THE 百年宿
#14
柊屋 HIIRAGIYA ‐KYOTO‐
幕末の志士や文人墨客を魅了した、京の宿。古都らしい室礼のもてなしも、また心地よい。
「THE 百年宿」連載第14回は、日本を代表する観光地、京都の老舗宿「柊屋」をお届けします。
柊家 ―京都府・京都市―
文:金井幸男
「緑豊かな坪庭」
新館の広間からは、緑豊かな坪庭を望むことができる。洗練された京都の極みが、そこには存在している。
日本人の美意識の境地。
洗練の空間で触れる、京の室礼の文化。
福 井県出身の初代が1818年に創業し、二代目で、旅館業を本業とした。下鴨神社の境内にある比良木神社に帰依したことから屋号を「柊家」とした。「来者如歸」(来たるもの帰るがごとし)の精神を創業より伝え、我が家のようにくつろげるもてなしを大切にする。その控え目ながらきめ細かい接客は、文豪・川端康成も絶賛するほど。
また客室は、四季の移ろいに合わせて室礼を施す京の暮らしを伝える。夏なら、暑さが和らぐよう、畳の上に網代を敷き、障子の代わりに簾を掛けるといった具合だ。このように京都古来の暮らしに伝わる知恵を取り入れ、情緒豊かな空間を演出してくれる。
この地だから味わうことのできる京文化がここに。四季折々の京野菜や新鮮な近海の魚介を使った、見た目にも美しい会席料理と合わせ、存分に古都ならではの魅力を楽しめることだろう。
簡素ながらも雅な情趣が、
京の都の風情を醸し出す。
文豪・川端康成も愛した「柊家」は、その客室に古きよき京の都の風情を残す。簡素ながら雅な情趣は、確かに格別だ。静かに流れる時間が、旅情を掻き立てる。旧館の客室は、江戸から昭和までの風情が残る数寄屋づくりが特徴。旅情を刺激してくれる。
新館の客室は、新しい時代に合わせた設備のなかに、和のしつらえを兼ね備える。「柊家」の伝統がモダンに昇華したお部屋だ。
色合いも鮮やかな
四季折々の京料理
京野菜や、近海の魚介を贅沢に使った夕食など、四季折々の味覚を満喫できる京料理。繊細な盛りつけ、選りすぐりの器が織りなす鮮やかな色合いも、食欲を刺激する。1日のはじまりとなる朝食では、温かい湯豆腐や焼魚など、心と体にやさしい料理が提供される。
夕食では、食材を吟味して調理した京料理が楽しめる。器には、伝統の清水焼きが使用され、一品一品が美しく盛りつけられる。