台湾の人情食堂
#30
台湾の別天地、隠れリゾート墾丁へ
文・光瀬憲子
春休みに台湾で食べ歩きをしようか、リゾートでのんびりしようか、迷っている知り合いに、台湾の墾丁(ケンディン)をすすめた。屋台で食べ歩きもできるし、グァムやサイパンのような南国リゾート気分も味わえるからだ。
台湾は島全体が亜熱帯気候に属するが、最南端の墾丁だけは熱帯に属する。墾丁に行ってみると、確かに太陽が大きくなったような気がしてくる。そして、街全体の時間の流れや人々の過ごし方が他の台湾の都市とはまったく違っていて、なんとも言えない異国情緒を醸し出していることに気づく。
龍磐の岩場。どこを見回しても緑の草原と青い海と空が広がる
夏を探しに
墾丁は、夏はもちろん、春や秋も海で泳ぐことができるし、12月や1月でも半袖で過ごせる日がある。私が訪れた10月初めの墾丁はまだまだ夏の真っ盛りといった様子で、海も空も抜けるように青く、海でマリンスポーツを楽しむ人も大勢いた。私は湘南住まいなので、平日、週末を問わず早朝から波を求めて自転車やバイクで海へ向かうサーファーたちをよく目にしているが、ここ墾丁も台湾有数のサーフィンのメッカだ。オールシーズン、サーフィンを楽しむ人が海を訪れるサーファーの街として知られる。
墾丁のシンボルでもある真っ白な灯台(鵝鑾鼻灯台)にほど近い高台にある「国境之南」(South Border DeSign Hotel)
真っ白な壁とカラフルなドアがギリシャを思わせるおしゃれな外観
そんなリゾート墾丁を満喫する際、大切なのは宿選びだ。中華圏の台湾でおしゃれなリゾート気分を味わうなら、「国境之南」という墾丁きってのリゾート民宿を利用したい。部屋数が少ないため民宿という区分になっているが、そのクオリティの高さには目を見張るものがある。
「国境之南」を経営するのは若いサーファーカップルだ。実は、彼らは墾丁出身ではなく、ふたりともサーフィンをこよなく愛し、墾丁に憧れ、この地に移り住んでしまった移住者である。
「国境之南」のオーナー、ウェイン(左)と奥さんのレイレイ(右)は現役サーファー
絵になるオーナー夫婦
この宿のオーナー経営者はスラリとした長身のサーファー、通称ウェイン。事業主でありながら現役のサーファーでもある。他の墾丁住民と同様、常に上半身は裸のままで、その肉体美を太陽の下に晒している。墾丁では、基本的に男性は上半身裸で下半身は短パン、足は裸足かビーサンだ。一方、女性はタンクトップにショートパンツで足元はやはり裸足かビーサン。常に水に入れるように、男性も女性も水着を着用している。
ウェインとともに「国境之南」を切り盛りするのが、宿の元従業員で今はウェインの妻、レイレイ。サーファーとして墾丁に憧れ、台湾北部から移り住んだ彼女だが、ウェインに見初められて結婚し、いまはふたりの子供を育てながら宿の経営を手伝っている。
まったくの建築素人だと言うウェインだが、「国境之南」は素晴らしくセンスがいい。青々とした空や海を背にした緑の草原のなかに突然あらわれるギリシャをイメージした真っ白な壁とブルーのタイル張りのフロア。部屋も洋風で洗練されていて、客室ごとにテーマが決まっている。
草原をイメージした白とグリーンの部屋、シックな白にアクセントとして控えめにゴールドを配した部屋など、細かい部屋の内装などを決めるのは奥さんのレイレイの仕事。部屋のつくりや広さもそれぞれ異なるので、好みで選ぶことができる。ただし、部屋数が少ないのでピークシーズンは早々に予約で埋まってしまう。
客室も白を基調とした落ち着いた雰囲気で、日頃の疲れを忘れそう
窓の外に広がる草原とマッチするようにグリーンを取り入れたのはレイレイのアイデア
高台にあり、炎天下歩いて行くのはキツいが、南湾に面した墾丁辺りから電話すればクルマで迎えに来てくれる。墾丁には地下鉄などの交通手段がない。マイカー頼みなのだが、旅行者ならレンタルの電動スクーターを利用してもいい。
台湾でクルマの運転をする場合、国際免許が必要だが、このスクーターは免許要らず。自転車と同じ扱いだからだ。あまりスピードが出ないぶん、安全だし、ゆっくりと墾丁の海と空を満喫することができる。
電動スクーターのいいところは、音が静かなところ。恋人どうしで二人乗りをして海沿いを走っても、ちゃんと会話や波の音を楽しむことができる。
海鮮料理「龍磐餐飲」は「国境之南」から徒歩15分
宿の近くの旨い店
墾丁には夜市もあるが、「国境之南」から徒歩15分ほどのところには、「龍磐餐飲」がある。美味しい海鮮中華の数々を取り揃えていて、ここが台湾であることを思い出させてくれる、海に囲まれているだけあって、刺身や牡蠣の料理が得意だ。大人数で訪れて大皿料理を注文するのにもってこいだ。
「龍磐餐飲」のチャーハン
台湾らしいバジルと牡蠣の唐揚げ
墾丁には刺身もある。海に囲まれているだけあって鮮度は抜群
ヘチマとアサリのスープは定番の台湾家庭料理
墾丁へのアクセスは通常、高雄経由となる。高雄へは高鉄(新幹線)でおよそ1時間半。そこから墾丁行きのバスに乗り換えて2時間半ほど。台北からだと到着までにおよそ半日を要するが、都会から離れた別世界の気分を満喫することができる。交通費を節約するなら台北から深夜バスもいいだろう。2列シートの豪華バスならぐっすり眠れる。午前0時頃のバスで高雄に向かい、朝6時頃、高雄を出るバスで墾丁を目指そう。
台北~高雄間をつなぐ豪華高速バスは寝心地抜群
*「国境之南」 www.southborderhotel.com
South Border DeSign Hotel
08-851248 屏東県恆春鎮埔頂路275号
平日2400元~(部屋のタイプによって値段は異なります)
*墾丁の旅については、双葉文庫『台湾縦断! 人情食堂と美景の旅』の第4章『墾丁 本当最南端のリゾート」でもたっぷり紹介しています。ぜひそちらもお読みください!
*5月20日、6月17日、7月15日、8月19日の計4回(いずれも土曜午後)、名古屋の栄中日文化センターで筆者が台湾旅行講座を行います。詳細は後日あらためてお知らせいたします。
http://www.chunichi-culture.com/center/sakae/index.html
*著者最新刊『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』が、双葉社より好評発売中です。ぜひお買い求めください!
定価:本体1200円+税
*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!
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著者:光瀬憲子 1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/ 近況は→https://twitter.com/keyword101 |