旅する&恋する! 韓国ドラマ

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#64

韓流紀行〈12〉現代的でも古風な『スタートアップ:夢の扉』

文・康 熙奉(カン・ヒボン)

 

  韓国のtvNで2020年10月17日から放送が始まった『スタートアップ:夢の扉』(以下、『スタートアップ』と表記)はNetflixでも配信されていて、日本でも同時期に見ることができる。このドラマでは、今もっともタイムリーな若者たちの群像が華やかに描かれている。

 

 

ITの起業を描く

 

 2020年は日本でも第4次韓流ブームが起こり、多くの韓国ドラマが人気を獲得した。たとえば、『愛の不時着』『梨泰院クラス』『サイコだけど大丈夫』などが注目を集めたが、それらのドラマとは題材とテイストがまったく違うのが『スタートアップ』だ。

 なにしろ、舞台になっているのは変化が著しいソウルの最先端エリアで、ITの技術を持った有能な若者たちが青春群像としてドラマを彩っている。いかにも、今のトレンドを集めたような設定なのだが、描かれているのは、相手を思いやる犠牲的な恋愛であり、情が濃密にからまった家族愛であり、仲間を信頼しあう同志愛なのである。そういう意味では、韓国ドラマが大事にしてきた古風なテーマを物語の根幹に据えており、そのツボを現代的にハイセンスなビジュアルで表現している。それだけに、どの場面を見ても内容的にホッと安心できる。それが『スタートアップ』が韓流ファンに愛されている秘訣のように思える。

 主役はペ・スジとナム・ジュヒョクだ。そして、キム・ソンホ(キム・ソノ)がからんでくる。この3人が物語の中心人物だ。

 序盤のストーリーはどうなっているのだろうか。

 ペ・スジが演じるのはソ・ダルミというアクティブな20代女性だ。彼女はシンポジウムに出たとき、十数年前に別れたままのウォン・インジェに会う。彼女は実の姉なのだ。両親が離婚してしまったときに、ダルミは父と一緒に暮らし、インジェは母と行動を共にした。こうして、姉妹は別々に成長していった。

 しかし、環境はまるで違った。インジェの母は富豪と結婚。母と娘は渡米し、裕福な暮らしをしていた。

 反対にダルミは祖母と暮らし、正社員になれない身分を嘆いていた。明らかな格差が生まれていたのだが、姉と再会したダルミは、虚勢を張って自分が恵まれた環境にいることを誇示し、インジェが主催する交流パーティーに素晴らしい彼氏を連れていくと約束してしまう。

 けれど、そんな彼氏がいるわけがない。困り果てたダルミだが、自分の過去にはすばらしい相手がいたはずだった。その相手を見つけ出せば、と考えているうちに、ダルミには少女時代の鮮烈な記憶が甦ってくる。そのときに文通をしながら幼い恋を育てていたのがナム・ドサンという少年だった。

 その追憶をたどりながら、『スタートアップ』のエネルギッシュな物語がどんどん進んでいく。

 

投資会社のチーム長、キム・ソンホの存在感がいい

 

 大人になったナム・ドサンを演じているのがナム・ジュヒョクであり、彼は天才的な数学の素質を持っていた。

 そして、現在は人工知能の画像認識のスペシャリストであった。しかし、能力が高いのに仲間と始めた会社は投資を受けられずに生活に困る有様だった。そんな彼がマネジメント能力が高いダルミと一緒に「サムサンテック」という会社をまとめあげ、起業支援プロジェクトに合格し、やがてITの世界で飛躍していく姿がドラマを通して描かれていく。

 同時に、ダルミとドサンはお互いに愛を感じ合う関係になっていくのだが、会社が大きなチャンスをつかんだ時、契約問題に拘束されて別々の道を歩まざるをえなくなる。それによって物語の後半がスリリングな展開になっていく。

 そんな中で常にキーパーソンになっているのが、キム・ソンホが演じているハン・ジピョンだ。

 彼は投資会社の腕利きチーム長であり、ダルミとドサンの会社の後見人であると同時に、実は2人の過去を奇妙に結びつけた人物でもあった。いわば、彼のシナリオによって若い2人が運命的な出会いに至ったというわけなのだ。

 そんなジピョンは優れた後見人であったはずなのに、やがてダルミへの愛を自覚するようになり、苦悩が深まっていく。そのキャラクターをキム・ソンホが繊細な表現で演じていた。

 彼は、『スタートアップ』の前にとても印象的な演技を披露している。それが、『100日の郎君様』で演じた若き高官のチョン・ジェユンだった。この役は、ド・ギョンスが演じた世子が行方不明になった事件を執拗に追いかけていくのだが、キム・ソンホの演技力が特に際立っていた。その存在感を引き継ぎながら、キム・ソンホは今度は『スタートアップ』でドラマを大いに盛り上げた。

 演技力とルックスが両立しているので、今後ますます彼の人気が高まっていくだろう。

 

ペ・スジとナム・ジュヒョク、主役二人の魅力

 

『スタートアップ』でのペ・スジは眩いほどに輝いている。

 ペ・スジといえば、アイドルグループ出身ながら2011年の『ドリームハイ』で大ブレークして女優の道を歩み始めた。しかし、芸能界のスターを目指す若者たちの青春群像を描いた同ドラマでは当初ペ・スジの演技がぎこちないと評され、彼女は大きな批判にさらされた。

 普通なら委縮してしまうところだが、ペ・スジはドラマの後半になってから見違えるような演技を見せた。こうして、批判を実力で封じ込めたのだ。

 そして、2012年に公開された映画『建築学概論』でペ・スジは純粋で透明感がある演技を見せて評価が飛躍的に上がり、「国民の初恋」とも呼ばれた。以後の彼女の活躍はめざましく、今では韓国を代表するトップ女優にまで成長した。そして、今回の『スタートアップ』で堂々たる主役を演じている。

 彼女が演じるダルミは、周囲の人々を活気づけるオーラを持っていた。それによって会社は大きく成長し、視覚障がい者のための画像認識技術を開発していく。さらには、ライバル関係にある姉のインジェの会社にも技術で勝っていく。そういう過程を描いているペ・スジのハツラツした演技は、ドラマに華をもたらし、さらに物語をワクワクさせるように高揚させている。本当に魅力的な主人公であった。

 そんなペ・スジと息がピッタリ合っていたのがナム・ジュヒョクだ。彼が演じているキム・ドサンは、天才的な才能を持っている青年だが、人柄はとても純朴である。感受性が豊かで、人との接し方も細やかだ。普通、天才的なセンスを持つ青年像というと、我が強すぎるキャラクターに描かれることが多いのだが、『スタートアップ』は画一的なキャラクター設定をしない。それによって、ナム・ジュヒョクが持っている繊細な感受性もドサンという役柄によく反映されていて好感が持てる。

 以上のように、ペ・スジ、ナム・ジュヒョク、キム・ソンホという3人が、華やかな世界でときめくような三角関係を展開していくところが、『スタートアップ』の大きな見どころである。

 

*本連載は毎月2回(第1週&第3週木曜日)の配信です。次回もお楽しみに!

 

 

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『韓国TVドラマガイド』編集部

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