韓国の旅と酒場とグルメ横丁
#89
新刊『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』写真館〈1〉
最新刊『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』の発売まであとひと月となった。今回の本はここ数年こだわり続けている「ソウル回帰」を軸にしつつ、これまで朝鮮半島の西側(全羅道)偏重だった反省もあって、東側(江原道や慶尚道)の縦断旅行を敢行している。
本連載では今回から、ページの都合でボツにせざるをえなかった写真、あるいは本当はカラーで掲載したかった写真を見ながら、取材の思い出を数回に渡って語っていきたい。
江原道の山間部にある平昌バスターミナル。このすぐ近くにオリンピック市場がある
平昌(ピョンチャン)
冬季五輪のときは通過しただけだったが、久しぶりに平昌バスターミナル周辺を歩いてみた。目的のひとつが90歳近いハルモニがやっている小さなデポチプ(昔ながらの大衆酒場)の再訪。この店の最大の魅力はハルモニだが、彼女をより魅力的に見せるのがタイル貼りのカウンターだ。何十年も前の職人さんの手によるものと思われるが、不規則な色の配列にセンスを感じる。歴史と情緒のあるデポチプにはたいていこのタイル貼りのカウンターがある
平昌のオリンピック市場(旧・中央市場)では、江原道の特産物(そば、ジャガイモ、トウモロコシなど)を使った焼き物が多く見られる。これは、メミルブチム。そば粉の生地に白菜キムチやニラをのせて薄く焼いたものの
メミルジョンピョン。そば粉の生地でキムチのみじん切りを巻いて食べる。そば粉にニラをすったものを加えてあるので濃い緑色をしている。釜山名物ホットッのように紙コップに入れて出してくれる
焼いたメミルブチムを宅配用のケースに入れる市場のアジュマ。冷蔵技術や飲食の発酵スピードを遅らせる技術、流通システムの整備や容器の発達などにより、今や地方の名物はその地に行かなくても食べられるようになった。その土地の空気や提供してくれる人の丹精も味のうちと考えている私にとっては、ちょっと興覚めな感もある
前述のデポチプの常連さんの娘と息子が、市場の近くでパン屋さんを開店したと聞いたので行ってみた。ソウルにある店のようなおしゃれな外装に驚く。左がベーカリー、右がカフェになっている。韓国全土がソウル化してしまうのはどうかと思うが、この店は店名に名産のメミル(そば)という言葉を入れていて好感がもてる
パンには山菜やジャガイモ、クルミなど江原道の穀物が多く用いられている。カフェでは江原道に語学留学に来ているというフランス人女性と出合った。タヒャンサリ(異郷暮らし)はたとえソウルであっても不便なことが多いのに、山間部での留学生活は苦労はいかばかりかと、母のように心配してしまった
(つづく)
本連載を収録した新刊『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』が、9月14日に双葉文庫より発売になります。韓国各地の街の食文化や人の魅力にふれながら、旅とグルメの魅力を紹介していきます。飲食店ガイド&巻末付録『私が選んだ韓国の大衆文化遺産100』も掲載。ぜひご予約ください。
双葉文庫 定価:本体700円+税
*9月14日(土)午後、新刊『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』発売記念トークイベントを、東京で行います。詳しくは『TABILISTA』の編集部通信やツイッターでお知らせします。こちらも、ぜひふるってご参加ください。
【本コラムの筆者と行く慶州ツアーのお知らせ】
☆映画のパンフレット(900円相当)、筆者のミニ講演会、パク・ヘイル&シン・ミナ直筆サイン入りポスター(抽選)の他、非公開のスペシャル特典もあります。
8月30日(金)~9月1日(日)の2泊3日、本コラムの筆者、鄭銀淑が同行する慶州ツアー(成田発、大阪発)を催行予定です。公開中の映画『慶州(キョンジュ)ヒョンとユニ』で、ヒロイン・ユニ(シン・ミナ)の住まいとして撮影に使われたゲストハウスに宿泊しますので、物語世界にどっぷりつかれます。日本~韓国の飛行機を自己手配すれば、現地集合・現地解散も可能です。詳しくは下記で。
http://web.suntravel.co.jp/page/tour/tour002.aspx?RT_CD=RT52&S_CD=01&GOODS_CD=201912019KJTOUR
*筆者の近況はtwitter(https://twitter.com/Manchuria7)でご覧いただけます。
*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!
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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7 |
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