呉・広島の旅
#05
旧呉海軍の遺産巡り〈前編〉
編・『TABILISTA』編集部
くれたんバスに乗って「歴史の見える丘」へ
呉の中心地の主な観光スポットをぐるっと巡る呉探訪ループバス・くれたん。土日と祝日に運行されていて、期間限定で昔ながらのボンネットバスも1日数便走っている(2016年秋シーズンは11月27日まで)。広電(広島電鉄)バス・エリア限定1日乗車券400円を購入すれば、呉探訪ループバスと市内の路線バス(エリア限定)に乗り降り自由だ。
この呉探訪ループバスに乗って、ボランティアガイドの方が呉の歴史スポットを案内してくれる「旧海軍の遺産巡り」があるという情報を、事前にネットでチェックしていた。13時30分に集合場所の中央桟橋バス停へ向かう。
この日参加したのは、自分のようなひとり旅のほか、カップル、グループなど数組の観光客。1~2組ずつに1人、「呉観光ボランティアの会」のガイドの方がついて、いざ旧海軍遺産巡りへ出発!
バス1日乗車券は、広電の市内営業所や「くれ観光情報プラザ」「大和ミュージアム」「呉阪急ホテル」のほか、当日券ならループバス車内でも買える。購入者特典としてミュージアムの入場料割引や、特産品が当たるスタンプラリーも。もちろんラリーにチャレンジ!
本連載#01でも紹介したボンネットバスは、実際に路線バスで使われていたいすゞBXD30型という旧式車。冷暖房がないので、夏や冬は運行できないのだそう。出合えたらラッキー。
バス停「子規句碑前」で下車して、道路沿いの高台にある「歴史の見える丘」公園へ。ここからは、戦艦「大和」を造船したドック跡の大屋根、造船所と立ち並ぶクレーン、さらに呉港がぐるりと見渡せる。旧海軍工廠時代から現在の呉の港湾産業まで、まさに歴史が一望できる場所だ。
「歴史の見える丘」に上がる「いせな歩道橋」。ガイドさんの案内で公園の反対側まで歩道橋を渡る
歩道橋から撮影。戦艦「大和」のドック跡、旧海軍工廠造船部造船船渠大屋根(現・ジャパン マリンユナイテッド呉事業所)
戦艦「大和」ドック跡の右側の造船所
「歴史の見える丘」の小さな公園内には戦艦「大和」の艦橋を模して造られた「噫(ああ)戦艦大和の塔」をはじめ、旧呉海軍工廠のドックの壁石や建物の礎石を使った記念碑が並ぶ。
「噫戦艦大和の塔」
旧呉海軍工廠のドックの壁石を使って作られた「造船船渠記念碑」。ドックへ下りる階段を再現
「旧呉海軍工廠礎石記念塔」
公園敷地内には俳人・歌人の正岡子規の句碑もある。呉港と題された句、「呉かあらぬ 春の裾山 灯をともす」。明治28年、子規は日清戦争に出征する従軍記者の友人を見送るために、広島の宇品港から船で呉を訪れた。その折に残した句のうちの一つで、船から見た夕暮れの休山の情景を詠んだものだそう。
子規の句碑。呉港を詠んだ句が刻まれている
歩道橋から見た休山。海軍の施設を造るため、港付近にあった民家は休山側の高台へ移されたのだとか
旧呉海軍の景観が残る「アレイからすこじま」
再びループバスに乗ってバス停「潜水隊前」で下車すると、車道に沿って遊歩道が整備されている「アレイからすこじま」公園がある。「アレイ」は英語で小道の意味、「からすこじま」は昔、呉港(当時は呉浦)にあった島の名前。このあたりは、旧海軍の最高機密エリアだったという。港の護岸や桟橋などには、旧海軍が築いたものが当時のまま残されている。まさに軍港の歴史ストーリーが伝わってくる景観だ。
現在は海上自衛隊の潜水隊群の司令部が置かれ、潜水艦や護衛艦が停泊しているのを見ることができる。潜水艦が近くで見られるのは、国内でこの公園だけだそう。爽やかな風に吹かれながら、海と山の眺めるのも気持ちがいい。訪れたときも艦隊の写真を撮ったり、散策する観光客で賑わっていた。
バス停「潜水隊前」で下車
「アレイからすこじま」から見た港の風景。左手に潜水艦、右手に護衛艦
明治時代に築かれた切石護岸がそのまま残されている
平らな桟橋も旧海軍時代に造られたもの
「アレイからすこじま」の道路を挟んで向かい側には、「昭和町れんが倉庫群」がある。赤れんがのレトロな趣が素敵な倉庫の建物も、呉海軍の施設として明治時代に建設されたものだ。
道路沿いに建ち並ぶレトロな赤れんが倉庫。今は民間企業が所有していて、外観のみ見ることができる
*旧呉海軍の遺産巡り、次回に続きます!
*呉の観光情報はこちら→呉観光協会HP→https://www.kure-kankou.jp/
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原作:こうの史代 監督:片渕須直 主演:のん
©こうの史代・双葉社/「この世界の片隅に」製作委員会
*本連載は週1回(毎週月曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!
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