料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」

#65

  第64回 富山・利賀

文と写真・山本益博

 

 

 

富山の名店、フランス料理「レヴォ」、日本料理「御料理ふじ居」、鮨屋「鮨し人」へ

 

 

 以前この連載でご紹介した富山のフランス料理「レヴォ」が、昨年12月末、山奥の利賀に新規移転して、あらたにオーベルジュを開きました。富山駅から車で1時間半の道のりです。
 そのオープン時に出かけ、オーベルジュに泊まりましたが、今回は昼食です。新幹線で朝早く東京を出て、富山に10時過ぎにつき、黒部の友人が運転してくれる車に乗って、利賀まで出かけました。山を二つほど越える先にオーベルジュはあります。フランスならば、さして珍しくありませんが、こんな人里離れた山奥にあるオーベルジュは、日本で初めてではないでしょうか。
 オーナーシェフの谷口英司さんはこの秘境に惚れて、個人では桁外れの借金をして、オーベルジュをつくり上げました。泊まれる部屋は3室、そのほかにサウナの別棟があり、レストランはオープンキッチンで、天井は高く、窓の外は森林で、都会では考えられない贅沢な環境です。
 この店でも谷口シェフの掲げる看板は「前衛的地方料理」。以前の「リバーリトリート雅樂倶」時代の料理を継承しながら、富山の食材に一層フォーカスして、里の幸、森の幸、海の幸を堪能させてくれました。
 なかでも「大門素麺」はびっくりしました。12月のオープン当初は、土地の名産品を使っての和食の感じに思えてしまったのですが、今回は黒部の山羊のチーズをスープに加え、独特の風味の出汁で素麺を食べさせてくれました。久しく忘れられない「レヴォ」の傑作と呼んでいいでしょう。

  
  

「大門素麺」の独特の風味の出汁

 

「レヴォ」の傑作

 

オーナーシェフの谷口英司さん

 

富山の奥懐に佇むオーベルジュ

 

  3時間の贅沢なランチを終え、同じ時間をかけて下山し、富山駅前にある「エクセル東急ホテル」へチェックイン、夕食の7時まで一休みです。
 その夕食は、富山駅から車で20分ほどの岩瀬にある日本料理「ふじ居」です。この店には、今から7,8年ほど前から通い詰めている、北陸で一番の私のお気に入りの和食です。当初は、市街のスーパーマーケットの広い駐車場の片隅に、バラック同然の建物で営業していました。その立地は料理との対比が凄かったのですが、現在は銘酒「満寿泉」の敷地内に移転して、高級料亭然となりました。
 季節は「ほたるいか」の真っ只中。ご主人の藤井寛徳さんが部屋を真っ暗にして、活きた「ほたるいか」が光を放つところを見せてくれる楽しい演出まであり、白海老、桜鱒、筍と言った季節の旬の食材と一緒に晩春ならではの献立を組んでくださいました。

 

白海老のしんじょう椀

 

ほたるいか飯鍋

 

   翌日昼は、富山で評判の鮨屋「鮨し人」です。お客様が全国から訪れて、昼2回転、夜2回転の大人気です。
   その4回転すべてを主人の木村泉美さんが一人で握りっぱなしの大奮闘。富山の恵まれた海の幸をそのまま生で使うのではなく、冷凍技術などを駆使して、今までにないような「つまみ」や「にぎり」を用意していました。
 その一例が、つまみの「ほたるいかのジャーキー」です。鮮度抜群のほたるいかを急速冷凍にかけ、持ち味のわた(内臓)を最大限に生かした逸品。「しろえび」の昆布締めも一味違った美味しさ。そのほか、「ばい貝」「桜鱒」「のどぐろ」などが、「つまみ」や「にぎり」で出てきます。「江戸前」の伝統「こはだ」は出番がないと思いきや、最後に握られました。しっかりと「江戸前仕事」がなされ、握りのフィナーレに申し分なしです。

 

 

こはだ

 

 酢めしは酸味が穏やかで、白身の味を邪魔しません。お茶が美味しいのも特筆もの。「つまみ」から酒のペアリングを頼むと、ここでも富山の銘酒「満寿泉」の特選酒が次々とグラスに注がれました。親方の木村さんは我田の富山の米(コシヒカリ)を使っていますが、敢えて通例の古米を避けて、塩梅よく酢を吸収してくれる最新年度米を炊くのだそうです。富山の海の幸、里の幸に敬意を払った、江戸前仕事がベースになった木村流儀の「握り鮨」、人気の秘密がよくわかりました。
  

 

「鮨し人」の店構え

 

 

 5月19日に発表になった「ミシュラン2021年版石川・富山・福井篇」で、「レヴォ」は2つ星、「ふじ居」も2つ星、「鮨し人」は1つ星でした。

 

 

 

 

 

 

■「レヴォ」

 

住所/富山県南砺市利賀村大勘場田島100番地0763-68-2115

 

問い合わせ/0763-68-2115

 

https://levo.toyama.jp

 

 

■「御料理ふじ居」

 

住所/富山市東岩瀬町93

 

問い合わせ/076-471-5555

 

https://www.oryouri-fujii.jp

 

■「鮨し人」

 

住所/富山県富山市新根塚町3丁目5−7

 

問い合わせ/076-422-0918

 

 

*この連載は毎月25日に更新です。

 

 

山本さん顔

山本益博(やまもと ますひろ)

1948年、東京・浅草生まれ。早稲田大学第ニ文学部卒業。卒論が『さよなら名人藝―桂文楽の世界』として出版され、評論家としてスタート。幾度も渡仏し三つ星レストランを食べ歩き、「おいしい物を食べるより、物をおいしく食べる」をモットーに、料理中心の評論活動に入る。82年、東京の飲食店格付けガイド(『東京味のグランプリ』『グルマン』)を上梓し、料理界に大きな影響を与えた。長年にわたる功績が認められ、2001年、フランス政府より農事功労勲章シュヴァリエを受勲。2014年には農事功労章オフィシエを受勲。「至福のすし『すきやばし次郎の職人芸術』」「イチロー勝利への10ヶ条」「立川談志を聴け」など著作多数。 最新刊は「東京とんかつ会議」(ぴあ刊)。山本益博さんの公式HPが新しくなりました! https://www.masuhiroyamamoto.com

 

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