究極の個人旅行ガイド バックパッカーズ読本
#05
バンコクでAirbnbを試してみた
文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部
民泊を利用するバックパッカーも増えている。一般的なホテルやゲストハウスよりも、はるかにコスパに優れた宿にありつけることもあるし、なによりその土地のナマの生活に触れることのできる楽しさがある。
世界中に広がっていったAirbnb
バックパッカーの旅のスタイルで大きく変化したもののひとつが「宿」ではないだろうか。ネットで予約するスタイルが一般的になったことで、あらかじめ宿泊場所を確保して旅する人のほうが、いまはもしかしたら主流かもしれない。
ドミトリーも予約できるところが増えており、またネット予約のほうがウォークインよりも安い場合もある。こうして宿泊はすべてネット経由のカード払いにすれば、大きな現金を持たなくていいというメリットもある(カードを紛失したらたいへんだが)。旅をしながらスマホで数日後の宿を取りつつ、進んでいく。そんなバックパッカーが多いのではないだろうか。
そして現在では、既存の宿泊施設に泊まらない旅行者も増えている。いわゆる民泊だ。ネットを介して、部屋を貸したい人と借りたい人がつながる。その代表的な存在がAirbnb(→https://www.airbnb.jp/:日本語サイト)だろう。
例えば東京・新宿で検索してみると、5000円を切る部屋がいくつも見つかる。都内でも屈指の繁華街で外国人旅行者に人気の街と考えれば、けっこう安いようにも思う。どの物件も写真を見る限りはキレイで、ホテルよりはグッと一般的な日本の若者の部屋という感じ。日本人の生活感の中で泊まれるので、外国人にはいいかもしれない。Wi-Fi完備は常識だ。
Airbnbを利用して、純粋に個人の部屋を貸し出しているケースもあるが、いまではだいぶビジネス化が進んでいる。複数のマンションの部屋を借りて、それをAirbnbに転用しているのだ。
だが日本の場合、不特定多数のゲストが物件に出入りすることを嫌う大家や周辺住民の苦情も寄せられている。旅館業法との兼ね合いもある。
今年6月には住宅宿泊事業法が施工され、宿を提供するホストは都道府県に届出をすることと、年間の宿泊日数が180日に制限されることが決められた。だが、モグリで営業している人もまだまだいるようだ。
バンコクではBTS(高架鉄道)と地下鉄の路線網の中に泊まったほうが断然に便利だ
中心部のスクンビットにも格安物件が
では、タイ・バンコクのAirbnb事情はどうなっているのだろうか。検索をしてみるとさすがは国際観光都市、膨大な数の物件が登録されているのだ。ためしに「2000円以下」のフィルターをかけて検索してもなお、300件を超える宿が出てくる。
これではキリがないので、エリアで選んでみよう。バックパッカーの聖地カオサン通り周辺はむしろ登録件数は少ない。意外にも、バンコクの目抜き通りであり日本人在住者も多い高級街のひとつ、スクンビット通りにも手ごろな物件が見つかるのだ。
BTS(高架鉄道)トンロー駅はそんなスクンビットの中心の駅のひとつだが、400バーツ(約1400円)以下の物件もある。アクセスがよく便利なスクンビットでこの値段はかなりお得だと思う。5ツ星のホテルが乱立している界隈なのである。ただやはり、スクンビットの場合、Airbnbではドミトリーも多く、個室の数は少なめだ。
8月下旬に調べた時点での最安値は326バーツ(約1000円)。バンコク郊外シーナカリンにあり、場所は不便だが観光地ではない普通のタイの暮らしを垣間見られるだろう。部屋は広々としたアパートの個室で、過去に泊まったゲストの評価も高い。日本人の宿泊者もけっこういるようだ。
バンコク中心部でもホテルと同レベルの設備で値段の安い民泊がある
Airbnbに登録して予約をしてみる
