料理評論家・山本益博&美穂子「夫婦で行く1泊2食の旅」
29 香港食べ歩き3泊4日の旅
文と写真・山本益博
香港島の名店「ta vie」「大班楼」「羅富記」を食べ歩く
3年ぶりの香港ですが、今回の宿泊先の「マンダリンオリエンタルホテル」は、何と30年ぶりの滞在でしょうか?
今回は「アターブル」という私のサークルの仲間たちと香港食べ歩きの3泊4日なのですが、選んだ店がすべて香港島にあるため、全員で香港最上級のホテル「マンダリンオリエンタル」に泊まることにしました。
チェックインしたときに、私の30年前の宿泊記録が残されていて、ビックリしました。通常はこんなに古い記録は残っていないもので、さすが「マンダリン」と思いました。
■「マンダリンオリエンタルホテル香港」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
落ち着きがあり優雅なエントランス。
この「マンダリンオリエンタル」がある中環は、香港島の中心地で人が賑わい、名レストランも集中しています。今回の「ta vie」、「大班楼」「羅富記」へは歩いて出掛けられますし「福臨門」のある湾仔(ワンチャイ)も近くです。今回の「TABILISTA」では、「ta vie」と「福臨門」それに「羅富記」をご紹介いたしましょう。
「ta vie」はフランス語で「君の人生」、「タヴィ」と発音します。「旅」にかけた言葉遊びですが、日本料理をベースにフランスのエスプリを利かせた新感覚の料理と言えばいいでしょうか。フランスで修行し、香港に出店した日本料理「龍吟」の料理長を4年間勤めた佐藤秀明さんが独立し、そのまま香港に開いた店です。
早春なので、シーザーサラダにホタルイカを組み合わせたり、クラムチャウダーにさやえんどうを添えたりと、日本からも旬の食材を仕入れて、日本料理の季節感を大切にしています。香港にいてもわざわざ出掛ける価値のある店です。
「福臨門」では名物のフカヒレのスープには手を出さず、小豚の丸焼きを堪能しました。忘れてはならないものにデザートのつばめの巣があります。ココナッツミルクでいただくのですが、つばめの巣がたっぷり入っているばかりか、ココナッツミルクが新鮮で香りが高い。その日の使いきりで、残れば処分してしまうとのこと。ココナッツミルクに偏見があった私は、自分が今まで本物を知らないだけだったことを、この「福臨門」で教わりました。
もう1軒の「羅富記」は粥専門店です。朝7時過ぎから開いているので、香港へやって来ると朝食に出掛けます。必ず注文するのが「痩肉皮蛋粥」塩漬け赤身の豚肉とピータンがたっぷりと入ったシンプルな粥です。40年前から通っていて、いまだに飽きません。
■「ta vie」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
日本の季節感を取り入れた見事な料理。
シェフの佐藤秀明さんと一緒に。
■「福臨門」香港店」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
見事な迫力の豚の丸焼き。
ココナッツミルクにたっぷりのつばめの巣のデザート。
■「羅富記」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
豚肉とピータンがたっぷり入ったトロトロの粥。
そして、今回のお土産は、この「皮蛋」です。我が家では、ピータンにシャンパンを合わせます。
私が知る限り、シャンパンと最も相性のよい食べ物は、キャヴィアなどではなくピータンです。発酵したもの同士の相性でしょうか?
■「李煥糖心皮蛋」 PHOTO/MASUHIRO YAMAMOTO
上環のウエスタンマーケット近くの皮蛋専門店。
日本で売っている皮蛋とは一味違う。
次回は夫婦で「ニューヨーク」へ出かけます。
*この連載は毎月25日に更新です。次回はニューヨークへ。