編集部通信

『東南アジア全鉄道制覇の旅』シリーズ第二弾、好評発売中!!

 旅行作家・下川裕治氏のタビリスタ連載をまとめた『東南アジア全鉄道制覇の旅』シリーズ第二弾、インドネシア・マレーシア・ベトナム・カンボジア編が双葉文庫より好評発売中です。

 足かけ3年、列車に乗り続けた日々を綴ったアジアローカル鉄道紀行、果たして全鉄道の制覇はなるか……!?

 そして、タビリスタの「東南アジア全鉄道」連載もまだもう少し続きます。なぜ連載が続いているのかというと……本のあとはそちらの連載の続きも、ぜひお楽しみください!

 

●双葉文庫『東南アジア全鉄道制覇の旅

インドネシア・マレーシア・ベトナム・カンボジア編』

著:下川裕治 カバー写真:中田浩資

定価:本体657円+税

 

東南アジア全鉄道2書影

 

 なお、新刊発売を記念して、東京・西荻窪の『旅の本屋のまど』で、10月18日(木曜日)に著者トークイベントが開催されます。

 詳細・お申込みはお店のHP↓をご覧ください。ご参加をお待ちしております。

*『旅の本屋のまど』http://www.nomad-books.co.jp/

 

#01 「初めてのバックパッカー」モデルルート徹底解説〈1〉

文と写真・『バックパッカーズ読本』編集部

 初のバックパッカー体験にぴったりのルート、バンコク→アンコールワット。どのくらいの日数で、予算はいくら必要で、航空会社はどうすればいいのか……慣れていない人でもきっと楽しく旅できるノウハウを解説する。


 

どこを旅したいのかわからない、なら

 この夏、初めて海外に出て、バックパッカー旅行に挑むという人も多いのではないだろうか。
 しかし、「旅してみたいけれど、どこに行ったらいいのかわからない」という人も意外に多い。そして「まずなにをしたらいいのか、どう旅を組み立てていけばいいのか……」と悩む人もいることだろう。
 そこで当連載の第1回目は、初バックパッカーにおすすめのモデルコースを設定して、予算や日程、現地での立ち回りなどを解説したい。
 バックパッカー旅行の詳しいノウハウは『最新改訂版 バックパッカーズ読本』をごらんいただくとして、まずはこの記事を見てもらえれば、旅の姿がなんとなくつかめるのでは、と思う。

 目的地はタイ&カンボジアだ。
 初の旅先として、いまも昔も愛されているタイ・バンコク。この街を出て、世界遺産アンコールワットがそびえるカンボジア・シェムリアップまで旅をする。初心者でも無理なく旅できるコースであるのに加えて、旅の面白さもたっぷり詰まっている。1週間あれば回れるコースなので、時間があまり取れない人でもバックパッカー気分を十分に楽しめるのだ。

 

 

 

便が多いエアアジアか

 さて、まずは航空券を探すところからだろうか(パスポートがない人は各都道府県の窓口で取ってね)。
 航空券の検索サイトもいくつかあるが、ためしにスカイスキャナー(www.skyscanner.jp)から、目的地や日付を入力してみると……。
 8月1日出発、9日帰国というスケジュールだと、最安はエアアジアXの31,360円と出た(6月28日調べ)。時間帯は、

 成田9時15分発→バンコク14時着
 成田14時25分発→バンコク19時10分着
 成田20時40分発→バンコク翌1時20分着

 とあって、9時15分発が最も安い。
 帰路は、

 バンコク5時5分発→成田13時10分着
 バンコク11時5分発→成田19時25分着
 バンコク23時55分発→成田翌8時着

 の3便で、早朝発が最も安い。
 なおエアアジアXは羽田発だとクアラルンプール経由になり、値段も上がる。


01エアアジアはアジアLCC界の雄。クアラルンプールを拠点にアジア一帯に路線網を持っている

 

 

プロモーションを狙いたいスクートか

 新興のスクート航空を見てみよう。2018年の6月からバンコク~成田便を開設し、認知度をアップさせるためにときどき爆安プロモーションを打っており、旅行者の評判になっている。片道7900円というセールをやることもあるのでチェックしておきたい。
 しかしこのときは、いちばん安いプランで往復36,547円なり。時間帯は、

 行き 成田10時発→バンコク15時着
 帰り バンコク0時45分発→成田翌8時50分発

 スクートの場合、シンガポール経由の便も同時に表示されて、しかも値段があまり変わらないことがあるというワナも仕かけられているので注意だ。
 それと「ノックスクート」という同会社の別ブランドの便もやはり表示されている。こちらも安いのだが、ひとつ注意。スクートのウリのひとつは、LCCでは珍しくボーイング787を使っており、設備がしっかりしていること。エコノミークラスでもシートピッチは31インチ(約79cm)、シート幅は18インチ(約46cm)と、ほかのLCCよりゆったりしている。だいぶラクなのだ。予約画面で「787 DREAM LINER」と表示されているものが該当する。ノックスクートは別の機材だ。


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いまバンコクに行くならスクートがいちばんお得かもしれない

 

 

LCC購入のチェックポイント

 ほかの航空会社だと、フィリピン航空やチャイナエアライン、マレーシア航空あたりが安いが、これも時期とプロモーション次第。この日あたりに行こうと日程を決めたら、なるべく早く航空券のチェックを始めよう。
 ただ、安さだけでなく時間帯にも気をつけたい。
 例えばバンコクを早朝5時に出発する便となると、深夜3時、事前にオンラインでチェックインしていても遅くとも4時には空港に着いておきたい。となるとホテルはどうするか……チェックアウトはだいたい昼の12時だから、1日分の宿泊費がかかるだろう。それだと逆に高くついてしまわないか。そのあたりも考えて時間帯を選びたい。
 もちろん行きと帰りで航空会社を変えたっていい。時間帯など自分にあったものを選びたい。
 さて、航空券の料金はLCCの場合あくまで「基本」だ。ここにいろいろと乗っかってくる。機内預け荷物の量、食事、さらに広いシート、機内wifi、保険……どれを選ぶか選ばないかは、旅行者次第だ。
 なお荷物だが、スクートは20キロまで機内に預けられる。機内に持ち込む手荷物は最大2個10キロまで。
 エアアジアXは機内に預ける場合はすべて有料。機内に持ち込む手荷物は最大2個計7キロまでだ。しかも大きさは高さ56㎝×長さ36㎝×奥行以内と細かい。重量オーバーしていなければいちいち計測されることはあまりないが、気をつけたい。

 

まずは空港からカオサン通りへ

 さて、いよいよ出発だ。
 スクートやエアアジアXなどのLCCでタイを訪れる場合、到着するのは北郊にあるドンムアン空港だ。バンコク東部のメイン空港、スワンナプームではないので注意を。
 イミグレーションで入国スタンプをいただき(日本人は空路入国の場合30日までの滞在にビザは不要)、いざタイ入国。到着ロビーに出て、異国の人々を見ると、旅に出てきた実感がきっとわきあがる。
 まずは両替だろうか。国際キャッシュカードやデビットカードなどを持ってきたならATMから引き出そう。SIMフリーのスマホを使う人は、空港でSIMカードを。タイの場合、1週間299バーツ(約1000円)~。容量には制限のない「アンリミテッド」だ。アクティベートはすべて店員がやってくれる。
 準備が整ったら、市内へ行こう。バックパッカーの聖地、カオサン通りだろうか。いちばんわかりやすくお手軽なのはエアポートバスだろう。A4のバスが各所に寄りつつカオサンのそばまで走っていて50バーツ(約170円)、運行は7~23時。「リモバス」というカオサン直行バスもあり、こちらは150バーツ(約500円)。所要時間は1時間前後だが、渋滞にハマるとさらにかかる。
 タクシーだと200~300バーツ(約670~1000円)くらいだろうか。ただし空港は悪質なタクシーのたまり場、メーターを使わず値段を提示してくるタクシーには乗らないように。
 格安の移動手段としてはローカルな路線バスがある。59番がカオサンまで行くが、混んでいることも多く、また高速道路を使わないので時間もかかる。鉄道も安いが本数が少ないのと、終点のホアランポーン駅からまたタクシーなどでカオサンに向かう必要がある。

 

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バンコクは東南アジア最大のメガロポリス。活気あふれる街を歩こう

 

 

*モデルルート徹底解説、次回へ続きます。お楽しみに!

