料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#21
京都
理想のお宿、京都・麩屋町にある「俵屋旅館」に。
チェックインしたら、決して外出したいと思わない宿。
■1年先まで予約が埋まる日本料理の「未在」に
外国からいらしたお客様が京都で行ってみたいと熱望されるお店の最右翼が、日本料理の「未在」です。なんと、1年先まで予約が埋まってしまっている超人気店です。昨年夏に、お友達が席を確保して下さり、久しぶりに夫婦で出かけることができました。
丸山公園の一角に佇む一軒家の料理屋で、料亭然としているのですが、店内はカウンター14席のみなので、「料亭」ではなくカウンター割烹の「料理屋」、つまり、料理をカウンター内で仕上げて、目の前で手渡ししてくれます。
その料理、写真撮影が禁止なので、お目にかけられないのが残念です。はじめは「茶懐石」仕立てで簡潔な始まり方なのですが、例えば、お造り(刺身)などは、食べきれないほどの盛り沢山で、豪華絢爛な料理が展開されます。そうして、最後は「焦がし湯」と言って、御飯のおこげをお湯につけていただき、ご馳走さまとなります。
「未在」ほど予約が難しくなく、でもできる限りかなり前から席を確保して出かける値打ちのある店は京都には、ほかにもいくつもあります。「浜作」「緒方」「大渡」「上賀茂秋山」などは、とてもお薦めです。
「未在」をご紹介したので、旅館の最高峰もご案内しましょう。麩屋町にある「俵屋旅館」が、私の理想のお宿です。宿は「清潔」静寂」「安全」が三本柱ですが、これが申し分ありません。ホテルと違って、旅館は1泊2食、つまり朝ご飯、夕ご飯がセットされています。京都でしたら、市内に素敵な料亭、割烹がいくらでもありますが、「俵屋」の料理は、それらに負けていません。食事を済ませたら、タクシーで宿に帰る必要がなく、すぐに横になれる特権は「旅館」ならではです。
「理想の宿」とは、チェックインしたら、決して外出したいと思わない宿のことです。「俵屋」は玄関に入るなり、空気が一変して、京都にいることさえ、一瞬忘れてしまうほど。部屋から眺める坪庭の光の移ろいは、いくら眺めていても飽きることがなく、居心地の良さと言ったら天下一品です。
チェックインしたときに、檜のお風呂にお湯がたっぷりと満たされているのも、さりげない優れたおもてなしです。この宿の常連になることが、私の見果てぬ夢でもあります。世界最高峰のホテルを120軒以上泊まり歩いた私の結論でしょうか。
「俵屋旅館」に泊まったならば、翌日のお昼は、はす向かいにあるてんぷら「天邑」がお薦め。「天邑」は「俵屋」の経営です。
風情のある玄関を入っていくと、コンクリートのモダンな建物が待っていて、これが「天邑」の入り口です。揚げ場は2階にあり、カウンターでてんぷらを食べさせてくれます。えび、あなご、野菜など、どれも軽快なてんぷらで、東京のてんぷら好きの人間がいただいても満足する食事と言えましょう。
次回は東京です。
■「未在」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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妻の美穂子と玄関前で |
■「 点邑」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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夏ならでは雅鮎 |
軽快なえび |
美しいあなご |
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ぱちこと雲丹 | 風情のある玄関 |
■おすすめの店 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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「浜作」はもとなすのお椀 |
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「緒方」琵琶湖の鰻蒲焼 |
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■立ち寄りたい PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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京都国立近代美術館 |
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京都国立近代美術館にて |
「北大路魯山人展」はおすすめ |
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*この連載は毎月25日に更新です。次回は東京へ。