料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#16
シンガポール
「レストラン アンドレ」の料理に魅せられて
4年連続シンガポールを訪れる
■世界中の食通たちが注目するレストランへ
シンガポールと言って、まず思い出すのは、シンボルマークの口から勢いよく水を吐く「マーライオン」か「海南チキンライス」ではないだろうか。
このところ4年も続けてシンガポールへ出かけているのは、ひとえにレストラン「アンドレ」へ通うためである。台湾出身のアンドレ・チャンがシンガポールのチャイナタウン近くに瀟洒な1軒家のレストランを出していて、彼の生み出す料理に魅せられた客が世界中からやってきている。
私はアジア人のシェフとして抜きんでた才能の持ち主と評価していて、今回は、妻の美穂子にどうしてもその料理を食べてもらいたく、仲間6人と出かけた。
店の前に掲げられている看板を初めて見たとき、「ANDRE」の文字がかすれていて、それが風雨に晒された結果ではなく、デザインだと分かったとき、シェフは「完璧主義者」ではなかろうかと推測したのだった。完璧主義者ほど、「この世に完璧は存在しない」ことは痛いほどわかっているからである。料理は8つのキーワードに導かれてサービスされ、食べ終えて、「完璧主義者」のシェフであることを確認したのだった。
帰り際に、その感想を伝えると、アンドレ・チャンシェフはとても喜んでくださり、続いて、フランスでの修業時代の話になり、愛読書は「星の王子さま」だったとのこと。「真実は隠れたところに存在する」というのが、本から学んだ哲学なのだと言った。訪れるたびに料理への探求心が掻き立てられるのが「ANDRE」の何よりの魅力である。
シンガポールへは、羽田から深夜便に乗ると、早朝にチャンギ国際空港に着く。ホテルに荷物だけおいて、昼ごはんに出かけるのは、いつも「利苑」の飲茶なのだが、今回はインド料理の「ShishMahal」にした。
これが、大当たりのカレー料理。どれをとっても辛いばかりではない、滋味を感じさせるインド料理だった。
ホテルは「SWISSOTEL」が今や定宿になっていて、有名な「ラッフルズ」ホテルの隣で、どこへ出かけるにも便利この上ない。安全で清潔で、しかも宿代も1泊2万円ほどで高くない。
さて、「海南チキンライス」だが、私が何度出かけても裏切られないのが「文東記」である。一度、タクシーに乗り込んで、行き先を「文東記」と告げた瞬間、運転手が「あそこは、観光客ばかりで、もっとおいしいところがあるよ、そこへ案内しようか」と持ち掛けられた。もちろん、お断りしたが、「文東記」の鶏の質、茹で加減、チキンライスの淡い味加減、すべて申し分ない。評判高い屋台のチキンライスも食べたことがあるが、「文東記」に及ばなかった。
シンガポールは、このほかにも屋上にプールが横たわる人気のホテル「マリーナ・ベイ・サンズ」。そのメインダイニング「Sky on57」はシンガポールの人気シェフジャスティン・クックのフランス料理が楽しめる。眼下の広大な敷地に広がるフラワーガーデン、その中でも「CloudForest」は見応えがある。
さらには、大観覧車の「スカイフライヤー」とご紹介したい名所がいっぱいある。
「ラッフルズホテル」の名物カクテル「シンガポールスリング」と共にいつかまたご案内したい。
■「Restaurant Andre(アンドレ)」
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グランシェフのアンドレ・チャン氏 |
文字のプリントが不完全な看板 |
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繊細でアーティスティックな仔鳩のロースト |
完成されたデザインのデザート |
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■「Shish Mahal(シシュ・マハール)」
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本場のインドカレー |
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テラス席もある店構え |
■「「文東記(ブントンキー)」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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本場の「海南チキンライス」 | 「文東記」にて、妻の美穂子と |
*この連載は毎月25日に更新です。次回は「下呂」へ。