 

*本連載は月2回(第1週&第3週水曜日)配信予定です。

 

*タイトルイラスト・野崎一人 タイトルデザイン・山田英春

 

 

『バックパッカーズ読本』編集部

格安航空券情報誌『格安航空券ガイド』編集部のネットワークを中心に、現在は書籍やWEB連載に形を変えて、旅の情報や企画を幅広く発信し続けている編集&執筆チーム。編著に究極の個人旅行ガイド『バックパッカーズ読本』シリーズなど。

 

紀行エッセイガイド好評発売中!!

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最新改訂版 バックパッカーズ読本

#62 『孤独のグルメ』に登場したテジカルビの魅力

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 先週放送された日本のTVドラマ『孤独のグルメ』ソウル出張編では、五郎さんが焼肉を楽しんでいた。牛カルビはあたりまえ過ぎるから登場しないだろうと予想していたが、案の定、メインはテジカルビクイ(豚肉の味付け焼肉)で、さすが人気番組と感心した。

 日本では韓国焼肉=牛肉というイメージが強いかもしれない。だが、牛焼肉は高価で、韓国でも“ごちそう”だ。庶民に気軽に食べられているのは豚肉のほうである。今回は、五郎さんが食べていたテジカルビの魅力についてお伝えしたい。

 

 

安くて当たり外れがない

01ソウルの薬水駅近くの人気店『ウソンカルビ』のテジカルビ。豚でも牛でもカルビは本来、骨付き肉のことを指す

 

 豚肉の質や管理方法の向上によって、豚肉を味付けしないでそのまま焼いて食べるサムギョプサルが普及して久しいが、80年代頃までは肉の質を味付けでカバーしているようなテジカルビのほうが存在感があった。

 もともと牛肉よりやわらかい上、醬油や砂糖、コチュジャン、ニンニク、ショウガ、おろした果物などを混ぜた甘めのタレに漬け込むため、さらにやわらかくなる。牛肉は高価な割に肉質に当たり外れがあるし、同じ豚肉でもサムギョプサルは冷凍肉だと肉がばさばさしていたりする。その点、テジカルビは安くて当たり外れがないのだ。

 

02テジカルビはタレに漬かった状態で出てくるのがふつう

 

03厨房で焼かれ、皿に盛られて出てくるタイプも

 

 

冷えた焼酎とテジカルビ

 日本では焼肉の友といえばビールだろうか。一方、韓国ではビールといえば、フライドチキンや炙った干しダラ、羊肉の串焼きなどを思い出す人が多い。豚でも牛でも焼肉となるとソジュ(焼酎)を思い出して、喉を鳴らす人が圧倒的だろう。

 同じ韓国人でも好みはいろいろだが、私は甘みのある食べ物にはソジュが合うと思っている。その意味でテジカルビにはソジュである。口中が甘→辛→甘の変化はじつに幸せなローテーションで、肉も酒もどんどん進む。

 マッコリはソウルの長壽(チャンス)をはじめとする一般的なブランドは甘みがあるのでもうひとつだが、ソウルでもたまに出合えるソミョンソプや済州など、すっきり系のマッコリならテジカルビにも合うだろう。

 

04テジカルビは店ごとにタレに特徴がある。これは光州で食べたもので、おろしニンニクがたっぷり使われたタイプ

 

05おろしニンニクの効いたテジカルビの焼き上がり

 

06大衆食堂の定番メニューのひとつであるチェユクポックムはテジカルビの親戚的存在。豚肉を野菜と一緒に甘辛く炒めたもの

 

 

葉野菜、そして白飯とテジカルビ

 サンチュをはじめとする葉野菜とテジカルビの相性も抜群だ。

 漬けダレの甘い複合味と葉野菜の苦味が口中でひとつになったときのことを思い出すだけで、そわそわしてくる。韓国が生んだ最高の食のハーモニーのひとつだと思う。

 

07テジプルコギはテジカルビの兄弟的存在。これは大邱で一般的なテジプルコギ。店先で炭火焼され、皿に盛られて出てくる

 

08テジカルビとニンニク、白飯をサンチュで巻いて食べるの図

 

 また、『孤独のグルメ』の五郎さんがそうだったように、日本人は焼肉とごはんをいっしょに食べる人が多い。

 私は90年代後半の日本留学時代、埼玉県朝霞市の焼肉店でアルバイトをしていたことがあるのだが、その店の焼肉の漬けダレを総じて甘いと感じていた。その理由を厨房長に聞くと、子供から大人まで幅広い層に愛されるためには、甘めの味付けが必須なのだという。私もまかないで焼肉とごはんをいただいているうち、そのとりこになった。日本は米が美味しいのでなおさらだ。

 その意味で、甘いテジカルビは白飯の最高の友である。私は日本での焼肉体験を思い出しながら、ソウルでもテジカルビ・オンザライスを楽しんでいる。

 

 

*7月22日(日)大阪で、筆者のトークイベント『チョン・ウンスクの「韓国全土、呑んで、歩いて20年」 』が行われます。過去20年間の取材旅行のエピソードや韓国大衆酒場の魅力を語ります。内容やお申込み方法は下記をご覧ください。

http://www.apeople.world/ja/culture/event_008.html

 

*本連載の一部に新取材&書き下ろしを加えた単行本、『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』が、双葉社より好評発売中です。ぜひお買い求め下さい!

 

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『韓国ほろ酔い横丁 こだわりグルメ旅』

定価:本体1200円+税

 

*本連載は月2回配信(第2週&第4週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

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#46 〈番外編〉オランダのニシンと宮古島のビーツ

文と写真・サラーム海上

 

大好きなニシン料理

 ゴールデンウィーク直前、TABILISTA編集部から早すぎるお中元が届いた。開けるとTABILISTAの特集記事「オランダ王室御用達ニシンとは!?」を読んで、美味そうだなあと舌なめずりしていたオランダ王室御用達の「クラウンマッチェス」ニシンだった!
 おお、これは願ってもない! 僕は専門こそ中東料理だが、北~東ヨーロッパの料理で用いられるニシン料理も大好きなのだ。

 

tabilistaニシン今年のお中元はクラウンマッチェスに決まり!

 

 僕は20代の頃に当時働いていた六本木にあったスウェーデン料理店でニシンのマリネの存在を知った。2000年代にはレコード会社が多く集まっていた赤坂見附のスウェーデン料理店のブッフェ『スモーガスボード』で、ディル味、パプリカ味、カレー味など様々な味付けのニシンのマリネに舌鼓を打った。
 オランダはこれまで二度訪れただけだが、最初のアムステルダム滞在の二日目にして運河の裏通りにあった塩漬けニシン「ハーリング」の専門店を見つけた。そこでたっぷりの刻みタマネギときゅうりのピクルスが添えられたニシンはトロトロの食感と濃縮された魚の味を満喫した。
 よっぽど美味そうな顔で食べたのだろうか。7年後に再訪したアムステルダムで真っ先にその店に飛び込むと、ひょうきんな顔をした主人が僕のことを覚えていてくれた。

 

tabilistaニシン2008年二度目のアムステルダム中心地

 

tabilistaニシン
運河の裏通りにあったハーリングの専門店、二度目もすぐに発見!

