料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#33
京都 2018夏
文と写真・山本益博
家族で味わう京都の牛肉
「ゆたか」「はふう」
ロンドンのロイヤルアカデミーでピアノを勉強中の娘が、卒業前に一時帰国し、東京と芦屋でコンサートを開かせていただきました。
東京は杉並公会堂小ホールでしたが、芦屋は京都の日本料理「浜作」の別邸と呼んでいい芦屋のサロンでのコンサートでした。前日、京都入りした私たち家族は、このところ私がよく泊まる「ダイワロイネット京都駅前」にチェックインし、その晩、「浜作」ご主人森川さんが、私たちを祇園のステーキの名店「ゆたか」に案内してくださいました。
京都は牛肉文化圏ですから、すきやきはじめ、牛肉料理を売り物にする店が少なくありません。なかでも、「ゆたか」は昔から評判と敷居の高い1軒です。
舞妓さんや芸妓さんが舞える舞台付きの大広間で、ステーキを思う存分堪能させていただきました。これはもうお大尽遊びですね。
TABILISTAで紹介するにはあまりふさわしくない店ですので、誰でも気軽に出かけられる牛肉専門店をもう1軒、ご案内いたします。麩屋町通りを京都御苑近くまで上がったところにある「はふう」がその店。今から、10年以上前、京都の友人の案内で、「ビフカツサンド」を食べに出かけたのが始まりです。今回は別の日に「ステーキ丼」を食べに出かけました。ご飯を美味しく食べる牛肉のステーキです。
ちなみに「はふう」は、初めてお店に伺ったとき、確か「波風」のことと教わったような気がします。
芦屋の浜作サロンにて浜作のご主人と一緒に
「ゆたか」のステーキ
「はふう」のステーキ丼
古都の閑静な町に佇む
夏の京都でお昼をしっかり食べた後は、河原町四条下ル「弥次喜多」で「氷宇治金時」を楽しむのが定番なのですが、今回、京都の友人から、開店3周年の甘味処を案内していただきました。祇園切通しにある「あのん」がその店で、甘味処というより、おしゃれな京都のスウィーツショップ。おはぎが定番のメニューなのですが、小豆のあんを使って、「あんまかろん」「あんえくれあ」「あんたると」など洋菓子にも仕立てて、ヴァラエティに富んだケーキが並び、甘党には応えられません。「あんまかろん」「あんえくれあ」などは新しい京都土産としてもいけますね。
祇園切り通し町屋の風情の「あのん」
新しい趣の洋菓子
*次回は「藤沢」です。
*この連載は毎月25日に更新です。
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山本益博(やまもと ますひろ) 1948年、東京・浅草生まれ。早稲田大学第ニ文学部卒業。卒論が『さよなら名人藝―桂文楽の世界』として出版され、評論家としてスタート。幾度も渡仏し三つ星レストランを食べ歩き、「おいしい物を食べるより、物をおいしく食べる」をモットーに、料理中心の評論活動に入る。82年、東京の飲食店格付けガイド(『東京味のグランプリ』『グルマン』)を上梓し、料理界に大きな影響を与えた。長年にわたる功績が認められ、2001年、フランス政府より農事功労勲章シュヴァリエを受勲。2014年には農事功労章オフィシエを受勲。「至福のすし『すきやばし次郎の職人芸術』」「イチロー勝利への10ヶ条」「立川談志を聴け」など著作多数。 最新刊は「東京とんかつ会議」(ぴあ刊)。
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