築地 ごちそう案内
14 Fish Market Historical Story
EDO-TOKYO
UOGASHI
Fish Market Historical Story
お江戸「魚河岸」物語
Take me to the Uogashi Historical Trip !
築地から豊洲への移転延期が発表された東京都中央卸売市場。
日本のみならず今や世界中の人の舌を楽しませているこの巨大市場を取り巻く情勢はいま大きく揺れ動いている。
本コラムでは11月移転を前提に市場内の「魚がし横丁」の紹介をしてきたが、この問題が解決するのは、なかなか簡単ではなさそうだ。市場の移転延期によって、市場内の商店街「魚がし横丁」のお店はどうなるのだろうか? 今回は魚河岸の歴史を簡単にご紹介しましょう。
【江戸~明治】
徳川家康とともに始まる
お江戸日本橋魚河岸事始
「東京名所画帖−江都日本橋之圖」(江戸時代)
日本橋
NIHONBASHI
江戸に幕府を開いた徳川家康は、江戸城内の台所をまかなうために、大阪佃村の漁師を呼び寄せた。彼らは、江戸湾内での漁業の特権を与えられる代わりに、獲れた魚を幕府に納める義務を負った。そして、納めた残りの魚を日本橋で売ることを幕府が許可したのが、魚河岸の始まりと言われている。こうして、江戸の町の台所をもまかなうことになった日本橋魚河岸だが、時代が明治へと移り変わると、東京の近代化が進み、魚河岸の取引量や業者も増えていった。しかし、近代的な商取引制度が未整備であったため、取引が乱れ、魚河岸の不衛生な状況と相まって、公設の中央卸売市場を望む声が高まった。
「日本橋(魚河岸)魚市場」(明治40年)
「帝都名所 日本橋魚河岸及び人形町馬喰町方面の遠望」(震災前)
【大正~昭和】
関東大震災で日本橋壊滅
代わって築地市場が誕生
中央卸売市場−東京都中央卸売市場築地市場」(昭和12年)
築地
TSUKIJI
東京市による中央卸売市場の計画が進められていた矢先の大正12年9月、関東大震災が東京を直撃。日本橋魚河岸は全壊。300年以上続いた日本橋魚市場は幕を閉じた。その後、芝浦に仮説市場か設けられるが、交通の便が悪く、市場も狭いなどの理由で、築地に市場が建設された。これが築地市場の始まりである。昭和10年2月、正式に築地の東京都中央卸売市場が開設。近代的な施設の完成と、公正な取引の開始により、価格も安定した。しかし、昭和12年に勃発した日華事変をきっかけに、卸売市場は配給機関に変わり、入荷量は激減。太平洋戦争終戦時には、開場当時に比べ、約5分の1にまで減少してしまった。
【左】「中央卸売市場−東京都中央卸売市場築地市場」(昭和8年) 【右】「中央卸売市場の一角−東京都中央卸売市場築地市場」(昭和32年)
「築地魚市場、鮪入荷−東京都中央卸売市場築地市場」(昭和32年)
【終戦~平成】
日本経済とともに、築地は
世界一の魚河岸に成長
「築地市場内の小飲食店−東京都中央卸売市場築地市場」(昭和32年)
戦争が終わっても統制は続き、市場機能はストップしていたが、取扱量は徐々に増加。統制が全面的に解除された昭和25年頃には取り扱い量は戦前の水準に達した。昭和30年には進駐軍による接収が完全に解除され、さらに、昭和37年には、東京の人口が、1000万人を超え、高度成長期をむかえる。築地市場では、冷凍技術の進歩やトラック輸送の進展で、現在のように全国各地から築地へ荷が集まるようになった。1971年には、「卸売市場法」が制定され、市場の取引能力は、より向上。築地市場は水産物では世界最大の取引規模を誇る魚市場へと成長し、日本の台所と呼ばれるようになった。
「築地市場の初荷」(昭和49年)
「築地市場全景」(平成27年)
【平成~】
築地から豊洲へ。新たな魚河岸の時代。
豊洲
TOYOSU
豊洲新市場全体イメージパース(提供:東京都中央卸売市場)
昭和60年代に入ると、施設の老朽化・過密化が著しくなったため、平成13年、豊洲への移転が決定。豊洲市場の面積は、築地市場の約1.7倍となり、施設も近代化される。それによって、「食の安全・安心の確保」「多様なニーズの確保」「効率的な物流の実現」「環境配慮など」が可能となる。現在、築地市場内にあり、一般のお客さんが利用できる飲食店や小売店の多くも、豊洲市場内に移転する予定だ。また、場外にも一般のお客さんが利用する「千客万来施設」が出来、新たな名所として、賑わいに花を添える。時代は変わっても、豊洲市場は、江戸の新たな魚河岸として、人々の期待に応え発展していくだろう。
ところが、新しく東京都知事に就任した小池百合子氏が平成28年11月に予定されていた中央卸売市場・築地市場の豊洲移転を延期すると正式に発表した。TVや雑誌等のメディアではこの問題が頻繁に報道されているが、移転がいつになるのか等の詳細は未定だ。
*本連載は毎週火曜日配信予定です。
*このサイトで紹介しているお店は、すべて「築地 ごちそう案内 2016」にてまとめて読むことができます。全店MAP、店舗情報なども網羅した保存版です。
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