台湾の人情食堂

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#95

東台湾の魅力〈2〉池上編

文・光瀬憲子 

 台南や台中など、西側の都市は台湾リピーターに人気がある。一方、コアな台湾ファンにじわりじわりと浸透しているのが台東をはじめとする東台湾エリアだ。台東はここ数年、台湾人の国内旅行スポットとしても人気が高い。台湾の東側は変化に富んだ地形が魅力で、手つかずの自然が残っている。このため、単なる観光だけでなく、プラスアルファを楽しみたい旅行者に人気がある。今回は台東の池上エリアで楽しめる「プラスアルファ」の旅をご紹介しよう。

 

01台東から40キロほど北上したところに位置する米どころ、池上の稲穂の波

 

抜きん出た美味しいお米 

 台湾を旅行していると、街なかで「池上飯包」という文字を見かけることがある。「池上」は地名で、「飯包」は弁当を意味する。台湾は肉の調理法にはとてもこだわるものの、米の炊き方や麺の茹で方には無頓着だ。このため、台湾に暮らしていた当時はおいしい白飯になかなか巡り会えなかった。

 そんななかで、私が特に好きだったのが米粒の艶、硬さ、甘みなどにこだわった台湾の「池上米」。池上は、台鉄の台東駅から自強号で40分ほど北上したところにある台湾一の米どころである。

 台湾全土でチェーン展開している「池上飯包」は当然ながら100パーセントこの池上米を使っている。冷めても甘みがあって美味しいので弁当向きなのだ。池上米はもともと日本時代に日本から持ち込まれた米で、当時は日本の天皇に献上される「貢米」となった経緯もある。

 

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台北市内でも販売されている池上飯包。木箱は見た目がよいだけでなく、米の湿気を適度に吸って美味しさをキープする。今の時期、台東駅や池上駅で買って、車窓の黄金色の稲穂を見ながら食べるのは最高の贅沢だ

 

 

稲穂の海を自転車で走り抜ける 

 池上には米どころならではの楽しみ方がある。のどかな田園風景の中でのサイクリングだ。気温の高い台湾では冬の間も稲が育つので二期作が行われている。収穫は6月~7月と、11月~12月の2回。このため、収穫の2週間ほど前に訪れると、山々に囲まれた黄金色の稲穂の海を目にすることができる。台東も6月頃には暑くなるので、サイクリングなら5月、または10月〜11月にかけてが好機だ。

 池上駅に降りるとレンタル自転車店がたくさんあり、普通の自転車であれば1日100元~150元(350円~550円ほど)で借りることができる。変わり種の二人乗り自転車や、電動アシスト自転車などもあり、好みや体力に合わせて選ぶことができる。レンタル自転車店でサイクリングマップやおすすめの立ち寄りスポット情報ももらえるので、初心者でも安心だ。

 

03池上駅そばのレンタル自転車店。レンタル費用は通常の自転車なら100元~150元。初心者や外国人にもわかりやすいマップや情報も提供してくれる

 

04時間制限がないので自分のペースでサイクリングを楽しめる

 

サイクリングの前に肉まん屋さんへ 

 池上駅前で立ち寄りたいのは、朝ごはん代わりにもなる肉まん屋さん。自転車で乗り付けると、店頭では湯気の上がる蒸籠が何段にも積み上げられている。ふかふかで柔らかい皮の中にぎっしりと詰まった肉や野菜。小ぶりなサイズなので女性でも食べやすいのがうれしい。これから自転車に乗ってカロリーを消費すると思えば、罪悪感なく食べられる。

 

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朝ごはんにぴったりの『好朋友肉包店』。店先に自転車を止めて肉まんを頬張れば、気分は地元民

 

06甘みのあるふっくらとした皮とジューシーな肉。小ぶりなので女性でも2つくらいペロリ

 

 食べ物以外でもおもしろいアトラクションがある。『池上飯包文化故事館』だ。入り口には古い列車や線路が展示されていて、車内にはいることができる。

 館内には他では買えない希少な池上飯包が取り揃えられているほか、池上飯包の歴史も学ぶことができて興味深い。当時、台東から花蓮までは列車で8時間もかかったため、地元のおばあさんが上京する旅人のために駅のホームでおにぎりとタクワンを売り始めた。これが池上飯包の始まりだったようだ。

 

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『池上飯包文化故事館』の入口には古い列車が展示されている。ノスタルジックな雰囲気のSNS映えが期待できる

 

 サイクリングの最後に立ち寄りたいのが豆腐店だ。『福原豆腐店』のメニューは臭豆腐と豆花のみ。この店の臭豆腐は、「香炸豆腐」と呼ばれており、臭いどころかとても香ばしい。これなら臭豆腐NGの旅行者でもいけそうだ。外はカリッと香ばしく、中はふわふわの豆腐の食感。添えられたキャベツの漬物も甘味と酸味のバランスがよい。

 豆花はトッピングなどはなくシンプルだが、大豆の風味が濃厚。素材本来の甘さが口中に広がる。

 

08『福原豆腐店』の絶品「香炸豆腐」は臭豆腐独特の臭みがなく、香ばしい

 

09シンプルだが大豆の香りが濃厚で満足感のある豆花。スイーツ店ではなく豆腐店の豆花なので素材の味が生きている

 

 年に2度チャンスのある稲穂の中のサイクリング。初夏と秋は気候がよく、台湾旅行のベストシーズン。忘れられない思い出となるはずだ。

 

*光瀬憲子トークイベントのお知らせ

 本コラムの筆者・光瀬憲子が翻訳を担当した新刊『台湾漬  二十四節気の保存食』(翔泳社)の発売を記念し、12月5日(木)19時30分より、西荻窪の旅の専門書店「のまど」でトークイベントが行われます。日本からの旅行者が出合える台湾の漬物や、保存食づくりに長けた客家の人々の食文化について話します。詳細は下記で。

http://www.nomad-books.co.jp/event/event.htm

 

(つづく)

 

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*本連載は月2回(第2週&第4週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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