THE 百年宿
12 法師温泉長寿館:‐HOUSHI ONSEN CHOUJUKAN GUNMA‐
「THE 百年宿」連載第12回は、群馬県の「法師温泉長寿館」をお届けします。
法師温泉長寿館 ―群馬県・利根郡みなかみ町―
創業された明治時代からの趣ある佇まいを、140年以上経った現在も、美しく残す温泉旅館。
静かな山間の景色と、ここだけの絶湯を愉しみ尽くしたい。
文:山下皓平
「法師乃湯」
混浴の大浴場である「法師乃湯」は、和洋折衷の建物で、そのモダンなテイストは鹿鳴館調と呼べるものだ。
140年以上の歴史を刻む宿。
ゆっくりと時間が流れる、
群馬・みなかみの秘湯を体験。
上 信越高原国立公園特別地域に隣接、鬱蒼と茂る原生林に包まれた谷間に佇む、創業百四十年の旅館。現在では貴重な自然湧出のお湯を、有効成分が損なわれることなく体へ届けてくれる。
さらにその温泉を囲む、国登録有形文化財の歴史的建築の数々は特筆で、なかでも「法師乃湯」は、明治二十八年築の鹿鳴館調の建物で、一世紀以上の歴史をそのままに残す混浴の大浴場だ。
また、明治八年に建築された本館は、江戸時代の旅籠屋の面影を今にとどめ、新緑や紅葉など、四季折々の表情を彩る。まるで胎内回帰のような温泉体験をぜひとも体験してほしい。
懐かしい光景に感じる
時空を超えた旅情。
玄関奥に広がるロビースペース。中央には火鉢が鎮座し、かつての日本では日常的にあったであろう原風景を連想させてくれる。明治8年創業という歴史を感じる館内には、純和風な客室が33室。かつての山間にあった日本人の暮らしを感じさせるアットホームな空間だ。
玄関左手には、来客同士の憩いの場として、囲炉裏が設けられている。一年にわたって薪がくべられ、茶釜のお湯を温める様子に、昔ながらの暮らしを垣間見るようだ。
山川の食材が織りなす、
滋味を感じる逸品。
地場の食材を大切にし、山菜や川魚などを、山間部ならではの食事が堪能できる。自家水源の清水を使用するなど、食材以外へのこだわりもうれしい。先祖代々は新潟県南魚沼市の出身。朝食・昼食・夕食のすべてに、契約農家で収穫された魚沼産のコシヒカリ100%を使用し、地場の味覚とともに味わえる。