料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#18
「金沢 富山」
富山はアートの宿に泊まり、
金沢は日帰りで楽しむ。
■富山湾の氷見から毎朝仕入れる江戸前鮨へ
「つるぎ」という金沢・富山間のみ走る北陸新幹線をご存知でしょうか? 今回、ゴールデンウィークに出かけ、富山の「リバーリトリート雅樂倶」に宿を取り、「つるぎ」に乗って、金沢へ日帰りで出かけてきました。
「かがやき」も「はくたか」も自由席まで満席でしたが「つるぎ」には、お客は数えるほどしか乗っていません。採算度外視の新幹線です。時間にして20分ほど、金沢の宿はゴールデンウィークでなくとも、常にどこも満杯なので、富山に宿を取るのはグッドアイデアではないでしょうか?
金沢で目指すのは彦三町の「鮨木場谷」です。1年ほど前にオープンしたばかりの新参ですが、それまでは富山で出張鮨をやっていました。昨年2月に富山で出張の「木場谷」をいただくと、見事な「江戸前」で、いっぺんに気に入りました。その場で、まだ開店前の金沢の店を予約し、6月に出かけましたので、今回は2度目の訪問となりました。
つまみに、あわびの塩蒸し、のどぐろの塩焼きなどをいただいた後、まぐろ、こはだ、あなごなどの江戸前のすし種のほかに、たい、すみいか、しろえび、バイ貝などの地元、と言っても富山湾の氷見から毎朝仕入れた魚介を酢めしに合わせて握ってくださいました。
さて、金沢で立ち寄りたい場所はいくつもあるのですが、今回は「21世紀美術館」へ足を運びました。ユニークな建物のなかに「現代美術」が詰まっている素敵な美術館です。常設の展示ギャラリーが無料というのも気が利いていますね。
■たんを刺身で食べられるホルモン料理専門店へ
富山に戻って、大沢野にある「リバーリトリート雅樂倶」に泊まり、今大評判のメインダイニングの「レヴォ」でもいただきましたが、もう1軒、前日に出かけたのが、「お多福」というホルモン料理専門店でした。
「速星」駅の目の前にあり、夕方4時から営業なのですが、すぐにサラリーマンたちで一杯になってしまう、富山では大人気の店です。時計を見ると、5分ほど針が進んでいて、理由を伺うと、店が駅前にあるものだから、お客様が皆ギリギリまで食べたり飲んだりしていて、急いで終電車に駆け込まなくてもいいように、5分進ませているとのことでした。都会の駅ではこうはいきませんね。
さて、メニューですが、誰もが注文しているのが「たん刺し」です。これを手始めに、カシラ、ミノ、ハツなど片っ端から注文しては食べまくりました。どれも、網に載せて炭火で焼くのではなく、ステンレスの鍋に玉葱やもやしと一緒に強火で炒めていただきます。「たん刺し」は香りよく、甘く、適度な噛み応えで、「タンシチュー」好みの私には堪らない味わいでした。妻の美穂子も「まさか、たんを刺身で食べられるなんて」と大感激でした。最後は、テール抜きのテールスープとごはん、お新香で〆ました。
可愛いおかみさんの目がよく行き届き、どんなに忙しくても愛想を忘れません。天性の「おもてなし」の心を持った方です。それに対して、ご主人は仕事一徹の職人気質の料理人で、客席から調理場が見えるのですが、ニコリともしません。帰り際、丁寧にあいさつすると、初めて笑顔を返してくれました。
東京からわざわざ出かける甲斐のある「ホルモン専門店」です。
■「鮨 木場谷」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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地元・氷見のしろえび | 見事な江戸前のこはだ |
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ご主人の木場谷光洋さん |
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ご主人と共に |
■「 お多福 」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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香りいいたん刺し |
新鮮なホルモン |
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もも肉のロースト |
女将さんのおもてなしがうれしい |
■「 リバーリトリート雅樂倶 」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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メインダイニング「レヴォ」で友人の桑原ご夫妻と一緒に |
バスルームからの眺め |
■「 21世紀美術館 」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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21世紀美術館にて、妻の美穂子 |
21世紀美術館 ギャラリー |
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*この連載は毎月25日に更新です。次回は「ハンガリー ブタペスト」へ。