料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#15
ニューヨーク(後編)
オペラ見物のあとは、
おめかししてレストランへ
■ニューヨーカーに人気の最先端レストラン
このところ毎年ニューヨークへ出かけるのは、メトロポリタン歌劇場(通称MET)へオペラを見に行くためです。オペラを楽しんだ後、いつも問題になるのが、夜遅くホテルへ戻るためにオペラハウスの前から、タクシーを拾うのに苦労することです。そこで、METから歩いて行けるほどの近さで、安全で手頃な値段のホテルを探しているうちに4年前に「Hudson」というホテルを見つけました。
「安全」で「手頃な値段」なうえに「清潔」で、しかもセントラルパークにも近い。パークの南端西側はコロンバスサークルで、タイムワーナービルという大きな商業施設のビルが建っていて、この中に「ミシュラン」3つ星のレストラン「PerSe」「MaSa」、前回紹介したステーキハウスの「PORTERHOUSE」が入っています。地階にはスーパーマーケットやフードコートまで揃っていて誠に便利です。
何泊もするので、ホテルで朝食を食べずに、外に出かけていただくこともしばしばです。ホテルから歩いて5分、セントラルパーク近くの「Le Pain Quotidien」はベルギー発のオーガニックが売りのベーカリーですが、その支店のこの店は朝早くから大賑わいです。仲間と一緒に出掛けては、おなかの空いている人はサラダに卵料理を付けた皿をいただきますが、クロワッサンにカフェオレだけでも済ませることができます。
毎晩、オペラ見物ですが、今回、土曜日はマチネ(昼公演)を見て、夜はおめかしして「Le Bernardin」へ出かけました。「ミシュラン」3つ星ばかりでなく、「Zagat」という全米で人気のレストランガイドでも断トツ1位に輝くフランス料理店です。1970年代、パリで魚料理が評判のレストランだったのですが、ニューヨークに移転後、すぐに人気がでて、ニューヨークでは珍しい魚料理専門店のレストランとして確固たる地位を確立しました。
私は20年以上前に出かけたことがあるのですが、皿の上は主役の魚介より、付け合わせの野菜のボリュームの方が多く、何ともデリカシーに欠けた料理なのだろうと思ったものでした。当時のニューヨーカーにとっては、あまりの量の少なさに注文を付けたのではないでしょうか。それが、今や主菜と付け合わせのバランスが見事にとれた、味わいの繊細な料理に生まれ変わっています。2年前にも出かけていて、あまりの変貌ぶりにびっくりし、またまた足を運んだのでした。
翌日曜日は、オペラが休みなので、美術館巡りです。ホテルから歩いてゆけるのは「ニューヨーク近代美術館(通称MOMA)」、他にはカンディンスキーを見に出かける「グッゲンハイム美術館」それにフェルメールが静かに見ることができる「フリック・コレクション」、移転したばかりの現代美術が豊富な「ホイットニー美術館」など。これらは、掛け持ちが可能なのですが、1日ではとても見切れない美術館が「メトロポリタン美術館」です。
そこで、今回は「メトロポリタン美術館」のみじっくりと時間をかけることにしました。それでもとても1日では見切れません。古代エジプトと日本、東洋に的を絞って見て回りました。外国からアジア、日本を見つめる絶好の機会となりました。
その晩、予約しておいたレストランはニューメキシコ料理の「COSME」。いま、注目を浴びている南米料理がニューヨークで新しい潮流を生み出しつつあります。その先端を行く一軒で、果物や香辛料を巧みに使ってニューヨーカーの人気をさらっています。
■「Hudson Hotel(ハドソン ホテル)」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
![]() |
||
フィリップ・スタルクによるモダンな設計 |
■「Le Pain Quotidien(ル・パン・コティディアン)」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
![]() |
![]() |
|
賑やかな店内 | クロワッサンの朝食 |
■「Le Bernardin(ル・ベルナルダン)」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
![]() |
||
SKATEエイの蒸し煮 |
■「COSME (コスメ)」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
![]() |
||
白身魚のマンゴーソース |
■「メトロポリタン美術館」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
![]() |
||
豊富な日本美術が展示される日本館 |
■「セントラルパーク」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
![]() |
|||
妻の美穂子とセントラルパークにて |
|
|
*この連載は毎月25日に更新です。次回は「シンガポール」です。お楽しみに!