料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#09
夏の京都
夏の涼を感じて、
夏ならではの古都の食を楽しむ。
■夏の京都へ
夏の京都は祇園祭で盛り上がりますが、それを過ぎた真夏の古都も魅力的です。
まず、宿泊先を決めるのですが、市内から1時間ほど車に乗ってでかける鞍馬の先の花背にある「美山荘(みやまそう)」がお薦めです。ここが京都市左京区であることが不思議と思えるくらいに、自然に囲まれた宿で、夏でも朝晩は涼しい風が吹き抜けます。
「美山荘」はもともと大悲山不定寺の門前にある宿坊でした。現在は「摘草料理」を看板にする料理旅館で、フランスでいうところのオーベルジュでしょうか。
夏の名物は、庭でいただく鮎の塩焼きです。鮎は鮮度が命、すぐ近くの川で獲れた鮎を香ばしく焼き上げてくれます。都会では絶対に味わえない夏の味覚と言ってよいでしょう。「美山荘」は、夏ばかりでなく、新緑の季節も魅力で、料理は山菜がたっぷりと味わえます。翌日、市内に戻ったら、保津川下りに出かけましょう。嵐山から船が出ています。いっとき、何とも風流な舟遊びが楽しめます。
街中の料理屋では、祇園の「千ひろ」がお薦め。京料理の割烹ですが、夏だと私が「茄子のただ焼いただけ」と名付ける「焼き茄子」の名品に出逢えます。香ばしく、甘く、口に運んだだけで、茄子が溶け出してしまう傑作のひと皿です。もうひとつ、この季節ならではの「千ひろ」の逸品が「はもまつ椀」です。旬の名残りの「はも」と走りの「松茸」がお椀の中で一瞬の出逢いが叶う日本料理ならではの妙味です。
街歩きのお休み処としては「弥次喜多」が一番。美味しいかき氷が待っています。抹茶とあずきの「氷宇治金時」と「白玉あずき」が、私たち夫婦の定番。「室町和久傳」の喫茶室でいただく「わらびもち」もお薦めです。店内は静かで、「わらびもち」を涼やかにいただくことができます。
それから、忘れてはならないのが「とり安」の鶏のお土産です。少々高めですが「上もも肉」は、ただ焼いただけで味わい深い鶏肉が自宅で楽しめます。経木に包まれた鶏肉は、東京まで持ち帰っても、びくともしません。
また隣の店で、美味しい親子丼をいただくことができます。
■「保津川下り」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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妻の美穂子と風流な舟遊び |
■「美山荘」
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数寄屋建築の見事な空間 | 「名栗の間」では目の前で食材が料理される |
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山郷の野趣溢れる美しい食材 |
夏ならでは鮎の塩焼きとお造り |
■「千ひろ」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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傑作の逸品「焼き茄子」 | 一瞬の出逢い「はもまつ椀」 |
■「弥次喜多」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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「氷宇治金時」 | 「白玉あずき」 |
■「和久傳」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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1階はおもたせ(物販)、2階が茶菓席 | 町屋の落ち着いた空間 |
上品な「わらび餅」 |
■「とり安」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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昔ながらの経木に包まれた「上もも肉」 | 名物の「親子丼」 |
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烏丸御池の老舗かしわ屋(鶏肉販売) |
「とり安」のご主人 |
*この連載は毎月25日に更新です。次回は青森「陸奥鶴田の鶴の舞橋と八戸・種差海岸」へ。