 

tabilistaニシン
ハーリングのほか、ビーツでマゼンタ色に色づけたハーリング、小海老、蟹の身など、好きなものをサンドイッチにしてくれる

 

tabilistaニシン
ハーリングを一皿、あっという間に食べてしまった!

 

 東欧やロシア系の移民が多いイスラエルでもニシンのマリネを高級ホテルの朝食ブッフェなどで目にする。朝食ブッフェはサラダやメゼ中心の中東料理コーナー、クロワッサンやチーズ、ハムなどの西洋料理コーナー、そして魚加工品中心の東欧~ロシア料理コーナーと分かれている。緑黄色野菜中心で色鮮やかな中東料理と比べると、東欧~ロシア料理は見た目がモノトーンだが、それでもセンスの良い国イスラエルらしく、ニシンのマリネや〆鯖やマスのマリネ、燻製のニシンが美しく並べられていた。

 

tabilistaニシン

イスラエルの高級ホテル朝食ブッフェでニシンのマリネや〆鯖
 
 さて、いただいたクラウンマッチェスで何を作ろうか? オランダ人のように刻み玉ねぎとともに一気食いするのも悪くない。でも、僕はロシア~ウクライナ料理の前菜「毛皮を着たニシン(セリョートカ・ポド・シューボイ)」を作りたい。
 ニシン、ビーツ、ゆで卵、ディル、そしてたっぷりのじゃがいもとマヨネーズ(場合によって人参、玉ねぎも)で出来上がっているこの料理。マゼンタ色のビーツやクリーム色のマッシュポテト、黄色の卵黄が多層に重なり、毛皮のコートのように見えるのでこの名前が付いたとも、20世紀初頭のソビエト革命時代に使われていた政治的なスローガンが元となったとも言われている。いずれにせよ冬の長いロシアらしい、お腹にたまる料理である。
 僕がこの料理を知ったのはロシア料理のレシピ本だったと思う。その後、何軒かの都内のロシア料理店で口にしたことで、現在では美味しいビーツが手に入ると、しばしば自分でも作っている。しかし、ニシンの塩漬けやマリネは(『IKEA』に行かない限り)簡単には手に入らないので、少々風味は変わるが、ニシンの代わりにどこでも手に入る〆鯖で代用していた。〆鯖でも十分美味しいが、こんなに美味そうなニシンが手に入ったなら、毛皮を着たニシンを作るしかない。後は美味しいビーツを手に入れるだけだ。

 

tabilistaニシン毛皮を着たニシン

 

宮古島の旅

 ところで僕はこのゴールデンウィークに二泊三日で宮古島に行ってきた。TABILISTA仲間のKOJIROさんの連載『2017 JALマイル修行&麺の旅』でもおなじみの「マイル修行」を、僕も今年一年かけて行っている。その一環で初めて宮古島を訪れたのだ。

 

tabilistaニシン5月5日午後6時すぎ、宮古島空港に到着。西に位置するので、まだ太陽が明るい!

 

 現地では人気インストゥルメンタル・バンド「BLACK WAX」の池村綾野&真理野姉妹にお世話になり、おすすめのビーチやお店に案内していただいた。
 宿に荷物を下ろし、最初に訪ねたのは島唄居酒屋『喜山』。海ぶどうや島らっきょう、スクガラス豆腐などをつまみながら、民謡歌手の與那城美和さんの歌声を堪能し、輪になって踊る踊り「クイチャー」を楽しんだ。
 ステージの終わった美和さんには、さらにディープな居酒屋『野咲家』に案内され、山羊の中身汁や皮のついた山羊の刺身、豚肉と血の炒め物「チーイリチー」、イカ墨そばなど、ディープすぎる宮古料理をいただいた。山羊肉をたっぷり食べたせいか、その晩は身体が火照ってしまい、明け方近くまで眠れなくなってしまった。

 

tabilistaニシンお世話になったBLACK WAXの池村綾野&真理野姉妹と與那城美和さん

BLACK WAX最新情報はこちら→https://www.facebook.com/BlackWaxMyahk/

 

 翌日は真理野さんに薦められた新城海岸に行き、エジプト紅海の町ダハブなみに美しいサンゴ礁でスノーケリングし、青、緑、黒、オレンジ、黄色、赤、白、マーブル模様の熱帯魚に囲まれた。海のきれいさにも驚いたが、ゴールデンウィーク中の日曜なのに、水泳客は数十人だけ。こんなに理想的な海水浴場を知ってしまったら、関東地方の海水浴場なんてもう行けない。

 

tabilistaニシン新城海岸のビーチ。まるで紅海かエーゲ海!

 

tabilistaニシン
海底の濃い色の部分はサンゴ礁!

 

tabilistaニシン
隣の来間島から来間大橋を時速35kmで走り、宮古島に戻る

 

 食い意地の張った僕が三日間の滞在中、繰り返し訪れたのは空港のすぐ脇に建つJAの直売所『あたらす市場』だ。広い店内にはトマトやピーマン、新玉ねぎなどの見慣れた野菜だけでなく、本州では見かけない興味深い野菜がたっぷり売られていた。
 葉物野菜なら長命草、モリンガ、パルダマ(裏が紫色の葉物野菜)、ヨモギなど、お浸しか、または生のままでサラダにしてもいただくという。ナンコウ(大型のかぼちゃの一種)は薄切りで、紅芋は茹でてからペーストにされて売られていた。
 その他、ゆし豆腐やら紅芋まんじゅうやら、見たこともないものばかりで、僕は興奮しすぎて、脳の情報処理能力がアップアップだ。
 そんなパニック状態の中、僕の大好物のビーツを見つけた。200gほどの中の小サイズのビーツがビニール袋に3つ入って、なんと200円と激安! しかも、表面にツヤと張りがあり茎までマゼンタ色に輝いている! おお、これは間違いなく甘くて美味いはず!

 

tabilistaニシンJAの直売所『あたらす市場』は宮古島食材のパラダイス!

 

 ビーツはテンサイ(砂糖大根)と同じ系統のヒユ科の根菜。東欧、ロシア、南アジア、南北アメリカ、そして中東でも広く用いられる。鉄分や一酸化窒素、カリウムなどが多く含まれ、一部では「食べる血液」とまで呼ばれている。生でも食べられるが、通常はたっぷりのお湯で茹でたり、アルミホイルを巻いてオーブンで焼いたりして、中までスッと串が通るまで火を通してから、料理に用いる。
 近年、日本各地でもビーツの栽培が始まり、スーパーでも時々見かけるようになった。しかし、ロシア料理のボルシチの他にはビーツを使った美味しい料理やその調理法がまだまだ知られていない。料理や調理法が知られてないのだから、ビーツ自体の品質もまだまだ安定していない。都内のスーパーでは、灰汁が強すぎるものや、甘くもなく土臭いだけのハズレを掴まされることも多々ある。せっかくオーブンで90分もかけてホイル焼きにしたのに、一口食べて、ハズレだった時の悲しさったらないよ~!
 お店で生のビーツを見つけたら、大きすぎず、小さすぎず、一個200gから最大500gの範囲がイイ。そして、皮の表面がマゼンタ色に輝いていて、パーンと張りのあるものを選ぼう。泥で覆われ、マゼンタ色が隠れているものは古いもの、質の悪いものが多い。重さで言うと、500g以上、特に700g以上のものは灰汁が強すぎたり、味がしないことが多いので避けるべきだ。ビーツは冷蔵庫の野菜室など冷暗所なら数ヶ月は保存出来る。その場合はラップでしっかりくるんでから放り込むと良い。

