ブーツの国の街角で

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号外(8):新型コロナ第二波襲来で3色に分割されたイタリア

文と写真・田島麻美

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新型コロナウイルスの感染「第二波」が吹き荒れている欧州。10月上旬までは近隣諸国に比べて状況が安定していたイタリアだったが、当初から懸念されていた秋の第二波はやはり来てしまった。それも急激に。春の全国ロックダウン以降停滞していた経済活動が微力ながらもどうにか安定して回り始めた矢先、徐々に増加傾向にあった新規感染者数が一気に爆発した。短期間のうちに日々状況は悪化し、感染者数、重篤者数、死亡者数が急激に増えた。こうした事態を鑑み、新たに発令された首相令により、11月6日から感染拡大が深刻なエリアでは再びロックダウンを余儀なくされる事態に陥っている。危険度によって3つのゾーンに分断されたイタリアの現在の様子をローマからレポートする。 (本文中のデータは2020年11月10日現在のもの) 

 

 

 

急激に襲ってきたコロナ「第二波」

 

全国民が辛酸をなめた春のロックダウンを経て、夏には一旦感染が収まっていたイタリアだったが、学校が新学期をスタートした9月中旬以降、徐々に新規感染者が増え始めた。秋のコロナ感染第二波は兼ねてから懸念されていて、夏には恐る恐るバカンスを楽しんだイタリア国民もそれは常に頭の片隅にあったと思う。新学期が始まり、街中での人の動きが活発化するにつれPCR検査を受ける人の数がだんだんと増えていった。検査を受ける人の数が増えれば新規陽性者数も当然増えてくるのだが、PCR検査で陽性と出ても実際には無症状の人がほとんどで、10月も初旬までは医療機関の状況もなんとかコントロールできているように見えた。しかし10月中旬に入って状況が一変した。
10月10日の時点では1日の新規陽性者数は4719人、集中治療患者数は390人、死亡者は29人だったのが、十日後の20日のデータでは、1日の新規陽性者数が8736人、集中治療患者数は870人、死亡者は89人に急増。21日には1日の新規陽性者が1万人を超え、集中治療患者数も1049人にまで増えてしまった。この時点から感染拡大は一気に速度を増し、10月21日以降は連日1万人以上のペースで1日の新規陽性者数が増え続け、死亡者数も3桁になってしまった。一度勢いがつくと恐ろしいほどのスピードで感染が広がっていくのは春にも経験したが、第二波の速度と拡散力はさらに強いように感じる。10月末には1日の新規陽性者数は2万人を超え、11月3日には1日の死亡者数が350人を超えた。11月10日の今日のデータでは、1日の新規陽性者数が16,776人、集中治療患者2,971人、死亡者は580人増えている。感染拡大の歯止めがどうにもかからない状況に陥っている一方で、経済的に窮地に追い込まれ、もう後がないという声も日増しに強くなってきている。

 

 

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3月からのイタリアの新型コロナウイルス感染状況を示すグラフ(出典:Il Sole 24 ORE)。桃色は現行陽性者、緑色は完治者、黒色は死亡者、赤色はケースの総計を示す。10月半ばから完治者数がほぼ横ばいなのに対し、新規陽性者数が急増しているのがわかる。
 

 

 

危険度により3つのゾーンに分けられたイタリア

 

第二波による感染者数の急増に伴い、11月4日、イタリア政府は新たな首相令を発表した。11月6日から12月3日まで適用されるこの首相令により、イタリアは赤、オレンジ、イエローの3色に分割されることになった。これは、州ごとに異なる感染状況、病院のベッド占有率や集中治療施設のキャパシティ、陽性者の感染拡大速度や症状がある人の割合など21の基準を元に3つの危険度によって色分けしたもので、状況の深刻度によってゾーンごとに異なる規制が敷かれることになった。
感染状況が最も深刻なレッドゾーンに指定されたロンバルディア州、ピエモンテ州、カラブリア州、ヴァッレ・ダオスタ州は、ほぼ春のロックダウン時と同様の規制がかけられ、仕事及び健康上の特別な理由がある場合を除き居住している自治体内でも移動が禁じられた。中学2年生以上は全てリモート授業となり、飲食店や小売店も営業が禁止となった。次いで危険度が高いオレンジゾーンにはプーリア州、シチリア州が指定され、住民の他の市への移動が禁止になったほか他州から同エリアに入ることも禁止された。高校以上はリモート授業となり、飲食店は閉店、テイクアウト・デリバリーは22時までなどの制限がある。それ以外の州はイエローゾーンとなっているが、現在、イタリア全土で施行されている22時から翌朝5時までの夜間外出禁止令と高校以上のリモート授業、博物館・美術館の閉鎖、ショッピングセンターの週末の営業禁止、飲食店の営業18時までなどの制限が適用される。この3つの色分けは15日間継続され、状況の変化によって見直されることとなっている。コンテ首相は4日の記者会見で、今後数週間以内に病院の集中治療室の能力が限界に達する恐れがあり、政府として介入せざるを得ないと説明。また、感染者数が比較的まだ少ない州ではこのまま通常の生産活動を継続し、ロックダウンに入るエリアの経済停滞を少しでもカバーすることを目的に、イタリアを3つのゾーンに分割したと語った。ローマを中心とするラツィオ州はイエローゾーンで、少なくとも夕方までは通常通りの活動ができている。経済活動をこれ以上停滞させないためにも、感染拡大を食い止める必死の努力が各地で続いている。

