アジアは今日も薄曇り

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#29

沖縄の離島、路線バスの旅〈18〉座間味島(1)

文と写真・下川裕治 

本島周辺の離島、座間味島へ

 

 石垣島やその周辺の離島バスを制覇し、7月初旬に東京に戻った。通常、沖縄は7月下旬からにぎわいはじめる。飛行機の予約もとりにくくなり、運賃もあがる。夏休みが終わる9月になると、台風のシーズンを迎えてしまう。そうなると、日程がたてづらくなる。島に渡るフェリーも欠航が続く。

 できるだけ早く、沖縄の離島の路線バスを乗りつぶしたかった。沖縄本島周辺の座間味島、伊江島、伊平屋島、そして粟国島が残っていた。

 しかし新型コロナウイルスは、沖縄で感染が広まってしまう。7月中旬から感染者が増えはじめ、7月29日には44人、8月9日には156人に達した。

 沖縄県は7月末、県独自の緊急非常事態宣言を出した。期間は8月15日までだった。それまで沖縄に向かうことは難しくなってしまった。

 またしても沖縄が遠くなってしまった。この非常事態宣言は、その後、2回延長された。結局、解除されたのは9月5日だった。

 しかし沖縄には島独自の来島規制があった。沖縄の離島は、おおむね県の新型コロナウイルス対策に沿っていた。しかし県より長い規制期間を設定する島もあった。理由は医療事情だった。医師ひとり、看護婦ひとりといった診療所しかない島が多かった。重症者が出ると対応が難しくなってしまう。そこで県の指針とは別のルールを設けることになる。

 これがなかなかわかりにくい。村や町のホームページをまず見るのだが、それぞれレイアウトが違い、新型コロナウイルス対策関連のサイトがみつけにくい。書き方も曖昧なときもある。役場に電話をかけると、

「今日の会議で決めます」

 といわれたりする。

 国や県の規制、それに沖縄の市町村の感染対策、そして台風……。そのなかでの離島のバス旅に突入してしまった。ほかのネット記事での連載の締め切りもあり、しだいに規制解除との追いかけっこのような日程に陥っていってしまった。

 県の非常事態宣言が解除され、台風10号が去った9月7日、沖縄に渡った。この時点で伊平屋島と粟国島はまだ渡航規制が続いていた。まず座間味島のバスに乗ることにした。

 那覇空港に着いた足で「とまりん」とも呼ばれる泊港のターミナルに向かう。ところが座間味島に向かう船は欠航だった。台風は去ったが、まだうねりは残り、運航中止になってしまったのだ。

 那覇に1泊しなくてはいけなくなった。コロナ禍に見舞われた那覇は寂しかった。非常事態宣言は解除されたが、まだ観光客は戻っていない。国際通りの店の多くはシャッターが閉まっていた。その空気は、3ヵ月前に訪ねた竹富島に似ていた。そのときも解除が終わって日がたっていなかった。島の組合は、いつから店や宿を開くか協議するという日だった。ほとんどの店舗が閉まっていた。そんな状況に、9月になって遭遇するとは思ってもみなかった。

 

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国際通りのドン・キホーテは営業していた。しかし中国人観光客向けに進出した店。店内は閑散

 

 9月8日、ようやく座間味島に向かう船に乗ることができた。しかし船の運航にも新型コロナウイルスの感染拡大の影響が出ていた。本来はフェリーが1往復、高速船が2往復という体制なのだが、その日はフェリー1往復だけの運航だった。スタッフに感染者が出、濃厚接触者が働くことができないためだった。

 県の非常事態宣言は解除されたが、泊港では2回の検温があった。感染への警戒感が漂っている。僕らも気を遣い、島での滞在時間をできるだけ短くすることを心がけた。座間味島では日帰りの日程を組んだ。

 泊港を出港したフェリーは、座間味島の港に2時間停泊し、泊港に戻ってくる。その間に、座間味島の路線バスを乗りつくす計画である。バスの時刻表を見ると、なんとかなりそうだった。

 座間味島のバスは大きくわけると2路線である。港から阿真キャンプ場方面と港から古座間味ビーチを経由して阿佐の集落を結ぶ路線である。

 台風が去った沖縄の海は、うっとりするほど輝いていた。射し込む光に、海は翡翠色を発する。フェリーは座間味島まで片道約2時間。夢のなかを走っているような気分に浸っていた。

 座間味島に着き、ターミナルの裏手にあるバス停に急ぐ。そこで目にした時刻表に焦ることになる。僕が見ていた時刻表と違うのだ。時刻が微妙にずれている。

「これはまずい」

 座間味島のバスを乗り切ることはできるのか。時間は2時間しかない。急いで乗り継ぎ方法を考えているうちに、バスがやってきてしまった。

 

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座間味島の港で、この時刻表を目にしたときは、かなり焦った

 

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(次回に続く)

 

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*本連載は月2回(第2週&第4週木曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

 

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著者:下川裕治(しもかわ ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。ノンフィクション、旅行作家。慶応大学卒業後、新聞社勤務を経て『12万円で世界を歩く』でデビュー。著書に『鈍行列車のアジア旅』『不思議列車がアジアを走る』『一両列車のゆるり旅』『東南アジア全鉄道制覇の旅 タイ・ミャンマー迷走編』『東南アジア全鉄道制覇の旅 インドネシア・マレーシア・ベトナム・カンボジア編』『週末ちょっとディープなタイ旅』『週末ちょっとディープなベトナム旅』『鉄路2万7千キロ 世界の「超」長距離列車を乗りつぶす』など、アジアと旅に関する紀行ノンフィクション多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞を受賞。WEB連載は、「たそがれ色のオデッセイ」(毎週日曜日に書いてるブログ)、「クリックディープ旅」、「どこへと訊かれて」(人々が通りすぎる世界の空港や駅物)「タビノート」(LCCを軸にした世界の飛行機搭乗記)。

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