 

tabilistaニシン
ビーツを格安で発見! 宮古の人たちはどう調理して食べるのだろうか? 聞き忘れた

 

 そして、調理法。皮のついたまま、たっぷりのお湯で一時間ほど茹でるのが一般的だが、僕はホイル焼きをおすすめする。茹ですぎると旨みと鮮やかな色が水に流れてしまうからだ。ホイル焼きなら、色も甘さもさらに濃縮される。180度のオーブンで60分~90分焼き、スッと金串が刺さるまで火が通ったら、室温になるまでそのまま冷ます。
 そこまで下処理すると、あとは簡単。皮は指でツルッとむけるし、沢庵のように包丁でタンタンタンと切れる。美味しいビーツなら、切り目に羊羹やゼリーのようなツヤがある。焼いた後、皮をむかないままなら、ジップロックなどに入れて冷蔵庫なら一週間、冷凍庫なら数ヶ月保存出来る。ただし、いったん冷凍すると繊維が壊れてしまうので、サラダではなくペーストなどに用いるしかない。
 一番オススメの保存方法は、沢庵のサイズに薄切りにしてから、酢と塩、水、粒胡椒、お好みで砂糖または蜂蜜を加えたピクルス液を作り、漬け込んでしまうことだ。これなら冷蔵庫に入れて、数ヶ月は保つ。

 

 

ロシア料理「毛皮を着たニシン」を作ろう!

 さて、こうして宮古島から最高品質のビーツをトランク一杯持ち帰ることが出来た。宿願の「毛皮を着たニシン」を作ろう。
 調理したビーツやニシン、ジャガイモを普通のお皿に盛り付けても十分に美しく出来るが、今回はさらに見た目を重視! 直径15cmの底が抜けるケーキ型を使って、ベリー系のショートケーキと見間違うような状態に仕上げよう!
 クラウンマッチェスと宮古島産ビーツ、北国と南国の食材のマリアージュ! 2つの異なる地域の食材の仲を取り持ってくれるのは北海道産のメークイーンとマヨネーズだ!

 

tabilistaニシン毛皮を着たニシンの材料を並べます。では作ります!

 

■毛皮を着たニシン
【材料】
クラウンマッチェス:150g(四切れ)
ビーツ:中1個(300g)
じゃがいも(メークイーン系):450g
マヨネーズ:100g
卵:2個
ディル:1パック

 

*ビーツ用マリネ液
リンゴ酢(穀物酢でも):100cc
塩:小さじ1
水:50cc

 

*クラウンマッチェス用マリネ液
リンゴ酢(穀物酢でも):100cc
塩:少々
砂糖:小さじ2
黒胡椒:少々
ディル:3本
月桂樹の葉:2枚

 

【作り方】
1.ビーツはアルミホイルで包み、180度のオーブンで60~90分焼く。金串がスッと通るまで焼き、室温に冷ましてから、皮をむき、厚さ5mmのイチョウ型に切り分ける。ビーツ用マリネ液をプラスティック容器に入れ、よく混ぜ合わせてから、ビーツを漬け込む。

 

tabilistaニシンビーツはアルミホイルで包み、180度のオーブンで60~90分焼く

 

tabilistaニシン
イチョウ型または沢庵型に切ったビーツをマリネ液に漬け込む

 

2.クラウンマッチェスを解凍している間に、クラウンマッチェス用マリネ液を横長のプラスティック容器に入れ、よく混ぜ合わせる。解凍したクラウンマッチェスを容器に並べ、冷蔵庫で1時間おく。

 

tabilistaニシン解凍したクラウンマッチョスをマリネ液に漬け込む。少々甘めにしたほうが美味しい

 

3.大きな鍋に塩ひとつかみ(分量外)を入れたたっぷりの水を沸かし、沸騰したらジャガイモを入れ、15分~20分、金串がスッと通るまで茹でる。茹で上がったら、ザルにあげ、流水をあて、冷ましてから、皮をむく。

 

tabilistaニシン

ジャガイモをたっぷりのお湯で茹でる。金串がスッと刺さればOK

 

4.ジャガイモを茹でている間に、小さな鍋にお湯を沸かし、卵を茹でる。10分で取り出し、冷水に漬けて殻をむき、白身と黄身を分け、金属のザルの目を使ってそれぞれを裏ごしする。

 

tabilistaニシン茹で卵は白身と黄身に分けて、金属の網やザルなどで裏ごしする

 

5.ボウルに3のジャガイモを入れ、マヨネーズを加え、ポテトマッシャーでよく混ぜ合わせる。

 

tabilistaニシン

ジャガイモはマヨネーズを加え、ポテトマッシャーでつぶす。マヨネーズは少なめにして、ヨーグルトと塩(分量外)を加えると、多少軽く仕上がる

 

6.クラウンマッチェスを取り出し、食べやすい大きさ、2cm幅に切り分ける。

 

tabilistaニシンクラウンマッチェスをマリネ液から取出し、食べやすい大きさに切る

 

7.ケーキ用型の底に、直径15cmの円に切ったオーブンシートを敷く。
8.1のビーツを5mm角のサイコロ状に切り、オーブンシートの上に平らに敷き詰める。

 

tabilistaニシンオーブンシートを敷いた金属製のケーキ型の底に5mm角サイコロ切りにしたビーツを並べる

 

9.ビーツの上に4のジャガイモを加え、金属型の8割の高さまでシリコンベラを使って平らに敷き詰める。

 

tabilistaニシンマッシュしたジャガイモを加え、上を平らに延ばす

 

10.ジャガイモの上に6のクラウンマッチェスを敷き詰め、シリコンベラを使って平らにする。

 

tabilistaニシン
ジャガイモの上にクラウンマッチェスを敷き詰める

 

11.金属型の上に大きな平皿をかぶせ、中身をこぼさないように一気に裏返す。型を外し、円形のオーブンシートをはがす。

 

tabilistaニシン大きな皿に乗せて、ひっくり返したら、ケーキ型を外す

 

tabilistaニシン
オーブンシートをはがす

 

12.すりおろした卵の白身、黄身をたっぷり散らし、さらに、荒みじん切りにしておいたディルを色よく散らして出来上がり。

 

tabilistaニシン仕上げに白身、黄身、刻んだディルを用意

 

tabilistaニシン
「毛皮を着たニシン」完成! クラウンマッチェスと宮古島産ビーツのマリアージュ!

 

tabilistaニシン
ケーキ状に切り分ける。我ながら見るからに美味そう!

 

*完成したら、冷蔵庫でいったん冷やすと切りやすくなります!
*クラウンマッチョスのマリネ液にざく切りにした新玉ねぎ一個分を足しても美味しい。

*クラウンマッチョス・スモークを使っても美味しく出来ます!

