料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#63
第61回 京都経由で鳥取へ2泊3日旅
文と写真・山本益博
京都「やま岸」と鳥取「かに吉」で解禁の蟹料理を堪能
毎年必ず鳥取の「かに吉」へ出かけるのですが、いつも羽田から飛行機で飛んでゆく。羽田・鳥取便はANAのみですが、飛行時間は1時間20分しかかからない。「かに吉」は仕込みに時間がかかるので、昼食が早くて2時、それが3時になっても構わない。午後の1便に乗り込み、3時から食事をはじめ、夜の最終便6時40分鳥取発の飛行機で帰る、日帰りも可能なのです。
それが、このコロナ禍で、毎日5便あったのが、3便に減ってしまいました。一番都合のよい午後1便が欠航になってしまったので、今回は、「GO TOトラベル」を利用して、京都経由で新幹線と特急を使って、陸路で東京から鳥取まで出かけることにしました。つまり、今回は、京都1泊鳥取1泊の2泊3日の旅です。
今回のホテルは、新町六角の「ビスタプレミオ京都和邸(なごみてい)」です。大通りではなく、車の通りの少ない、小ぶりな宿で、ロビーには京都らしく坪庭を配してあります。泊まってみると、ホテルの3本柱である「安全・清潔・静寂」が守られていて、とても快適です。
晩ごはんに出かけたのは、予約の取りにくいと言われる日本料理「やま岸」です。「やま岸」へ通い詰める京都の友人が誘ってくれました。カウンター10席の小体な料理屋で、ご主人の山岸さんが先頭に立って、料理する姿が颯爽としていて、カウンター割烹はかくありたいという感じです。
11月となると「蟹」が解禁で、京都の料理屋さんも、「蟹」料理は欠かせません。鮮度の申し分ない蟹に少々手をかけて盛り付けし、鳥取の「かに吉」とは違った趣向で楽しませてくれました。文句なしに美味しかったのが、白甘鯛とかぶらのお椀でした。この季節京都ならではの美味でした。
白甘鯛とかぶらのお椀
松葉蟹親蟹
ご主人の山岸隆博氏
翌日、昼を京都で食べてから、午後の特急「スーパーはくと」で鳥取まで3時間の旅です。
昼は特急の時間を考えて、京都駅の伊勢丹にある「和久傳」にしました。この店にはかなり前から通っていますが、久しぶりに出かけてみましたが、定番の「鯛の黒すし」は健在でした。赤酢の酢飯の上に鯛の薄切りを並べただけのシンプルなおすしですが、何度食べても飽きない逸品です。今、京都で評判の「緒方」の緒方さんが料理長だった時代に、彼が生み出したスペシャリテです。
鯛の黒すし
鳥取の「かに吉」は、この連載の初期に取り上げていますが、その当時はまだ名もない地方の蟹料理専門店でした。ところが、「ミシュラン」が昨年(2019年10月)に出版した2020年版の「京都・大阪・鳥取」篇で2つ星に輝くと、たちまち関西どころか日本中にその名がとどろいて、店は電話が鳴りっぱなしで、予約の困難な店になってしまいました。
「ミシュラン」は上海蟹の名店がある上海編も出版しているのですが、「かに吉」は世界で唯一の2つ星蟹料理専門店となりました。いつも通り、付きだしのかにみそからはじまり、刺身、焼き蟹、蟹爪フライ、蟹すし、茹で蟹、クラブハウスサンドイッチ、蟹すき、蟹雑炊のフルコースを堪能いたしました。東京、関西などの都会では、絶対に味わうことのできない、蟹の桃源郷の味わいです。今年は、蟹のバター焼きという新作も登場し、いまだ、「かに吉」は進化を遂げています。3時間のフルコースを満喫して、店から歩いて5分の「ホテルモナーク」に一泊しました。
松葉蟹
蟹すし
蟹すし
蟹料理専門店で世界で唯一の2つ星
翌日の昼は、鳥取駅前の「大丸」に新しく入ったピッツァが売り物のイタリア料理「KAEN」でランチです。窯で焼き上げる本格ピッツァが売り物なのですが、それを窯を囲んだカウンターで食べられるのが素晴らしい。ピッツァは何より出来立てが命、1分以内が理想ですが、ここならそれが可能です。鳥取の食材を駆使して焼き上げたピッツァを、熱々のうちに平らげて大満足でした!
釜を目の前にしたカウンター
鳥取の食材を駆使したピッツァ
次回は2021年3月掲載となります。
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*この連載は毎月25日に更新です。
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山本益博(やまもと ますひろ) 1948年、東京・浅草生まれ。早稲田大学第ニ文学部卒業。卒論が『さよなら名人藝―桂文楽の世界』として出版され、評論家としてスタート。幾度も渡仏し三つ星レストランを食べ歩き、「おいしい物を食べるより、物をおいしく食べる」をモットーに、料理中心の評論活動に入る。82年、東京の飲食店格付けガイド(『東京味のグランプリ』『グルマン』)を上梓し、料理界に大きな影響を与えた。長年にわたる功績が認められ、2001年、フランス政府より農事功労勲章シュヴァリエを受勲。2014年には農事功労章オフィシエを受勲。「至福のすし『すきやばし次郎の職人芸術』」「イチロー勝利への10ヶ条」「立川談志を聴け」など著作多数。 最新刊は「東京とんかつ会議」(ぴあ刊)。山本益博さんの公式HPが新しくなりました! https://www.masuhiroyamamoto.com |