注:11月10日夜、イタリア保健省より新たな法令が発表され、ボルツァーノ自治県(トレンティーノ ・アルト・アディジェ州)がレッドゾーンに、トスカーナ州、バジリカータ州、リグーリア州、ウンブリア州、アブルッツォ州がオレンジゾーンに追加指定された。これらの州は11日から15日間各ゾーンの規制が適応される。

 

 

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3つの色で分割されたイタリア。病床数、発症者数など日々更新されるデータを元にゾーン分けが行われる。レッドゾーンの都市はほぼ春のロックダウンと同様の状態になっている(出典:イタリア保健省)
 

 

 

第二波の重要課題となっている学校

 

先週末からゾーンごとの行動規制が施行されているイタリアだが、今回の首相令を決める上で最も重要な争点の一つとなったのが学校である。9月以降、小学生や中学生などの間でも陽性者が増えており、全ての学校で授業をリモートにするかどうかが大きな問題となった。しかしながら、小中学生の発症率は極めて低く、PCR検査で陽性となっても無症状のまま過ぎてしまうケースがほとんどであることがわかっている。他方、小中学に通う年齢の子どもたちを一人で家に置いておくことはイタリアの常識では考えられず、共働き家庭が大半をしめるイタリアでは、子どもが家でリモート授業を受けるとなると親のどちらかが仕事に行けなくなってしまう。一般家庭においても家族以外の人の出入りを止めることを強く推奨している現在、ベビーシッターも存在そのものが不安材料となる。また、春のロックダウン時に小学校や中学校などではリモート授業が効果的に行われなかったり、家庭ごとに必要機材の格差が明るみに出ただけでなく、子どもたちの心理・身体にも大きなマイナス影響が出たことが問題となった。学校教育の重要性・必要性を痛感した春のロックダウンの経験を元に、今回は様々な状況から総合的に判断した結果、オレンジ・イエローゾーンでは小中学校は全て、レッドゾーンでも中学1年生までは対面授業を継続することとなった。さらに教育現場では、教師や学校スタッフのPCR検査、施設の定期的な消毒、登校時の検温などが行われ、クラス内に陽性者が発覚した場合は1週間の学級閉鎖の後PCR検査を経て登校再開、という流れが定着してきた。こうした措置は企業に関しても同様に定着している。
9月中旬以降、街中の医療機関や検査機関でPCR検査を受ける人の列がどんどん長くなっているのはこのためである。陽性→自主隔離1〜2週間→PCR検査→陰性→学校・職場復帰という流れが一般市民の生活の中に既に浸透した。実際には陽性でも無症状の人がほとんどらしいが、かといって陽性と知りつつ人の中に出ていくわけにもいかない。コロナウイルスと共生する日常では、こうした面倒なルーティーンも根気よく辛抱強く続けていかなければならないことを、今や誰もが理解している。
 

 

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街中の検査機関の前には、PCR検査を受ける人の長い行列ができている。

 

 

 

日暮れとともに静寂が訪れる住宅街

 

イエローゾーンのローマでは、必要不可欠な場合を除き市外への移動回避が推奨されている。また、前出の通り夜22時から翌5時までの夜間は外出禁止となっている。レストランやバールなどは店内で飲食ができるのは18時までで、それ以降は22時までテイクアウトが利用でき、デリバリーに関しては時間制限なしで利用できることになっている(但し、配達人は22時以降の移動には自己証明書を携帯しなければならない)。首相令が発令された週末、ローマの旧市街を歩いてみたが、太陽のあるうちは比較的人出も多かった。爽やかな秋晴れの休日、マスク姿の家族連れやカップルが旧市街をそぞろ歩く様子は、この異常事態にあって僅かながらも穏やかな気持ちにさせてくれた。その反面、日が暮れて18時を過ぎると一気に訪れる静寂に、まだ慣れずにいる。いつもは夜中過ぎまで笑い声やお喋りの声が響き渡る住宅街も、まるで無人のように静まり返っている。
11月6日から実施されている今回の感染防止策は12月3日を一応の期限としているが、これは一年で一番経済活動が活発となるクリスマスシーズンを死守しようという目的があるからだ。苦難続きの2020年をなんとか乗り切るためにも、せめてクリスマスシーズンには営業を再開したいと誰もが切に願っている。3週間後、少しでも希望を持ってクリスマスシーズンの幕開けを迎えられるよう祈りつつ、今はひたすら辛抱するしかない。
 

 

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秋晴れの週末、ポポロ広場では親子連れやカップルがそぞろ歩きを楽しんでいた(上)。18時を過ぎた住宅街の通りにはひとっこ一人歩いていない(下)。

 

 

 

*この連載は毎月第2・第4木曜日(月2回)の連載となります。次回は2020年11月26日(木)掲載予定です。お楽しみに! 

 

 

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田島麻美 (たじま・あさみ)

千葉県生まれ。大学卒業後、出版社、広告代理店勤務を経て旅をメインとするフリーランスのライター&編集者として独立。2000年9月、単身渡伊。言葉もわからず知り合いもいないローマでのサバイバル生活が始まる。半年だけのつもりで暮らし始めたローマにそのまま居座ること19年、イタリアの生活・食文化、歴史と人に魅せられ今日に至る。国立ローマ・トレ大学マスターコース宗教社会学のディプロマ取得。旅、暮らし、料理をメインテーマに執筆活動を続ける一方、撮影コーディネイター、通訳・翻訳者としても活躍中。著書に『南イタリアに行こう』『ミラノから行く北イタリアの街』『ローマから行くトスカーナと周辺の街』『イタリア中毒』『イタリア人はピッツァ一切れでも盛り上がれる』他。

 

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