石巻/牡鹿半島 絶景・美食・縄文
#07
「2泊3日妻をおもてなしするアウトドア旅」@牡鹿半島Vol.3
文/田中ケン 写真/岡安啓人(MASH)
【3日目】
キャンプ場の朝、最初の仕事は炭の火起こし。火を起こして、コーヒーを淹れて……。都会の生活では味わうことのできない「ゆったりと流れる時間を楽しむ」。今回は朝食は我慢し、コーヒーだけにする。なぜなら、それは最高の景色を見ながらランチボックスではなく、ブランチボックスを楽しむ作戦だ!
撤収もテントがないだけでかなり楽である。30年もアウトドアを楽しんでいる夫婦。言葉がなくてもお互いが役割分担ができている。あっという間に撤収を終える。
キャンプサイトを撤収する前に、地元の名産を使った2品を準備する。ひとつはアナゴの炊き込みご飯のおにぎり、そして保温ボトルに熱々の味噌汁を入れる。具材は石巻を代表する名産品カキだ。ホウレンソウやネギなど下準備を調えて、具材は固くならないように現地で。アウトドアランチをより美味しく食べるコツだ。
いよいよ最後の“おもてなし”。絶景散策に選んだ場所は、キャンプ場からクルマで約5分と程近い「おしか御番所公園」。牡鹿半島の南端にあるコチラ、決して本格的なトレイルではないが、風景を楽しみながら散策できる程よい心地よさ。東側には奥州三大霊場のひとつ、島全体が神域とされている金華山が。そして西側には以前、離島キャンプ旅で訪れたことがある田代島と網地島も眺めることができた。
この絶景は、牡鹿半島に来たらぜひ見てもらいたい。キャンプの帰りがけにぶらりと立ち寄るにもかなりオススメである。
「おしか御番所公園」の遊歩道から金華山、太平洋を望む
[住所] 石巻市鮎川浜黒崎
牡鹿半島の最南端に位置し、三陸復興国立公園内にある公園です。御番所という名前は、鎖国時代に外国船を監視するための唐船番所があったことに由来します。頂上には六角形の展望棟があり、360度の大パノラマが望めます。東側には眼下に信仰の島、金華山、遠く太平洋の水平線まで見渡すことができ、西側には、猫の島として有名な網地島と田代島をはじめ、リアス式の美しい海岸線を有する石巻湾、遠くに松島や蔵王連峰まで一望できます。遊歩道が整備されており、誰でも気軽にトレッキングを楽しめます。
撤収作業、さらにトレッキングとこなせば、思った通りの腹の空き具合。冬晴れで空もスッキリ。暖かな日差しの下で地面に腰を下ろす。バックパックから炊き込みご飯のおにぎり、そして保温ボトルには熱々の味噌汁を入れてきた。これぞ、身も心も満たされる至福の時間。我ながらなんて贅沢なランチタイムだろう。
大好きな都会での遊びもほどほどに、20代の前半からアウトドアにハマった僕がなぜ、ここまで続けていられるか。家族や仲間とともに、僕が楽しんでいるのはキャンプ場でキャンプをするだけではないってこと。
地の食材を使った「食」。テントやタープ、また今回のようなケビンの利用も含め、快適な居住空間を形成する「住」。そして自然の中で体を動かす「遊」。僕のアウトドアスタイルは、以上の3要素を常にセットにしている。もちろん、今回の旅もバッチリ当てはまる。
キャンプのスキルは、回数をこなせば自ずと身に付く。設営・撤収の時間は短縮自在で、時間は大きく余るのだ。いつしかキャンプをすることが目的ではなく、川、山、海など様々な「遊び」が主たる目的となる。僕は山に登るし、カヌーも漕ぐ、ウインタースポーツも大好きだ。それらの遊びをすぐに楽しめる環境に居られるスタイルが、キャンプなのだ。
もっとも、欲張りすぎて疲れてしまってはよろしくないから「適度に」「手軽に」そして「無理をしない」という自分のペースをしっかりと把握する。
今回妻を“おもてなし”する牡鹿半島の旅は、確たる僕のライフスタイル「食」「住」「遊」の快適生活が凝縮された、大充実のプランとなったのだった。
