旅する&恋する! 韓国ドラマ
#58
韓流紀行〈6〉見応えある時代劇『100日の郎君様』
文・康 熙奉(カン・ヒボン)
NHKの総合テレビで放送されてきた『100日の郎君様』が8月30日の最終回で終了した。EXOのD.O.(ディオ)として活動しているド・ギョンスが、凛々しい世子(セジャ)として印象的な演技を残した。
かりそめの夫婦
『100日の郎君様』のタイトルになっている「郎君様」というのは、「旦那様」という意味だが、それでは「100日」にはどんな思いが込められているのか。
それは、ドラマをよく見ていればわかる。
まずは、中心となっているストーリーを見てみよう。
ド・ギョンスが扮しているのは王族のイ・ユルだ。彼は子供のとき、将来結婚したいと一目ぼれした高官の娘がいた。
ユン・イソというかわいい女の子だったが、父親が悪徳高官のキム・チャオンの陰謀に巻き込まれて殺されてしまう。そうした混乱の中で、ユン・イソ自身も兄と一緒に行方不明になった。
それから16年後、イ・ユルは世子になっていた。世子といえば次の国王になる人物であり、イ・ユルも王朝のナンバー2として活躍していたのだが、彼は常に不機嫌だった。それはユン・イソのことが忘れられず、彼女を失ったトラウマに苦しめられていたからだ。
そんなイ・ユルが相手にしなかったのが、世子嬪(セジャビン)のキム・ソヘだ。彼女の父親は、王朝を牛耳るキム・チャオンである。イ・ユルは彼を憎悪していて、その娘の世子嬪を無視した。
その末に、イ・ユルはキム・チャオンによって暗殺されそうになる。九死に一生を得たが、幸いに村人に助けられた。しかし、記憶喪失になってウォンドゥクという別人に身分を変えた。
そんな彼と「かりそめの夫婦」となるのがホンシム(ナム・ジヒョンが演じている)であった。このホンシムこそかつてのユン・イソであり、彼女も本性を変えて村人になっていた。こうしてウォンドゥクとホンシムの奇妙な夫婦生活が始まった。
かけがえのない100日
ウォンドゥクはもともと世子なので働くことを知らない。村人になっても薪割り1つできないほどだった。
それなのに贅沢が身についていて、高利貸しに騙されて高価な品物を買って大きな借金を作ってしまう。そんな有様ではホンシムから怒られてばかりいるのも仕方がなかった。
しかし、やがてホンシムがウォンドゥクを見直す場面がひんぱんに出てくる。
ウォンドゥクは教養も高いし、武術にも優れている。ピンチに陥ったホンシムをウォンドゥクが何度も救うシーンが登場する。それをきっかけにしてウォンドゥクとホンシムの新しい夫婦関係が築かれていく。
ドラマも後半に入ると、展開が目まぐるしく変わってくる。その際のポイントは以下の5つだ。
・ウォンドゥクがいつ記憶を取り戻して過去の陰謀に気づくのか。
・刺客になっていたホンシムの兄がどのようにウォンドゥクに絡んでくるか。
・ウォンドゥクが王宮に戻ってキム・チャオンといかに対決するか。
・世子嬪のキム・ソヘがどのような大事件を起こしてしまうか。
・ウォンドゥクとホンシムの立場を超えた愛は成就するのか。
こうした要素がスリリングに絡み合って、『100日の郎君様』のストーリーが多彩になっていく。しかし、物語の中心はあくまでもウォンドゥクとホンシムが過ごした「かけがえのない100日」であった。そこに、タイトルに「100日」が入っている意味があるのだ。
本格的な時代劇
このドラマを語るうえでは、まずはド・ギョンスの演技に注目したい。
彼は世子のイ・ユルと村人のウォンドゥクという2つの役を演じきっていた。その対比がとても面白い。
イ・ユルは大変優秀な世子で、将来の名君を思わせるほど統治能力が優れているのだが、過去のトラウマにとらわれて心を閉ざしている。
一方のウォンドゥクは、村人でありながら王族のように傲慢に振る舞っている。それゆえ周囲から煙たがられるのだが、本人は自分の態度に妙な自信を持ち続けていた。
このように、感情の起伏が大きい二つの役柄をド・ギョンスは冷静に演じ分けていた。それでいてホンシムに愛情を示す場面では、余韻が残るロマンスを見せた。主役として申し分がない存在感だったと言えるだろう。
そんなド・ギョンスに真っ向から対決姿勢を鮮明にしていたのがキム・チャオンを演じていたチョ・ソンハだ。
癖の強い演技に定評がある彼は、今回も憎たらしいほどの悪役ぶりを見せていた。自分の権力欲のために、周りにいるほとんどの人を不幸にするという極悪の高官だった。
そんな悪役ぶりを発揮するときのチョ・ソンハの目の力がすごい。
悪役が憎たらしいほどドラマは面白くなると言うが、『100日の郎君様』もチョ・ソンハが扮するキム・チャオンが、恐ろしいほどに凄味があった。。
もう1人注目したのがホンシムを演じるナム・ジヒョンだ。かつては天才子役と言われてきたし、演技の幅が広い女優として知られる。
今回もダメ亭主と思われていたウォンドゥクを叱咤激励する演技がとても印象深かった。特に、物語の後半で王宮に戻っていくイ・ユルとの別れのシーンは珠玉だった。そういう意味でも、最後までナム・ジヒョンの演技には心から堪能させられた。
こうして『100日の郎君様』は、すばらしい名場面に彩られたドラマとなった。また、架空の物語とはいえ史実の事件をうまく取り入れ、本格的な時代劇に仕上がっていて見応えがあった。
(次回もお楽しみに!)
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