*クラウンマッチェスはコチラのサイトから直接購入できるそうです。⇒http://taishu-celeb.com/cm-salt/

 

 

*著者の最新情報やイベント情報はこちら→「サラームの家」http://www.chez-salam.com/

 

*本連載は月2回配信(第1週&第3週火曜)予定です。次回もお楽しみに! 〈title portrait by SHOICHIRO MORI™〉

 

 

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サラーム海上(サラーム うながみ)

1967年生まれ、群馬県高崎市出身。音楽評論家、DJ、講師、料理研究家。明治大学政経学部卒業。中東やインドを定期的に旅し、現地の音楽シーンや周辺カルチャーのフィールドワークをし続けている。著書に『おいしい中東 オリエントグルメ旅』『イスタンブルで朝食を オリエントグルメ旅』『MEYHANE TABLE 家メイハネで中東料理パーティー』『プラネット・インディア インド・エキゾ音楽紀行』『エキゾ音楽超特急 完全版』『21世紀中東音楽ジャーナル』他。Zine『SouQ』発行。WEBサイト「サラームの家」www.chez-salam.com

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オリエントグルメ旅

   

#43 エルサレム『メクデシェット』取材記〈3〉

文と写真・サラーム海上

 

オールナイトの音楽プログラム

 2017年9月14日の深夜から15日早朝にかけて、エルサレムのフェスティバル『メクデシェット』では、13組のアーティストが出演するオールナイトの音楽プログラム「Night Stroll」と「Sunrise Concert」が開催された。
 音楽フェスティバルの取材は、基本的に座って音楽を聴いているので、それほど疲れはしないだろうと思われがちだ。しかし、幾つかの会場を移動し、一日に三~四組、場合によっては十組ものアーティストの演奏を聴き続けるのはやはり疲れる。
 海外では日本のコンサートホールや映画館のような快適なシートに座れることはめったにないし、オールスタンディングの会場も少なくない。大雨の野外でびしょ濡れになりながら音楽を聴き続けたこともしばしばある。そして、音楽は基本的に夜の世界に属している。定刻に始まるとは限らないし、予定どおりに終わるとも限らない。時差ボケに悩まされながら開演を待ち、全ての演目が終わって宿の部屋に戻ると明け方近くなんてことも珍しくはない。
 それでもメクデシェットはワールドミュージックやジャズ、伝統音楽など比較的アダルト向けなプログラムが多いため、終演時間も早く、最初の三日間は夜の12時前には宿の部屋に戻れた。連日の疲れでベッドで気絶するように眠るうち、いつのまにか時差ボケも解消したが、四日目は朝食終了時間の午前9時半ギリギリまで爆睡してしまっていた! ヒー、急いで朝食サロンに行かねば!
 さて、五つ星ホテルの朝食ブッフェでイスラエル名物のサラダやパティスリーをたっぷりいただき、一日分のお腹を満たしたので、後はナイト・ストロールに備えて、夜までホテルにこもることにしよう。

 

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ホテルの朝食ブッフェから中東料理コーナー、ホモス、タヒーニ、ピクルス、葡萄の葉のご飯詰めなど

 

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暑い午後はホテルのプールでのんびり泳いでから昼寝

 

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昼間のダビデの塔

 

 この日のメクデシェットは夜8時にダビデの塔でジャマイカの伝説的歌手二人、マイケル・プロフェットとホレス・アンディによる重量級のルーツ・レゲエから始まった。途中で最前列を離れ、ドリンクバーで友人たちと話していると、プレス担当のキムが僕を見つけて話しかけてきた。
「ナイト・ストロールの前にもう一つ見せたいプログラムがあるの。ここから歩いて10分ほどの所よ」
「もちろん行こうよ!」
 彼女が向かった先はダビデの塔を出て西に進んだ高級ホテル街の裏にある古いカルチャーセンターだった。受付の女性にプレスパスを見せると、なぜかシーツと枕カバーを渡された。これは一体? 会場に一歩足を踏み入れると、広い部屋には一面マットレスが敷き詰められ、その奥にはDJブースと小さなライブステージがあり、DJがゆる~いモンド~アンビエント・ミュージックをプレイしていた。照明はピンク色で、日本的な感覚だといかがわしい場所に来てしまった気分になる。
「これは『Glorious Dreams』というプログラムなの。参加者は自分の好きな場所に寝そべって、DJがその場でプレイする快眠のための音楽を聴きながら朝まで過ごすのよ。いわば快眠のためのDJパーティーなの」
 踊るためのDJパーティーではなく、快眠、良い夢を見るたけのDJパーティー! 日本でもこんなDJパーティーやれたら楽しいだろうなあ。これはフェスで疲れた足腰に最高にうれしい! さっそくマットレスにシーツを広げ、横になって、音を楽しむ。しかし、僕にはこの後、ナイト・ストロールが待っている。このまま朝まで爆睡なんてしてはいけない……。

 

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メクデシェット四日目、ダビデの塔のメインステージはジャマイカの伝説二人から始まった

 

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ダンスホール・レゲエの歌手、マイケル・プロフェット。彼は昨年12月に60歳で亡くなってしまった

 

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同じくレゲエのレジェンド、ホレス・アンディ。倍音たっぷりの声は全く衰えていなかった!

 

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深夜のカルチャーセンターでは快眠のためのDJイベント「Glorious Dreams」が行われていた。

 

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DJがジ・アート・オブ・ノイズの名曲「ロビンソン・クルーソー」をプレイしていた

 

 午前1時過ぎ、フと目を覚ます。いかん、今まで寝落ちしていたらしい。ナイト・ストロールは既に始まっている。急がねば! 来た道を歩いてダビデの塔に戻ると、メインステージではなく高い外壁の上や裏庭、地下室などの五ヶ所で同時にライヴが進行していた。

 簡単なタイムテーブルはもらっていたが、出演する十三組は僕が知らないアーティストばかりだったので、行き当たりばったりに歩いて回ることにした。すると、地下室ではジャズやポストロック系、外壁の上では小編成のアコースティック系やアヴァンギャルド系、クラシック系のアーティストが目立った。

 

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深夜のダビデの塔

 

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ダビデの塔の敷地内では五ヶ所同時にライヴが進行していた

 

 会場を文字通りストロール(さまよって)していると、メインステージの左奥にある裏庭のほうから耳に親しんだメロディーが聞こえてきた。1990年代末にアルジェリア人ロックンローラー、ラシッド・タハが歌い、世界中で大ヒットしたアルジェリアの歌謡曲「シャアビ」の曲「Ya Rayeh」だ。メインステージ脇を迂回しながら裏庭に近づくうちに、曲はやはり90年代のアルジェリアの歌謡曲「ライ」のヒット曲「Abdelkader」へと変わった。これもうれしい選曲だ! 

 

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裏庭のステージからはアラブの90'sヒット曲が聞こえてきた


 彼らは「Djerba Groove Project(ジェルバ・グルーヴ・プロジェクト)」という新人バンドだった。「ジェルバ」とはチュニジアの地中海に浮かぶ島の名前で、チュニジア随一のリゾート地。ジェルバ島では中世からユダヤ教徒とイスラーム教徒が平和に共存していたが、その平和は第二次世界大戦直後のイスラエルの建国と、それに続いた中東戦争でのアラブ連合の敗北によって破られ、多くのユダヤ教徒は土地を追われ、イスラエルへと移住した。
 ジェルバ・グルーヴ・プロジェクトはヴァイオリン、サックス、キーボード、ドラムス、エレキベース、パーカッション、カヌーン(中東の琴)、そしてヴォーカルの8人組。いかにもチュニジア系らしい、ガタイのいいヴォーカリストは頭にユダヤ教徒の印であるキッバをのせ、肩にはパレスチナやアラブの印であるカフィーヤ(白黒の市松模様のスカーフ)をかけていた。客席に原理主義者やテロリストがいたら「ふざけるな!」と爆弾をしかけられてもおかしくはない。自分はイスラエル人だが、自分のルーツであるアラブ~チュニジア~アルジェリアの音楽を愛する気持ちは本物だと示しているのだろう。

 

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アラブ有名曲のディスコ・カヴァー・バンド、ジェルバ・グルーヴ・プロジェクト

 

 彼らは90年代のライやシャアビのヒット曲をそっくりそのままに演奏するのではなく、ダンサブルなディスコ風にアレンジして演奏していた。そのため、最初は座り込んでいた観客もいつのまにか立ち上がり、ステージ前はちょっとしたダンスフロアと化していた。