さて、Airbnbの表示を地図に切り替えてみる。登録物件の場所と値段とが表示される。あれこれとチェックし、BTSあるいは地下鉄の駅から近い・1000バーツ(約3400円)以下・個室・あまり観光地っぽくないところ……などなどの条件を考えて調べた結果、とある物件が気に入った。BTSプンナウィティ駅から徒歩10分ほどの場所にあるコンドミニアムである。1泊600バーツ(約2000円)。
まずはAirbnbに登録しなくてはならない。とはいえ必須項目は名前、メールアドレス、電話番号などかんたんなものだ。その後は宿泊希望先のホストと、Airbnb上でメッセージをやりとりすることになる。
ちょっと緊張したのだが、送られてきたのは非常に平易でわかりやすい英語であった。お互いに挨拶をして、それから伝えたのはバンコクまでの飛行機の便名、宿に着くおおまかな時間だけ。そして、LINE、WhatsAppなどいくつかのIDが送られてきて、当日はこのうちどれでもいいから連絡を取り合いましょう、とのこと。なお料金はAirbnbを通じたカード払いだ。
プンナウィティ駅周辺は観光客が来る場所ではなく、住宅街が広がっている
ホストと現地で実際にご対面
LCCエアアジアでドンムアン空港に降り立ち、エアポートバスとBTSを乗り継いで、プンナウィティ駅までおよそ1時間。そこから件のコンドミニアムに向かう。これがかなりの規模だった。いくつもの大きな棟が立ち並ぶ。そのうちA号棟エントランスが指定された場所である。
敷地全体の入口にはガードマンがいたので説明をしなくてはと思ったのだが、なにも問われることなく通してくれた。こんなセキュリティでいいのだろうかという疑問はあったが、ともかく約束の場所に時間通りにたどりつく。異国で見知らぬ人と待ち合わせをするというワクワク感を楽しんで待っていると、
「Airbnbのお客さんですか?」
見れば、まだ若いタイ人女性が満面の笑顔でやってきた。ほっとする。いちおう顔写真も登録しておいたので、すぐにわかったという。カードキーでA号棟のドアを開け、内部へと案内してくれる。見た感じ、タイの中流階級の家族が住む物件という感じだ。
「私は兄とAirbnbを仕事にしているんです。兄がお客さんとのメールなどのやり取りをして、私はこうして現地で案内」
聞けば、このコンドミニアムも含めて20室を借りており、Airbnb用に貸し出しているのだという。リッパな商売になっているのである。
部屋は中庭のプールとカフェを望む1階だった。ワンルームだが大きなソファーも置かれていて天井が高く開放感がある。そしてきれいに掃除されていて気持ちがいい。エアコン、冷蔵庫、除湿機、Wi-Fiといった設備がある。最近はNetflixを導入する物件も出てきているのだとか。
ホットシャワーは勢いがよく、Wi-Fiはビンビンで、なかなかに快適だ。カードキーと部屋の鍵を渡されて、チェックアウト時にはメールボックスに入れておけばOKだという。そんな説明をして彼女は去っていった。あとはくつろだけだ。
大きなコンドミニアムのうちかなりの部屋がAirbnbに利用されているようだ
実に快適な部屋だったのだが……
部屋のたたずまいは快適だったのだが、近所に食事ができるところが少ないことが難点だった。コンビニも10分歩いて駅前まで行かなくてはならない。これが灼熱のタイではけっこうきつい。だからいちいち、コンドミニアムの前にたむろしているバイクタクシーの世話になる。やはり宿は、立地も周囲の環境も含めて、まず自分の目で見て確かめることが大事なようだ。
とはいえ宿泊の選択肢が増えるのは旅人にとってはありがたいもの。バックパッカーであるならば細かい予定は立てないで、行き当たりばったり、予約に頼らず旅をしていくのが王道だとは思うが、ときには民泊を使ってみるのも面白いものだ。
こちらが泊まった部屋。広めのバスルームもついている
*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!
*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春
『バックパッカーズ読本』編集部 格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。 |