気の食材。特に台南では意麺と呼ばれる揚げた油麺と合わせ、乾麺や湯麺として食べることが多い。タウナギもラム肉と同様に漢方では熱性の食材なのだが、優れた解毒効果がありビタミンも豊富。湯麺ではなく乾麺(汁が少ないタイプ)を選べば暑いときでも食べやすい。
台南の民族路という大通り沿いにある『阿江炒鱔魚』は夕方5時から深夜まで営業の店なので、涼しくなってから訪れるのにちょうどいい。2人のおじさんがあうんの呼吸で注文をさばいていく姿も見ていて爽快だ。この店のタウナギ麺はコショウがきいているので夏場でももりもり食べられる。
黒コショウのきいたスタミナたっぷりのタウナギ麺は『阿江炒鱔魚』で。どろっとしたあんかけ風だが、これでも「乾麺」だ
台湾や中国で人気の食材タウナギ。栄養価が高く、ビタミン豊富で夏バテ予防に最適とされている
夕方5時からの深夜までの営業。涼しくなった頃、または夜食に出向けば2人のおじさんのパフォーマンスが見られる
南部チマキ
前回の台北版に引き続き、台南編でも夏場の食べ物としてチマキを推したい。ただ、南部チマキは北部チマキとすこし違う。もち米や具材を笹の葉にくるんでタコ糸に10個ずつ縛り付けるところまでは一緒だが、その後、北部では蒸し器に入れるのに対し、南部ではこれを大鍋に入れて煮る。このため米が水分をたっぷり吸って柔らかいチマキができあがる。そのもちもちした食感がたまらない、と南部チマキを好むグルメ通も多い。
南部チマキの名店『阿娟肉粽魯麵』。たっぷりと水分を含んだもちもちの食感が自慢の肉チマキは地元民に人気
端午の節句から夏場にかけて、暑さを乗り切るために食べると良いとされるチマキ。理にかなった携帯食
南部チマキの人気店としては、台南のグルメストリートとして知られる國華街沿いの『阿娟肉粽魯麵』が有名だ。國華街を歩いていると、大きな木の下にいくつも大鍋を並べてチマキを量産しているのですぐにそれとわかる。行列ができているのは人気の肉チマキと麺を求める地元客が後を絶たないため。肉、野菜、米がバランスよく配合された究極の携帯食、チマキを夏旅の友として活用してみてはどうだろう。
ガジュマルの木の下で量産される『阿娟肉粽魯麵』のチマキ。台南のグルメストリート、國華街沿いの人気店
*今秋、首都圏で筆者のトークイベントがいくつか行われる予定です。具体化しましたら本コラムやTwitter(https://twitter.com/keyword101)でお知らせします。
*著者最新刊、双葉文庫『ポケット版 台湾グルメ350品! 食べ歩き事典』が好評発売中です。旅のお供にぴったりの文庫サイズのポケット版ガイド、ぜひお手にとってみてください!
発行:双葉社 定価:本体648円+税
*単行本『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』が、双葉社より好評発売中です。ぜひお買い求めください!
定価:本体1200円+税
*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!
![]() |
著者:光瀬憲子 1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/ 近況は→https://twitter.com/keyword101 |