 盛り上がりすぎたステージ前をクールダウンさせるためか、続いて彼らはスローテンポな曲を演奏し始めた。このメロディーも聞いたことあるぞ! アルジェリアの新世代ロックバンド、「Babylone」の2012年のデビュー曲「Jina」だ。「ジーナ」とはアラビア語で「美しい」や「ゴージャス」を意味する女性の名前。まだ見ぬ運命の女性を探しながら自分の道を貫くという歌詞と、アコースティックギター中心のフォーキーなサウンド、そして、地中海のビーチで撮影された旅情溢れるミュージックビデオにより、この曲はアルジェリア国内だけでなく、アラブ諸国全土で大ヒットした。Youtubeのビューワー数はなんと9700万回を超えているほどだ。
 若いヴォーカリストはそんな大ヒット曲を歌いながら、おもむろにステージを降りてきた。そして、最前列の僕の左に座っていたエチオピア系の褐色の肌の美女に向かって、ズボンの前ポケットから取り出した指輪を差し出し、その場でプロポーズをきめたのだ! 
 なんというパーフェクトなシチュエーション! 夏の夜のエルサレム、史跡ダビデの塔で、ライヴの最中にプロポーズされるなんて、彼女は予想だにしなかっただろう。彼女は突然のことに驚き、嬉し涙を流しながらも、彼のプロポーズを受け入れた。そして、その場にいた観客だれもが祝福の声をあげた。初日にスタッフから聞かされたとおり、メクデシェットにはやはり日常を超えた特別なマジックが存在する! こんなすばらしい夜、このまま明けないでくれ~!

 

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ジェルバ・グルーヴ・プロジェクトのヴォーカリストが最前列の女性にプロポーズ!

 

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お客さんもLEDを仕込んだ特別な衣装など、ドレスアップしてる!

 

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回廊の上ではチェロとハープギターの男女デュオによる前衛室内楽

 

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地下室ではジャズやヒップホップ、ポストロックなどの新鋭たちを聴くことができた

 

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日本盤アルバムもリリースしているジャズ~ヒップホップ系のトランペット奏者Sefi Zisling

 

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ダビデの塔には夜通しプロジェクションマッピング

 

 午前5時、メインステージで締めのサンライズ・コンサートが始まった。登場したのは「Dudu Tassa & The Kuwaitis(ドゥ・ドゥ・タサ&ザ・クウェーティーズ)」。「クウェーティーズ=クウェーティー兄弟」とは、1940年代にバグダッドで活躍したユダヤ人の作曲家、ダウードとサラーハのクウェーティー兄弟を指す。バグダッドで無数の曲を発表し、彼らの曲は当時のイラク国王にも愛されたが、やはりイスラエル建国にともない、ユダヤ教徒の彼らはイラクの国籍を剥奪され、故郷のバグダッドを追われてしまった。イスラエルに移住した二人は音楽活動を諦め、失意のままこの世を去っていった。そんなクウェーティー兄弟の曲を、ダウードの孫で現代の人気シンガーソングライターとなったドゥドゥ・タサが、アラブ音楽に精通したパレスチナ人の演奏家たちとともに演奏するのがこのプロジェクトだ。
 僕は2012年のエルサレムで、ファーストアルバムを発表した直後の彼らのライヴを観ていた。その時のことは拙著『ジャジューカの夜、スーフィーの朝 ワールドミュージックの現場を歩く』(DU Books)に詳しく記した。その後、彼らは二枚目のアルバムを発表し、レディオヘッドの前座として全米ツアーを行い、世界中のワールド系フェスティバルに出演していた。
 ドゥドゥはエレキギターをハードに弾きながら、祖父兄弟の曲をアラビア語で歌う。イスラエル人として育ったドゥドゥはアラビア語を解さない。それでも彼は現代アラブ音楽における最高の歌手たちにまったく引けを取らない歌唱力でアラビア語の歌を歌う。
 バンドはアラブ音楽に欠かせないカヌーン、ヴァイオリン、チェロ二台を中心に、ドラムス、エレキベース、キーボード、さらにゲストのパレスチナ人女性歌手という編成で、時に打ち込みを用いながらも、イスラエルらしい質実剛健な演奏を繰り広げる。5年前と比べると、グルーヴが増し、圧倒的な説得力が生まれていた。ドゥドゥはクウェーティーズのサウンドを「イラクン・ロール=イラクのロックンロール」と呼んでいる。現在のイラクやアラブ諸国には存在しない、唯一無二のイラクン・ロールである。
 午前6時20分、夜が明けて、白んでいく空をバックにドゥドゥ・タサ&ザ・クウェーティーズの演奏がクライマックスを迎えた。長い、最高の夜だった……。

 

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サンライズ・コンサートに登場したドゥ・ドゥ・タサ

 

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アラブ音楽に精通したクウェーティーズの面々

 

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いつの間にか夜が明けてきた

 

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サンライズ・コンサートの最後まで残った観客たち 


 メクデシェットはその日の午後に女性アーティストばかりが集まった「Closing Celebration」をもって終了した。メクデシェットは音楽面はもちろんのこと、エルサレムの抱える諸問題をテーマにしたコンセプチャルアートやバスツアー、そして会場の雰囲気から、現場でのオペレーションまで全てが世界第一級のフェスティバルだった。
 僕はあるフェスが気に入ると、二度、三度と繰り返し訪れてしまう。モロッコのジャジューカ・フェスしかり、トルコのカッパドックスしかり。僕にとってメクデシェットはまたすぐにでも再訪したいフェスとなった。

 

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クロージング・セレブレーションにはイスラエルを代表する2人の女性R&B歌手が共演。エチオピア系のエステル・ラダとウクライナ系のマリーナ・マキシミリアン

 

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メクデシェットのエンディング。9年間アーティスティックディレクターを務めたイタイは今回をもって辞任した

 

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5日間お世話になったシーズンオブカルチャーのキムとモーティ、そして日本から途中参戦したベーシストの松永誠剛君と記念撮影

 

 

エルサレムのケバブ屋で食べたタヒーニ・サラダ

 今回の料理はタヒーニ・サラダ。エルサレム旧市街にあるアラブ系のケバブ屋で、ケバブの付け合わせとして付いてくる一品。ざく切りにしたトマトとキュウリ、紫玉ねぎと青唐辛子、たっぷりのイタリアンパセリとほんの少々のにんにくをまな板の上に置き、ナタのような大きな包丁を両手で持って細かく刻んでから、たっぷりのタヒーニとレモン汁を和え、塩をふるだけ。

 作るのは簡単だが、一口食べただけでエルサレムのケバブ屋を思い出す味。ケバブや焼き肉、焼き魚の付け合わせとして最高なので、トマトが真っ赤で美味しい季節にこそ作ろう。

 

■タヒーニ・サラダ
【材料:作りやすい分量】
完熟トマト:1個(200g、へたを取りざく切り)
キュウリ:1本(皮をむきざく切り)
紫玉ねぎ:1/2個(皮をむき芯を取りざく切り)
青唐辛子:2本(お好みで増減、へたを取りざく切り)
イタリアンパセリ:1パック(ざく切り)
にんにく:1/2かけ(お好みで増減、皮をむきみじん切り)
タヒーニ:カップ1/2
レモン汁:小さじ1
塩:少々
EXVオリーブオイル:少々

【作り方】
1.ざく切りにした完熟トマト、キュウリ、紫玉ねぎ、青唐辛子、イタリアンパセリ、にんにくをまな板の上に集め、大きな包丁で5mm角程度まで更に刻みながら混ぜ合わせる。
2.1をボウルに入れ、タヒーニとレモン汁を加え、よく混ぜ合わせ、塩で調味する。
3.ボウルや茶わんに山型に盛り付けて、EXVオリーブオイルをふりかければ出来上がり。
 

 

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タヒーニサラダ。野菜を刻んでタヒーニと和えるだけ。なのに中東の味!

