料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#14
ニューヨーク(前編)
毎年冬はニューヨークへ
昼はレストラン、夜はオペラ見物
■この上ないニューヨークの休日
東京のすしの名店「すきやばし次郎」のドキュメンタリー映画に「二郎鮨の夢を見る(原題JIRO DREAMS OF SUSHI)」があります。監督は当時26歳のアメリカ人の若者で、そのデヴィッド・ゲルブ監督を小野二郎さんに紹介したのが私でした。私は映画の中にも出演していて、欧米のレストランへ出かけると、しばしば店の方から声をかけられるほど、世界中でヒットしている映画です。
デヴィッド・ゲルブ監督のお父さんがじつは、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場(通称MET)の総監督ピーター・ゲルブさんで、この映画がご縁でこのところ毎年、夫婦でニューヨークへ出かけてはオペラ見物をしています。
METのオペラは日曜を除いて毎日上演され、土曜日は昼夜2公演というレパートリーシステムです。ですから、昼はレストラン、夜はオペラという、毎年冬はこの上ないニューヨークの休日となります。
2017年1月はグノーの「ロミオとジュリエット」モーツァルトの「魔笛」プッチーニの「ラ・ボエーム」それにヴェルディの「ナブッコ」という豪華なプログラムが並ぶ日程に合わせ、オペラ好きの仲間を誘って、出かけてきました。一番のお目当ては、三大テノールで知られるプラシド・ドミンゴがタイトルロール(表題役)で主演する「ナブッコ」でした。
ゼネラルマネージャー席の部屋に招待され、「ロミオとジュリエット」の開演を今か今かと待っていると、同じ客席の部屋に現れたのが、なんとドミンゴ夫妻でした!
私たち夫婦は世紀のオペラ歌手プラシド・ドミンゴの背中越しにオペラ「ロミオとジュリエット」を見るという、これ以上贅沢なオペラ見物はないという経験をさせていただきました。
この日の昼に出かけたレストランが、セントラルパークの南端、コロンバスサークルに面したタイムワーナービルの4階に入っているステーキの「PORTERHOUSE」でした。
毎年、ニューヨークを訪れては、「WOLFGANG」「BLT」「SPARKS」などステーキの名店の食べ歩きをしているのですが、この「PORTERHOUSE」が私たち夫婦の一番のお気に入りになりました。ちなみにポーターハウスとは、Tボーンの一番上等な部位のことで、ヒレとサーロインの両方を同時に味わうことができます。焼き方はいつも「レア」。28日間熟成させた赤身の牛肉を最上の状態で味わうことができます。付け合わせに注文した「マッシュポテト」には、季節の黒トリュフのスライスがたっぷりと添えられ、妖艶な香りを放つ付け合わせとなりました。
翌日の昼は、マンハッタンのダウンタウンSOHOにある日本料理「BRUSHSTROKE」。
ニューヨークの日本通の名シェフデヴィッド・ブーレイと日本の辻調理師専門学校が協力し合って会席料理を作っています。お椀の出汁もお造りの刺身も本格で、アメリカの食材を使いながら、立派な和食を食べさせてくれます。いや、日本ではいただくことができない会席料理と言っても過言ではありません。ニューヨークへ来たからには、出かけたい店が山ほどありますが、予定を立てるたびに味を思い出し、今回で4度目の食事となりました。
初めて訪れたときに出された「トリュフ入りの茶碗蒸し」今回も品書きにありましたが、トリュフと卵との相性はもちろんのこと、中に入っていたキングトランペットという茸とも見事なマリアージュ(結婚という意味のフランス語)を見せてくれ、進化形の茶碗蒸しをいただきました。
ニューヨークの滞在は5泊でしたので、この続きは次回、ニューヨーク後編で。
■「メトロポリタン歌劇場」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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大理石で覆われたメトロポリタン歌劇場 |
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妻の美穂子とメトロポリタン歌劇場にて |
ドミンゴさんのサイン |
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■「PORTERHOUSE (ポーターハウス)」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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28日間熟成させた赤身の牛肉のレアステーキ | 黒トリュフたっぷりのマッシュポテト |
■「BRUSHSTROKE (ブラシュストローク)」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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見事なお造り | トリュフ入りの茶碗蒸し | ブラシュストロークの店内 |
*この連載は毎月25日に更新です。次回は「ニューヨーク 後編」です。お楽しみに!