天気にも恵まれ、最上の“おもてなし”ランチをふたりで楽しむ。
「穴子の炊き込みご飯おにぎり」と「牡蠣とホウレンソウの味噌汁」
これまで食の宝庫、石巻を凝縮したアウトドアクッキングをお届けしてきた。最後に石巻の名産、カキとアナゴを使ったアウトドアランチレシピをご紹介しよう。おにぎりに使ったお米ももちろん石巻産のササニシキ。
[材料] アナゴのかば焼き 1パック、コメ 2合、長ネギ 半分、醤油 適量
1.ダッチオーブンに油を熱しお米を炒める
2.お米が透き通ってきたらねぎのみじん切り、アナゴを加えさらに炒める
コメ(ササニシキ)、アナゴ、ネギもすべて地元産。ちなみに、日本古来のうるち米の系統であるササニシキは、低温にも高温にも弱いため、生産量が減っているが、石巻市はササニシキは生産量全国一を誇っている。
3.醤油とお水を加えざっくり混ぜ合わせる。お水の量はお米がひたひたになるぐらいにする。
4.上の火を強めにし、炊き上げる
ダッチオーブンのふたに炭を乗せ、上下から炊き上げるゴハンは格別。
6.炊きあがったらおにぎりにする
アツアツの炊き込みご飯でおにぎりを握る。やけどに注意。おにぎりは妻の方が一枚上手だ。ふたりでの共同作業も楽しい。
[材料] 牡蠣の水煮(市販のもの)、お味噌、ねぎ、サラダホウレンソウ、だしの素
1.サラダホウレンソウは切って持っていく
水道が使えるキャンプ場で味噌汁の下ごしらえを済ませておく。味噌も適量をポットに入れ、現地での作業を短縮する。
2.お湯を沸かし出汁を入れ、牡蠣の水煮を入れひと煮立ちさせ、お味噌を溶かし入れよく混ぜる
3.みじん切りのネギ、サラダホウレンソウを入れてできあがり
濃厚な牡蠣の出汁が効いた温かい味噌汁は、冷めた身体に沁みる。
最後に味見。塩加減もバッチリだ。
持参した炊き込みご飯のおにぎりと一緒に絶景を眺めての至福のランチタイム!
*田中ケンさんの情報はコチラから。
「極上!三ツ星キャンプ」(BS日テレ)番組ホームページ
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田中ケン(たなか けん) 1964年生まれ、東京都出身。小学校時代からサッカーに親しみ、高校3年生のとき、東京代表として全国大会に出場。高校卒業後は「ポパイ」「メンズクラブ」などの男性雑誌を中心にファッションモデルとして活躍。25歳で父親になったのを契機にアウトドアに開眼。「アウトドアを取り入れることで、生活はもっと快適になる」を信念に“快適生活研究家”として各メディアで幅広く活動。1992年にサバイバルレース「レイドゴロワーズ」日本チームとして初出場。1993年には冒険型トライアスロン「ボーダートゥボーダー」に出場。2000年に「有限会社ダディーズオピニオン」を設立。雑誌、テレビ、ラジオ、イベントなどの企画、編集、コーディネイト、出演をはじめ「オープンエアフィールド軽井沢高原」のキャンプ場プロデュース。軽井沢・鵠沼・横浜でアウトドアスタイルのカフェ・レストランをディレクションするなど多方面で活動。アウトドアイベントも数多く手がけ、ビーチクリーンアップや自身のライフワークである東海自然歩道清掃登山など環境問題にも力を注ぐ。著書に「アウトドア達人パパの快適家族術」、「ダディーズハート」がある。 |
★次回は、料理評論家の山本益博さんが登場。石巻に息づく復興の芽を取材してもらいました。津波で被災した旧大川中学校の跡地で始まったベビーリーフ水耕栽培の現場を訪問し、生産者の思いやこだわりについてお聞きしました。リーフを試食、その味わい方などについてお届けします。2月20日(水)配信予定です。お楽しみに!
ベビーリーフの生産工場「良葉東部」にて。