料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#11
北海道・津別チミケップ
静寂なチミケップ湖畔に佇む
小さなオーベルジュに
日本にもこんなに音のない静寂な世界があるのだと実感する森と湖です。
羽田から女満別空港へひとっ飛びすると、ヨーロッパの空気にも似た別世界が広がり始めます。じつは、20年前にも一度出かけたことがありました。
空港でレンタカーを借り、車を走らせること約1時間、津別から舗装されていない道を進むと、しばらくして看板も電線も見当たらない原生林に囲まれたチミケップ湖が現れました。鏡のような湖面で神秘的でもありました。
今回は、続けてやってきた台風の影響で道が分断されたため、北見までバスで出て、そこからタクシーに乗り込みました。
森の中から見えてきたチミケップホテルは20年前と全く変わっていません。チミケップでは何ともゆったりとした時間が流れているのですね。
秘境とまではいきませんがこの辺鄙な場所へわざわざ出かけた理由は、家内の美穂子が満天の星を見たいという願いと、アメリカ一と言われるナパのフランス料理店「フレンチランドリー」で修業を積んだシェフの作る料理を食べてみたいという私の思いが一致したからです。その料理の素晴らしかったこと!津別産のトマト、十勝産のポワローネギ、常呂産のホタテ貝、エゾアワビ、カスべ(エイ)赤平産の鴨など地元の食材を駆使して、フレンチをベースにした渡辺賢紀シェフの「きょうの料理」!これこそ、鄙にも稀な料理と言ってよく、食卓の小さな奇跡と呼んでいいかもしれません。リゾートホテルでくつろぐことが目的で、料理など全く期待をかけていないお客様が召し上がったならば、誰もが目を瞠るに違いありません。
このホテル、部屋にはテレビも時計もありません。携帯も使えません。言ってみれば、この地に来たのなら、俗界から離れ、自然界に身を委ね、日が昇り始めたら起きだし、日が沈んだらゆっくりとお休みください、というホテルからのメッセージなのですね。これぞ、リゾートホテルです!
2泊3日の滞在でしたが、台風の影響もあって、夜空には星が瞬きませんでした。良く晴れ渡った日の晩などは、天の川が横たわっているのが見えるそうです。なにしろ、夜中は四方八方真っ暗闇なのですから。これは次回のお楽しみとなりました。
1泊2食の旅、今回はチミケップホテルの食事がすべてでしたが、行き帰りの女満別空港では、「豚丼」と「メロンソフト」をいただきました。「豚丼」は帯広発祥の名物丼で、甘辛いタレを絡めた豚肉が何枚も御飯の上に並べてあります。「メロンソフト」は贅沢にも二つ切りにしたメロンにソフトクリームが盛ってあり、北海道ならではのご馳走です。もし、この空港を利用したときには、ぜひともお薦めです。そして、お土産には「熊のまくら」という名のかりんとうとドーナッツが合体したお菓子を買い求めました。
■「チミケップ湖」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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静かな佇まいの小さな湖 | 音のない静寂な世界 |
■「チミケップホテル」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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原生林の中に大人ための小さなオーベルジュ | 湖畔に面したテラス | 家内の美穂子と一緒に |
■レストラン PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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鯖のマリネ | 赤平産のカモ肉のロースト、赤ポルトソース | シェフの渡辺賢紀さんと |
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鴨から作った「鴨節」を削り、サイフォンで抽出する芳醇なスープ |
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■朝食・昼食 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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シンプルなスクランブルエッグとソーセージ | 絶品オムライス |
■女満別空港にて PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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贅沢なご馳走「メロンソフト」 | 帯広発祥の名物「豚丼」 |
*この連載は毎月25日に更新です。次回は「東京」へ。