 

*著者の最新情報やイベント情報はこちら→「サラームの家」http://www.chez-salam.com/

 

*本連載は月2回配信(第1週&第3週火曜)予定です。次回もお楽しみに! 〈title portrait by SHOICHIRO MORI™〉

 

 

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サラーム海上(サラーム うながみ)

1967年生まれ、群馬県高崎市出身。音楽評論家、DJ、講師、料理研究家。明治大学政経学部卒業。中東やインドを定期的に旅し、現地の音楽シーンや周辺カルチャーのフィールドワークをし続けている。著書に『おいしい中東 オリエントグルメ旅』『イスタンブルで朝食を オリエントグルメ旅』『MEYHANE TABLE 家メイハネで中東料理パーティー』『プラネット・インディア インド・エキゾ音楽紀行』『エキゾ音楽超特急 完全版』『21世紀中東音楽ジャーナル』他。Zine『SouQ』発行。WEBサイト「サラームの家」www.chez-salam.com

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#13 スケベニンゲン港で獲れるオランダ王室御用達ニシンとは!? 〈番外編〉

オランダの塩漬け
オランダ王室御用達の生ニシンの塩漬け「クラウンマッチェス」   

 

「本当に旨い魚を現地でいただく!」をテーマにお届けする「全国漁港めぐり」。
今回は番外編として「世界の漁港」から、オランダのスケベニンゲン港で獲れる、
激ウマの「とろニシン」についてレポートします。
オランダ王室御用達の「クラウンマッチェス」が日本に上陸したとの報を受け、
漁港めぐり編集部のスタッフが噂の「生ニシンの塩漬け」の試食取材を敢行してきました。

日本人にもお馴染みのソウルフィッシュ「ニシン」をお届けします。

 

 

 

 

 

Netherland・Scheveingen——————————-Crown Maatjes
スケベニンゲンの「クラウンマッチェス」 
 

【オランダ・スケべニンゲン Scheveningen】

旬:6月

 

 

⑥スケヴニンゲン港
ニシンの水揚げ港として知られるスケベニンゲン港。
ニシンの加工に関して、なんと600年以上の歴史があるといわれる。

 

 

日本人には親しみやすい!?
花火とニシンが有名なオランダの港町

 

 スケべニンゲンという町をご存じの方はそう多くないと思う。オランダの南ホラント州にあるデン・ハーグ自治体に8つある地区のひとつで、北海に面した歴史ある港町、果てしなく続く長い砂浜と観光漁港があり、オランダはもとより、ヨーロッパでも有数のシーサイドリゾートでもある。アムステルダム中央駅からハーグ駅までは鉄道で約50分、スキポール空港からは約30分。ハーグからスケべニンゲンまでは路面電車で20~30分ほどだ。漁港近くのレストランでは、新鮮で様々な種類の魚料理が食べられる。これは余談だが、日本では「スケベニンゲン」と表記・発音されることが多く、「すけべ人間?」という変わった地名としてメディアに取り上げられることもあり、珍地名マニアの方には有名な町だったりもする(現地の発音に近いのは“スへフェニンへン”とのことだが……)。

 ここでは毎年8月にスケベニンゲン国際花火大会(International Fireworks Festival Scheveningen)が開催され、様々な国が参加して美を競っている。オランダでは夏に花火を楽しむ習慣はあまり聞かないが、夏に花火と聞けば、日本人には親しみやすい場所と言えるだろう。じつはここ、ヨーロッパでその名を馳せるニシンの町でもある。ニシンといえば、日本でも古くから親しみ深い魚でソウルフィッシュと呼んでもよい存在なだけに、ますます親近感を覚える。日本では、「ヤーレン、ソーラン♪」の唄で知られるソーラン節、ニシン漁の労働歌が原型の北海道民謡が有名だ。「ニシン来たかとカモメにきけば~♪」というフレーズのように、ニシンの群来は漁民にとって待ち遠しいものだった。春告魚(はるつげうお)とも呼ばれ、文字通り春を告げる魚として親しまれているが、スケベニンゲンでは夏の名物。ここで水揚げされるニシンは肉厚で、北海の豊穣な漁場で獲れたニシン特有の、おいしさと滋養が凝縮されているのだ。「ハーリング」という塩漬けニシンは、オランダの初夏の代表的な風物詩であり、「毎年ニシンの水揚げの時期には盛大なお祭りも開催されている。

 

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 オランダのニシンは大西洋ニシン(Atlantic herring)という種類で、同じニシンでも日本で獲れる太平洋ニシン(Pacific herring)とは産卵環境や生態が異なることから区別されることもあるが、見た目はほとんど変わらない。ハーリングという、このニシンの調理法は中世のオランダで生み出された酢漬け魚料理の一種で、大西洋ニシン(アトランティックハーリング)の若魚を生の状態でマリネにした料理のこと。ニシン漁が解禁される5月末から6月始めにかけて、デンマークからノルウェー沖の北海で獲れたものが使われる。なぜなら、この頃の大西洋ニシンは魚卵や白子がまだ発達しておらず、脂が乗っているからだ。まず「ロイヤルマッチェスへリング」と呼ばれる最初のハーリングを王室に献上し、その後で一般に解禁となるのだという。それゆえオランダ各地では毎年6月に「ハーリング解禁日」が設定されており、この日に魚屋さんが一般客に向けて初物のハーリングを売り出す。

 一方、日本のニシンの漁獲は産卵のために沿岸へやってきた時に行われるので、腹に卵や白子を持つものが多く、このニシンの卵巣がカズノコになる。カズノコや白子などは日本料理には欠かせない存在だ。そして、干物に加工した「身欠き鰊」は、保存に便利なタンパク源として日本各地に流通し、京都では身欠き鰊の煮物がおばんざいの定番となっているほか、日本各地で身欠き鰊の煮物や鰊漬けが伝統料理となっている。日本でも獲れたてで鮮度の良いものは刺身としても食されるが、オランダでは塩漬け、酢漬けで生のまま食べる。尻尾つまんで頭をのけぞらせ、一気にガブリといくのがオランダ流だ。同じニシンでも漁獲する時期が違い、食べ方も異なるのが面白い。

 この時期、街の魚屋さんや野外マーケットを歩いていれば「Hollandse Nieuwe(ホーランツェ・ニューヴェ)」の看板を多く目にすることができるはずだ。新鮮なハーリングを買って、その場で食べるのが醍醐味でもある。


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600年の伝統があるといわれる「マッチェへリング祭り」
​北海夏ニシンの水揚げで有名なスケフェニンゲン市で毎年開催される。
 

 

 

 

 

オランダ王室御用達の老舗ニシン加工工場で作られる

「クラウンマッチェス」とは!?


