韓国の旅と酒場とグルメ横丁
#118
「韓国ロス」のみなさんへ〈12〉先日の講座復習編
変わるソウル、変わらぬソウル
先日、初めて行ったオンライン講座(「愛しの韓国ソウル大衆酒場」朝カルオンライン)は70名さま以上にご参加いただき、とてもうれしく、いい刺激になった。
テーマは「ソウル大衆酒場の今」だったが、ソウルの東にある注目エリアや地方の注目都市についても少し話すことができた。
その補講を兼ね、今回から数回に渡り講座では話し切れなかったこと、見せ切れなかった写真や動画をお送りしていきたい。
講座はこの半年間のソウルの変化を意識して構成した。写真は鍾路3街の顔、『味カルメギサル専門』とその周辺。この手前左手には2階建て+ルーフトップバー、その名も『オクサン』(屋上)という店が誕生している。右手もフェンスで覆われているので、今後この一帯の雰囲気は大きく変わりそうだ
総マスク時代
韓国も春はマスク・パニック状態だったが、今ではコンビニでも市場でも多様なマスクが手に入る
街なかでマスクをしない人はほとんど見なくなったが、これが20年前の韓国ならどうだったろう?
2002年のワールドカップ以降、韓国のイベントやコンテンツが注目され、海外の人との交流機会が増え、我が国にも公共心が芽生えたのかもしれない。また、ここ数年、ミセモンジ(PM2.5より粒子の小さい有害物質)が深刻化し、マスクの重要性が広く認識されたこともあるだろう。
私が日本に留学していた90年代後半の韓国はすべてが荒々しかった。思ったことはすぐ口にし、思いのままに行動する。人の動きも街も整然とした日本では我が国のアラばかりが目についた。周辺国からも長らく「統制するのが難しい民族」などと言われていたような気がする。
ようやく民主化が成り、軍人出身でない大統領が誕生したと思ったら、その数年後には経済危機(IMF事態)を迎え、国に対する不信感が増していた時期、マスクをしろと言われても、今ほど足並みが揃わなかったのではないかと想像する。
シュポ(一杯飲める食料雑貨店)で
乙支路4街駅の東側の路地にあるシュポ『トンイル食品』
「初めてシュポ飲みをするとき、どんなものを注文したらいいですか?」
という受講者さんの質問に対する答えをちょっと補足しておく。
シュポは個人経営の小規模なコンビニのようなものなので、酒類はビール、ソジュ、マッコリなどの一般的な銘柄はひと通り揃っている。もちろん、ソフトドリンクもあるので、お酒が飲めない人でも大丈夫だ。
つまみは店内に並んでいるポテトチップや干物、缶詰などを選んでもいいが、女将が簡単な調理をしてくれる店が多いので、「ムォガ デヨ?」(何ができますか?)、「ムォガ マシッソヨ?」(何が美味しいですか?)と聞いて、おすすめをいただけばよいだろう。
ほとんどの店で出していて無難なのは、ケランフライ(目玉焼き)、SPAMクイ(ポークランチョンミート焼き)やミョンテクイ(干し鱈焼き)、トゥブキムチ(豆腐キムチ)だ。
『トンイル食品』のトゥブキムチとマッコリ
シュポは薄利多売の商売だ。酒もつまみも普通の飲食店と比べたら2~3割は安い。“せんべろ”などと言わず、言葉のよく通じない人をあたたかく迎えてくれる女将や常連さんに報いるためにも、たくさん飲み食いしてあげてほしい。
第二のソウル路それでも
50年以上の歴史があり、世運商街(セウンサンガ)とひとくくりに呼ばれている住商複合ビル群は、北は宗廟の前から、南は忠武路駅まで壁のように連なっている。
このビル群、今は3つの大通りを挟んで分離されていて、そのうち一番北側の清渓川を挟んだ部分は2017年に架橋され、遊歩道となっている。
北側にある世運商街(撮影地点)と清渓商街は、清渓川をまたぐ形で2017年に架橋され、空中歩行路となり、今ではレトロなカフェやスタイリッシュなレストランが連なっている。数年前までは若者には見向きもされなかったところなので大きな変化といえる
私が第二のソウル路と呼んでいるのは、残り2つを架橋して、宗廟の前から忠武路駅までを空中遊歩道として2021年夏に完成させる予定のプロジェクトのことだ。
講座では説明が駆け足でピンと来なかった人がいるかもしれないので、下記の地図でよく確認してもらいたい。
地図上部の世運橋の部分が2017年に架橋済み。その下の緑色のマーキング部分が新たに架橋される部分
これが完成すればソウル中心部の失われたもの、新たに生まれたものを眺めながら、約1キロの空中散歩が楽しめるようになる。日本のみなさんと大衆酒場めぐりをしながら、ここを歩く日がとても楽しみだ。
ホテルPJ(昔のプンジョンホテル)の入り口のある三豊商街を背に南方向を望む。こちらも空中歩行路の工事が始まっている。このビルの両脇を南に歩けば忠武路駅のある退渓路に到達する
*世運商街の基礎知識はこちらのコラムで↓
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*筆者の近況はtwitter(https://twitter.com/Manchuria7)でご覧いただけます。
*本連載は月2回配信(第1週&第3週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!
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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7 |
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