旬の地魚を味わう全国漁港めぐり
10 【4月の旬魚】土佐「初鰹」・讃岐「鰆」
「本当に旨い魚を現地でいただく!」をテーマにお届けする「全国漁港めぐり」。
今回は四国の春の旬魚、土佐の「初鰹」、讃岐の「鰆」をお届けします。
土佐:カツオのたたき 讃岐:サワラの味噌漬け
暖海性のカツオは春になるとイワシなどのエサを求め、黒潮に乗って太平洋沿岸を北上する。2月頃に九州沖、3月頃に四国沖、4月頃には伊豆や房総沖に到達する。東京はちょうど新緑の頃で、江戸中期の俳人山口素堂は「目に青葉山ほととぎす初鰹」と詠み、カツオに季節を感じた当時の人々の気持ちを表した。
「勝男」の当て字もあるようにタイ同様、縁起物の魚でもある。江戸時代には、春出始める初ガツオが高値で競られ、今の値段で1尾数万円の値が付いたことも。庶民にはなかなか手に入らない、高値ならぬ高嶺の花だったようだ。新緑の頃、まばゆい光の中にキラキラ輝く銀色の魚はまさに人々の憧れの的であったろう。
今では気軽に初ガツオを楽しめるようになった。食べ方もいろいろだが、人気は「たたき」。皮付きのまま身をさっと炙ることで、香ばしい香りとともに旨味を中に閉じ込めた土佐発祥の料理である。
足の早いカツオには理に適った調理法といえ、皮と身の間にいる虫を焼き殺す効果もある。スライスにし、ネギやシソやタマネギ、ニンニクやショウガなどをかけ、土佐酢などでいただく。この薬味野菜と一緒に生魚を食べるというのは今でこそ一般的だが、カツオのたたきが元祖ともいえるだろう。最近では塩たたきも人気。
KATSUO
鰹スズキ目サバ科カツオ属の魚。マグロの仲間で、熱帯・温帯海域に広く生息する。回遊性の魚で、日本近海では春、太平洋岸を北上し、8月頃に三陸沖に到達。9月頃にUターンし南下する。いわゆる「戻りガツオ」だが、さっぱりした初ガツオと脂の乗った戻りガツオと季節ごとに違う味が楽しめる。
大きいもので全長1mほどだが大体が50cmほど。漁法は大きく分けて、網で獲るものと竿で釣る2種類。竿釣りは土佐の一本釣りが有名。これは、カツオのなぶら(魚群)を発見したら活餌(イワシ)を撒き、散水ポンプで水を撒き、イワシの群れと勘違いしたカツオを一匹一匹釣り上げるという漁法。カツオは目がよく、疑似餌が付いた針に喰い付くが、頭上で跳ね上げたカツオを針から外して獲る「跳ね釣り」のコツを覚えるには2、3年かかるそうだ。
たたき、刺身、カツオ飯…。
中土佐町「かつお祭」
5月第3日曜日に開催予定!!
写真提供:高知県
同じ四国でも、高知に春を告げる魚がカツオなら香川はサワラである。香川県民にとって昔から春を感じる魚であり、今もサワラ料理を振る舞う「春祝魚」(はるいお)という風習が残る。
幼魚はサゴシ(サゴチ)やヤナギ、成長してサワラと呼ばれる出世魚。やわらかい白身ながらサバやサンマと同じ赤身の青魚だ。鮮度が落ちやすいため味噌漬けや粕漬けなどに加工することが多いが、香川では刺身でも食す。「タイの浜焼き、サワラの刺身」といわれるほどとても美味。新鮮なサワラが手に入る地元ならではだ。
塩焼きや煮付け、照り焼きや酢の物、押し寿司など、香川ではさまざまな料理で味わう。江戸時代からサワラの卵巣でカラスミもつくり、今も伝統的な手法でつくり続けられている。
県民が愛する魚ながら、漁獲量は1986年に1000トンを超えていたのが、1998年には20トンを切るまでなった。乱獲やエサのイワシやイカナゴが減ったことが原因とされるが、他県とも連携しながら休漁や種苗の放流など、サワラの資源管理に努めた結果、2014年には600トンを超えるまで回復した。
香川ではサワラ漁の解禁は4月中旬から下旬。江戸時代から続く流し刺し網漁で獲る。通り道に網を沈め、泳ぐサワラをからめてつかまえるというもので、網にかかった痕の線が付くのが刺し網漁の印。
SAWARA
鰆スズキ目サバ科の魚。鋭い歯とヒレを有するスマートな体型が特徴。魚ヘンに春と書いて「鰆」サワラと読むが、狭腹(さはら)が転訛したとされる。北海道以南の温帯、亜熱帯海域に広く生息。日本周辺では、主に日本海や黄海、東シナ海に分布するものと、西日本太平沿岸から瀬戸内海に分布する二つの系統がある。後者は春、産卵のため瀬戸内海に入り、5~6月に産卵を終えると外海へ移動し再び翌春、瀬戸内海に戻ってくる。稚魚は秋まで瀬戸内海で過ごし、その後外海へと移動する。肉食で小魚などを捕食。成長が早く、1年で60cm、2年で80cm、4年で1mに育つ。マダイやヒラメの2~3倍の早さというが、50cm前後の小さなものはサゴシやサゴチと呼ばれている。
3年に一度の開催年
瀬戸内国際芸術祭2016
写真提供:香川県
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