琉球島猫百景
#25
渡名喜島〈1〉島猫が島猫らしく生きる島
写真・仲程長治 文・シマネコキネマ
白砂の道に福木と島猫。「琉球島猫百景」にふさわしい風景
那覇の泊港から朝9時発のフェリーに乗り込み、北風の白波に揺られて約2時間。“沖縄でいちばん遠い島”とも言われる渡名喜島に初めて降り立った。港を拠点として広がる唯一の集落には福木に囲まれた昔ながらの赤瓦の屋敷が点在し、久しぶりに「ああ、沖縄にいるなぁ~」という感覚が蘇る。
宿となる古民家に荷物を置いて、まずは何の情報も持たずに、島猫との出会いを求めてふらふらと散歩に出かけた。福木の並木道は真昼であっても薄暗く、涼しい風が通り抜けて心地よい。歩き始めて数分、猫の気配を感じて視線を先に向けると、1匹の白猫が白い砂の道を横断していた。
最初に出会ったなちぶ~(泣き虫)顔の白猫。福木の陰に隠れて「なにしてるの?」と目で訴えてきた
縁側でお昼寝中。干された網がいい目隠しになっていた
軒先で涼んでいたオバー猫。年老いた島猫も多い島だ
白猫はこちらの存在に気がつくと、さっと福木並木に身を隠した。が、隠れながらもじっとこちらの様子を伺っている。いつも思うのだが、島猫は、暮らすその島(シマ)の人間たちととてもよく似ている。恥ずかしがりやでちょっぴり臆病で、でも自信たっぷりに生きている島猫たちの姿を見て、この島における「人と猫との距離感」が少しわかってきた。
なんてことを考えながら歩いていると、突然、背の高い福木に囲まれた屋敷内から甲高い子猫の鳴き声が聞こえてきた。下校途中の子どもたちも、「どこにいるの~?」と探している。声を頼りに近寄っていくと、小さなトラ猫が福木の根元から庭先に飛び出してきた。あまりの可愛らしさに手を差し出すと、一人前にシャー!と威嚇してくる。
庭に飛び出してきたチビトラ。シャー!と威嚇してもただただ可愛い
「ここだよー!!ここにいるよー!!」とミャアミャア鳴きまくる
すると、チビトラの父母とおぼしき猫が颯爽と登場!
捨て猫だろうか?と思った直後、子猫の鳴き声を聞きつけて、1匹のミケ猫が慌てた様子でやってきた。そしておもむろに子猫の匂いを嗅ぐと、ぷいと去っていた。あれ? 迎えにきたんじゃないの? と思ったのも束の間、今度はオス猫とメス猫が2匹でやってきた。駆け寄る子猫、そして体を寄せ合い舐め合って、再会を喜ぶ3匹。母猫と子猫はしばらく庭先で遊んでいたが、やがて父猫が子猫の首根っこをくわえて仲良く帰っていった。
ニンゲン界をにぎわせている育児放棄や幼児虐待のニュースとは、まさに正反対。島猫を見れば、その島のルールや暮らしぶりがわかる。この島は、幼い子どもが声を上げれば、父母でなくとも様子を見に来る大人がいて、夫婦揃ってお迎えにくるのだ。なんと、いい島なのだろう。
親子が感動の再会。映画のワンシーンのような光景が繰り広げられた
子猫が遊ぶ様子を愛おしげに見守るお父さん猫。イクニャンです!
去り際に「ありがとうございました」という視線を送ってきた母猫
(渡名喜島編、次回に続きます!)
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*本連載は毎月22日(=ニャンニャンの日)に配信予定です。次回もお楽しみに!
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仲程長治(なかほど ちょうじ) 1959年、石垣島生まれの写真家、アーティスト。2018年に完成した島猫映画『Nyaha!』が初監督作品。現在、イリオモテヤマネコの島、西表島を舞台にした映画『Us 4 IRIOMOTE』を撮影中。 |
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シマネコキネマ 沖縄を拠点に活動するメディアファクトリー。島猫映画『Nyaha!』の企画・制作、『琉球島猫百景』のコンテンツ制作などを担当。沖縄の猫メディアでつくる「島猫力向上委員会」のメンバー。 |