料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
#07
南魚沼
四季折々の自然を堪能する話題の宿と
美味しいご飯を味わう旅
■日本一の米どころ南魚沼へ
日本一の米どころ南魚沼へ出かけてきました。第一の目的は南魚沼・大沢にある近年評判の宿「里山十帖」に泊まることでした。
東京から上越新幹線に乗ると1時間20分ほどで越後湯沢駅に着きます。駅前の宿「井仙」が食事処も開いていて、ここで昼食をとるつもりで、10時40分東京駅発のMaxとき317号に乗車すると、11時59分越後湯沢駅着で、誠に便利です。ただし、昼ごはんの予約はしておかないと、土、日はかなり混み合います。
「井仙」では手ごろな定食からコース料理までいろいろメニューが揃っていますが、晩の食事を考えると、軽めの昼食にしておかなくてはなりません。でも、なんといっても釜炊きの「御飯」が滅法美味しくて、箸が止まりません。できれば、「御飯」を主役にした「こしひかり定食」を作ってみては、とお店の方にお伝えしてしまったほどです。
大沢野の「里山十帖」へは、越後湯沢駅前から車で20分ほどです。宿まで来ると、周囲は森に囲まれ、電線が一本も見当たらず、ついさきほどまで人里にいたことが不思議なことのように思えます。「里山十帖」というユニークな名前は、宿に泊まりながら、自ら様々な物語を探し出してくださいという意味合いがあるとのことです。
チェックインして、すぐに露天風呂に入りました。緑の森の香りの中で、まさしく森林浴。みるみる都会の垢が落ちてゆくのを感じます。晴れた日の深夜なら、さぞかし満天の星だろうなと想像をめぐらしながら、ゆっくりと温泉に浸かりました。
夕食は遅めにしていただき、7時半から。山菜尽くしの食卓です。若い方には少し物足りなさを覚えるかもしれませんが、緑に溢れた卓上は、何とも爽やかで健やかです。そして、こちらも「御飯」がピカ一なのは言うまでもありません。主菜の牛肉のローストと一緒に食べると「美味いの、なんの!」。客室は、シンプルながら「安全・清潔・静寂」は申し分なく、至極快適です。
翌日、朝食を済ませた後、昼食のお薦め処を伺うと、少し遠いが、新幹線浦佐駅にほど近いところに「龍寿し」という「江戸前」のすし屋があると聞き、そこへ出かけることにしました。握りの姿は流線形の「地紙」の形で美しく、酢めしが穏やかな味わいでしたが、赤身のまぐろ、こはだが上出来でした。本物のわさびを下して使うところも気に入りました。いま、偽物の練りわさび全盛時代で、ご主人の職人気質を感じました。さらに、特産の大きな椎茸をコンフィ(油煮)にし、それを握ったすしは、うっかりすると、歯応えは「あわび」と間違えてしまうほどで、ここでしかいただけない見事な握りすしでした。
■「むらんごっつぉ (HATAGO井仙)」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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「HATAGO井仙」の佇まい | 釜炊きの「御飯」 |
■宿泊 「里山十帖」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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山々の自然に包まれた宿、妻の美穂子と | アートとふれあえるエントランス | 緑の森の香りいっぱいの露天風呂 |
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緑溢れる山菜尽くし | 御飯と牛肉のロースト |
■龍寿し PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
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酢めしとのバランスがいいこはだの握り | あわびの食感!? 椎茸のコンフィの握り |
*この連載は毎月25日に更新です。次回は「台北」へ。