琉球島猫百景
#40
新城島&小浜島 八重山の離島の猫たち
写真・仲程長治 文・シマネコキネマ
パナリ島では住民よりも先に住猫に出会った
石垣島の南西に浮かぶ竹富町の島々のうち、石垣島から船で渡れる島はぜんぶで9つ。2020年の夏は、そのうちの7つの島を巡って5つの島で島猫に出会うことができたので、いくつかご紹介しよう。
まず、新城(あらぐすく)島。上地島と下地島の2つの島からなり、地元では「パナリ」とも呼ばれている新城島は、定期船が就航していないため、島民が主宰するシュノーケルツアーに参加しなければ上陸ができない。島猫の撮影のために訪れたわけではなかったのだが、初上陸した上地島で最初に出迎えてくれたのは、背中にかわいい八重山諸島の模様が入った、まだ幼さの残る島猫だった。
観光客の足元にすり寄ってお弁当をおねだり
午後は、風通しの良い縁側でずっとお昼寝
静かな南向きの集落は、真夏でも涼しい風が通り抜けて心地よかった。ツアーのガイドさんいわく、「近所のオバーが連れてきた」というその猫は、人見知りもせず観光客にお弁当のおこぼれをねだり、ほんの少し天ぷらを食べると、夕方まで縁側で昼寝をしていた。その表情は、数ある離島の中でもひときわ高い透明度を誇る、パナリ島の海のように穏やかで平和だった。
続いて、小浜島。訪れるのは3度目だが、毎回1、2匹しか島猫にしか出会えず、本連載で紹介する機会がなかった島だ。今回、いつもとは違う北側のホテルを選んでみたところ、そこで嬉しい出会いが待っていた。
ホテルに到着したのは、太陽が真上にあるお昼過ぎ。荷物を預けて撮影に出かけようとエントランスを通る際、鉢植えの影にエサ場がちらりと見えた。これは「いる!」と、スタッフさんに尋ねてみると、「日中はどこか涼しいところで過ごしているみたいですが、夕方になると出てきますよ」と教えてくれた。
小浜島の絶景リゾートホテルで暮らす島猫たち
ブーゲンビレアと一緒に玄関先でお客様をお出迎え
知らない人はちょっと怖いけど好奇心には勝てない
日没間近の、島がいちばん美しい時間に猫たちはエントランスに現れた。草刈りをしているスタッフさんの後ろで小さな2匹が駆け回り、その様子を少し大きな1匹が見守っている。聞けば、大きな雄と小さな2匹は叔父と甥の関係だという。普段であれば、夏場はホテルも満室でスタッフさんも忙しい時間のはずだが….今年はいつもとは少し違う夏。猫たちと遊びながら、このホテルで暮らす歴代猫たちのお話も聞かせていただいた。島猫たちにとっても、久しぶりに「離島らしい時間」を流れる夏だったのかも知れない。
大きく揺れ動く自分の影とも遊ぶ
人間たちが寝静まった後も、じゃれあっていた
*日本全国で「さくらねこTNR」の活動を広げている公益財団法人どうぶつ基金の新作絵本冊子「さくらねこ」の制作をシマネコキネマが担当しました。以下よりぜひ、e-bookをご覧ください。
https://www.doubutukikin.or.jp/sakuraneko_ebook/HTML5/pc.html#/page/1
*シマネコキネマの公式インスタグラム(今日の「ニャンくるにゃいさ」配信中)
https://www.instagram.com/shimanekokinema/
*本連載は毎月22日(=ニャンニャンの日)に配信予定です。次回もお楽しみに!
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仲程長治(なかほど ちょうじ) 1959年、石垣島生まれの写真家、アーティスト。2018年に完成した島猫映画『Nyaha!』が初監督作品。現在、イリオモテヤマネコの島、西表島を舞台にした映画『Us 4 IRIOMOTE』を撮影中。 |
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シマネコキネマ 沖縄を拠点に活動するメディアファクトリー。島猫映画『Nyaha!』の企画・制作、『琉球島猫百景』のコンテンツ制作などを担当。沖縄の猫メディアでつくる「島猫力向上委員会」のメンバー。 |