 創業140年以上というオランダ王室御用達のニシンの加工工場が、このスケベニンゲンにある。王室御用達の加工会社はオランダ国内でもここだけだ。厳選された北海夏ニシンのエラをとり、軽い塩水の入った樽に2日~3日ほど漬け、機械を使わず、職人の技と勘で塩加減と漬け時間を調整しているという。年間100万トンといわれる漁獲の中からわずか0.1%=1000トンのみが厳選され、「クラウンマッチェス」の名を冠してオランダ王室へ献上されている。「クラウンマッチェス」とは、見た目、味、食感すべてにこだわった「とろニシンの塩漬け」の最高級品のことで、産卵前のもっとも旨みが高く、脂がのった夏の3週間しか獲ることができない貴重な魚だけが使用される。岩塩だけを使用し、化学調味料や保存料、着色料などは一切使われていないというから、そのこだわりには敬服せざる負えない。

 そんななか、このオランダ産とろニシン「クラウンマッチェス」の試食ができるという話が舞い込んできた。身欠き鰊をはじめ、多くのニシン料理に親しんできた日本人に塩漬けニシン「クラウンマッチェスへリング」を広めようとPRしているのだ。それならば、日本人たるもの食べないわけにはいかない。取材班はさっそく、都内某所で試食することになった。

 


最高に脂が乗った夏の若魚は別格!
1年でも3週間しか獲れない希少なニシン

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北海夏ニシンを使用したオランダの代表的なアペタイザー、クラウンマッチェスへリング。
外食で最も人気な食べ方はカルパッチョのような、マリネやソース和え。

 

 まずそのまま食べてみた。これは…、お酒を欲する食べ物である。程よい塩味が効いており、生臭さはなく、生魚を食べ馴れた日本人にとって抵抗感はゼロ。ワイン、日本酒、焼酎…、どの酒とも相性は良さそうだが、ビールとの相性がすこぶる良いということが判明した。日本とオランダの関係を遡れば、江戸時代徳川幕府の鎖国政策の中、西洋国で唯一貿易を許された国であることは歴史の授業で習ったはず。この鎖国時代に多くのオランダ語が日本語に借用されるようにもなり、ガラスとかピストル、オルゴールなどはオランダ語が語源である。そのなかでも最も日本人の生活に溶け込んだオランダ語は、“ビール”だ。つまりビールをこよなく愛する日本人にとって、オランダ産の塩漬けニシンが口に合わないはずがないとも言える。「クラウンマッチェス」のちょうどよい塩分が、このうえなくビールに合うのである。

 もちろん日本でもニシンを食べたことがあるが、このトロっとした食感と独特な味わいはあまり経験がない。太平洋ニシンと大西洋ニシンで分類が異なるからなのかもしれないし、こだわりの素材と製造法で作られたハーリングだからなのかもしれない。とにかく、これまで食べてきたニシンの印象をガラリと変えてくれた。

 昨年、オランダ大使館で行われたイベントでも「クラウンマッチェス」を使ったさまざまな料理が供されたのだが、ここでそのいくつかをご紹介しよう。

 

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クリームチーズのバケットサンド】ハーリングをパンに挟んでサンドウィッチは、オランダでは一般的な食べ方。現地では「ブローチェ・ハーリング(Brootje Haring)」と呼ばれるオランダ独特のコッペパンを使ったものが有名。

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燻製とろニシンと男爵芋の香草コンフィ】ジャガイモとスモークニシンが意外なほどマッチ。ローズマリーの風味も効いてGOOD!

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【ニシンのカナッペ盛り合わせ】パクパクいけちゃうカナッペはワインのお供に最適。トマトとニシンの相性も抜群。

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【ニシンとトマトの香草パスタ和え】ニシンの塩味がパスタと絶妙に絡み、トマトの酸味も加わって食が進む。

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【手まり寿司】見た目も可愛く、食べやすいサイズ感。やっぱり日本人にはお寿司がしっくりくる!


「味に厳しい日本の皆様に、オランダの本場の味を発見していただくことを願っております」
とは、駐日オランダ王国大使館のラーディンク・ファン・フォレンホーヴェン氏のお言葉。この日のメニューは大使館ということもあり、さすがにお上品なものがほとんどだったが、ヨーロッパ流の味わいを堪能することができた。

 ハーリングはワインとのマッチングももちろん良いが、日本酒もイケる。きっと鎖国時代の在日オランダ人も長崎の出島で日本酒をお供にこっそり食べていたに違いない。保存の技術が今ほど発達していなかった江戸時代にハーリングを日本に持ち込むことは出来なかっただろうが、当時の日本はニシン漁で各地の漁村が栄えており、後にニシンで財をなした各地の網本の「鰊御殿」と呼ばれる豪邸がいくつも建ったほど。ニシンが大好きなオランダ人が、日本の鰊を塩漬けにして日本酒をひっかけていたとしても不思議ではない。そんな歴史ロマンに想像を膨らませながら、食べ進むうちに様々な調理法が頭に浮かんでくる。お寿司のネタ、酒のつまみに刺身として、そのまま食べても十分に美味しいのだが、お寿司にしても旨そうだし、炙って食べても美味しそう。とにかく酒の肴として完璧なことは間違いない。 

 

 

王室御用達の「クラウンマッチェス」は

日本でも手軽に購入できる!?

 

 オランダまで行かずとも、これを日本で食べられるとは、嬉しい時代になったものだ。最近ではTVや新聞など多くのメディアで取り上げられ、「クラウンマッチェス」を使ったレシピがSNSなどでアップされてもいる。王室御用達の高級ブランドでありながら、手頃な価格で手に入れることができるのも魅力のひとつ。ただ、日本に上陸したとはいえ、取扱いのあるお店はまだまだ限られているので、本格的に全国に広まるのはこれからかもしれないが、通信販売で買えるサイトもできたとのこと。試してみてはいかが?→http://taishu-celeb.com/cm-salt/

 

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【ニシンスモークの押し寿司】こちらのお寿司もしっくりくる!

 

オランダ国王に献上

オランダ新国王にクラウンマッチェスを献上(2013年)

 

 


NISHIN
‐Herring‐

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(ニシン)【学名:Clupea pallasii Valenciennes】

 冷たい海域に棲むニシン科の回遊魚​。大西洋ニシン(Atlantic herring)太平洋ニシン(Pacific herring)に分類されることが多い。外見はほとんど同じだが、産卵環境や生態が異なることから区別されていて、別種だとする研究者もいる。オランダのニシンは前者で外洋水に近い比較的塩分濃度が高く水温の高い水深10〜200mの砂地、石、岩に産卵する。
 一方、日本で獲れるのは後者で北太平洋に産し、北部太平洋をまたいでアラスカからカナダ、カリフォルニア北部辺りまで広い海域に生息。オホーツク海、日本の北海道沿岸などに広く分布する。産卵期は1月から6月頃で、5m未満の海藻などに産み付けられる。漁場は水深3~15mの岩礁地帯とその周辺で主に刺し網漁で獲る。同じ科のマイワシに似ているが成魚は30cmを越える。「ニシン」の名前の由来には諸説あり、身欠き鰊を作る際に身をふたつに割ることから、身が二つという意味で「二身(にしん)」となった説、アイヌの言葉で「漁獲が多い」「魚が群雄する」という意味の「ヌーシ」「ヌーシイ」が転化したという説もある。ちなみに「ニシンの子」なのになぜ「カズの子」なのか? アイヌの名称ではニシンのことを「カド」と呼び、「カドの子」が訛ってカズノコとなったと言われている。


【2017年クラウンマッチェスイベント・リポート】
@オランダ大使館出島ラウンジ

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2017年にオランダ大使館出島ラウンジで行われた「クラウンマッチェス」のイベントの様子をリポートします。前出の美味しそうなニシン料理の数々はこのイベントで提供されたもの。シェフは小濵雅説氏(シーライン東京シンフォニークルーズの総料理長)、井田仲弘氏(ホテルメトロポリタン総料理長)、矢部喜美夫氏(ホテル グランパシフィック LE DAIBA総料理長)、平塚浩一氏(ホテルベルクラシック東京 総料理長)、村田眞吾氏(藤田観光株式会社 総料理長)の5名が担当。なんとも豪華なパーティとなりました。

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