料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#22
東京/四谷・小石川・麻布十番
夜は鮨への情熱溢れる「後楽寿司 やす秀」へ
昼は若手料理人の洋食屋、老舗の「たいやき」と「かき氷」
■いま、東京で最もお薦めするすし屋は、四谷の「後楽寿司 やす秀」
今、わが夫婦が最も応援している若手のすし職人といえば、四谷「後楽寿司やす秀(みつ)」の綿貫安秀(やすみつ)さんです。まだ、この店に通い始めて2年半しかたっていないのですが、その間の綿貫さん(私たちは、ヤスさんと呼びますが)の精進ぶりは素晴らしく、めきめきと腕を上げてきました。
まず第一に「酢めし」。メリハリが利いて、すし種が素敵に活きてきました。次に、そのすし種の質の高さ。彼の「鮨」への情熱が伝わってか、築地の仲買さんの信用を勝ち取って、今ではかなり質の高い品物(魚貝)が手に入るようになりました。例えば、「あわび」など、築地でも最高品質と言ってよく、それを香り高く、柔らかな「蒸しあわび」に仕上げています。
「まぐろ」も「あじ」も「うに」も同様、2年前とは全く違う握りずしに生まれ変わったと言ってよいでしょう。こんなに成長著しいすし職人も珍しい。そこへもってきて、「Dancyu」などの雑誌やマスコミの媒体で紹介され、新しいお客さんが増えてきました。
その絶好のタイミングで、同じ四谷の三栄町に移転し、9月1日、新規開店しました。いま、最もお薦めするすし屋です。ただし、夜のみの営業です。
昼に出かけてほしい若手の料理人の店が、小石川の「洋食フリッツ」です。かつて、赤坂に同名店がありました。残念なことに閉店してしまったのですが、そこで働いていた若手の料理人が独立するにあたって、その名前を継ぐことになりました。「フリッツ」とは、フランス語で「揚げもの」を意味する「フリット」の複数形です。
場所は後楽園近く「えんま商店街」の中にあり、2階にあるためか目立ちません。はじめて出かけたとき、探しながら歩いたのですが、つい通り過ぎてしまったほどです。
「洋食屋」は「揚げもの」「煮こみもの」「ごはんもの」が三本柱ですが、「洋食フリッツ」はロースかつ、クリームコロッケ、ビーフシチュー、カレー、ドリア、なんでも間違いのない味です。
昼時は、近所にお勤めの女性陣が、1000円のランチで、美味しそうに「チキンドリア」を食べています。ランチといえども、突き出しに出てくる「サラダ」に手抜きがありません。
私はこの後、地下鉄南北線に乗って、「後楽園」駅から「麻布十番」駅に移動、「浪花家総本店」で「たいやき」と「かき氷」を注文します。「かき氷」は「氷宇治金時」ではなく「氷宇治」。なぜなら、左手に「たいやき」を持ちながら、かき氷を食べるから、あずきはいらないのです。温かいものと冷たいものを交互に食べる。しかも、この店にはクーラーがありません。たいやきを焼き上げる熱気が漂う店内、扇風機が回るのみです。ここで、いただくかき氷にかなうものはありません。
そして、宿は「サンルート」が都内に何か所もあって、コンパクトですが、清潔で都内のリーズナブルなホテルとしてお薦めできます。
次回は、台湾(台北・台中)へ。
■「後楽寿司やす秀」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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ご主人の安秀さんと妻美穂子と | 江戸前の見事なしんこ |
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艶やかなえび |
最高品質の蒸しあわび |
■「 洋食フリッツ」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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セットのサラダは新鮮な季節野菜 |
メンチカツとクリームコロッケ |
■「 浪花家総本家 」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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浪花家総本家の店構え |
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氷宇治とたいやき |
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*この連載は毎月25日に更新です。次回は台湾(台北・台中)へ。