台湾の人情食堂
#101
女性でも楽しめる台湾一周鉄路の旅入門〈1〉
文・光瀬憲子
台湾を鉄路で一周しながら美味しいものを食べ歩くという取材を経て、3月12日に『台湾一周!! 途中下車、美味しい旅』(双葉文庫)が発売されることになった。
本書は、7泊8日の日程で、在来線の台湾鉄路を使って高雄から時計回りに台湾を一周し、22の町で途中下車して食べ歩きして再び高雄に戻るというグルメ紀行だ。この取材を通して、台湾は女性ひとりでも気軽に一周できると、あらためて思った。
九州ほどの面積の台湾は、単純に一周するだけなら1日でも可能だが、今回は日本の旅行者のために、現実的な3泊4日の台湾一周旅行を提案してみたい。
3泊4日の下車駅は台北・台南・高雄・台東
台湾は中央部分に富士山よりも高い山がそびえ、居住地に適さないため、ほとんどの都市が沿岸に点在している。海沿いの都市をつなぐようにして在来線の線路がきれいな楕円を描いており、難なく一周できるようになっている。
台湾鉄道地図(主要駅と最新刊の取材で下車した駅のみ表示)
そして、台湾鉄路も台湾新幹線も日本がその土台を築いたため、日本の鉄道とよく似ており、日本人にとっては馴染み深く、使い勝手がよい。そこも、初心者でも鉄路の旅が楽しめるポイントである。
あまり時間がなく、3泊4日で一周したいという場合は、大都市が集まる西側で新幹線を利用すると時短になる。首都・台北、食の都・台南、台湾第二の都市・高雄、そして東部の中心都市・台東。この4カ所を押さえれば、「一周した!」という達成感を得ることができる。
台湾の地図を見ると、最南端の墾丁(ケンティン)まで行って初めて一周では? という意見もあるが、台湾鉄路は残念ながら墾丁までは到達していないため、今回は枋寮(ファンリャオ)で南国気分を味わうにとどまった。墾丁については、既刊の『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』(双葉文庫)に詳しく書いたので、ぜひご一読いただきたい。
泊まりは台北・高雄・台東で
3泊4日で台北一周する場合、宿泊は台北・高雄・台東がおすすめだ。台北はほとんどの日本人旅行者にとって空路の出入口であり、また、台湾初心者にはまだまだ探索のしがいがある場所だ。鉄路の旅ということをふまえて、ホテルは新幹線、在来線、地下鉄のターミナルである台北駅周辺で選ぶとよい。1泊目の夜は台北で有名どころの夜市などを楽しみ、翌日からの一周旅に備えよう。
2日目は早朝から南下しよう。ここで時計回りか、反時計回りかという選択肢があるが、短い日程ならば最初に時間をかせぐために、新幹線を使って西側を南下するとよい。台北から台南までは新幹線で1時間40分。早くから動けば、朝ごはんを台南で食べることができる。
台湾新幹線(高鉄)は日本の新幹線とは車体の色こそ違うものの、車内はゴミ箱の場所まで同じなのでとても落ち着く
暑い時間帯を避けて早朝から行動する人の多い台南には、美味しい朝ごはん屋さんが目白押しだ。特に牛肉スープや虱目魚(サバヒー)粥など、午前中しかやっていない人気店や、ランチどきに賑わう國華街など、見どころ、食べどころがたくさん。
台南で一押しの朝ごはんはラム肉スープ。ラムが苦手な人には牛肉スープや虱目魚(サバヒー)のお粥も
午後まで台南で楽しんだら、その日のうちに高雄に移動だ。台南から高雄へは新幹線でわずか12分。台南・高雄それぞれで新幹線駅から市内へ移動する時間を考慮しても、1時間あまりで高雄のホテルに到着できる。
台南ではなく高雄泊がおすすめなのはホテルの多さと安さ。高雄のほうがより大都市なので、大型観光ホテルからビジネスホテルまで選択肢が広く、価格も安い。
高雄の街はエリアによって特徴があるが、一番のおすすめは鹽埕(イェンチェン)という下町。グルメスポットがコンパクトにまとまっていて夜の食べ歩きに便利だ。老舗の食堂やおしゃれなカフェなどもあり、また、六合夜市という高雄の昔ながらの夜市にもアクセスしやすい。
高雄の夜はレトロ懐かしい鹽埕(イェンチェン)へ。美味しいグルメやおしゃれなカフェも見つかる
高雄で一泊したら、3日目は台東を目指そう。新幹線は台北~高雄間しか走っていないので、この後は台鉄でのんびり進む。高雄から台東へは自強号という特急でも2時間ほどかかるが、この南廻線という路線は台湾でもっとも車窓が美しいといわれる絶景ルート。エメラルドの海が車窓に広がり、途中の駅で止まるたびに潮の香りに癒やされる。2時間の列車の旅はあっという間だ。
高雄・台東間の列車の旅は車窓を海が独占する絶景ルート。2時間はあっという間に過ぎる
台東は都市化された西部とは異なり、ちょうどいいレトロ感と人なつっこさがある。先住民と客家人の文化が色濃く、独特のグルメと出合える。台東の町も案外広いので、天気がよければレンタサイクルを利用すると食べ歩きに便利だ。
リーズナブルなホテルが多いので宿泊は台東にして、3日目は台東から知本温泉や池上の田園に足を伸ばすのもいい。知本は台東から自強号で10分、池上は30~40分程度なので十分日帰り圏内。米どころ池上は、秋と春は収穫前の稲穂がみごとで、サイクリングに最適だ。
駅弁を買って車窓風景を眺めながら食べるのも鉄路の旅の楽しみのひとつ
東台湾では自然豊かな台湾が楽しめる。温泉につかるもよし、黄金の稲穂を眺めながらのサイクリングも楽しい
台東で一泊し、朝ごはんの豆漿(豆乳)や米苔目(米粉の麺)を堪能したら、4日目は台東から台北へ北上する。日本への帰国便が午後であれば、特急の普悠瑪(プユマ)号や太魯閣号で台東を出発し、3時間半~4時間で台北に到着できる。桃園空港利用の場合は台北駅から機場MRTで向かうのがベストだ。
やや急ぎ足ではあるが、週末プラス有給、といった短い休みでも一周できる台湾。次回はもう少しゆるい日程で一周できるプランを考えてみよう。
(つづく)
●著者トークイベント開催のお知らせ
7/9(木)19時30分から、東京・西荻窪の旅の専門書店『のまど』で、本コラムの著者・光瀬憲子のトークイベント「鉄道で巡る台湾一周グルメ旅」が行われます。参加費は1,000円。奮ってご参加ください。お申し込みは下記『のまど』HPで。
http://www.nomad-books.co.jp/event/event.htm
*本連載は月2回(第2週&第4週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!
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著者:光瀬憲子 1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/ 近況は→https://twitter.com/keyword101 |