台湾の人情食堂

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#94

東台湾の魅力〈1〉台東編

文・光瀬憲子 

 新幹線が開通し、台湾の西側は移動が便利になった。台中、台南、高雄などは、台北の次に訪れる街として日本人旅行者の間でも知名度を上げている。それに比べると、東側の街はこれまであまり注目を集めることがなかった。

 だが最近、日本の旅行誌や書籍などで東台湾が紹介される機会が少しずつ増えている。東台湾旅行は、実は台湾人の間ではかなり前からブームになっている。西に比べてアクセスは悪いものの、手つかずの自然が残っていたり、人情味あふれる小さな町が多かったりして、小旅行には最適だからだ。

 今回から、東台湾の台東とその周辺の魅力を数回に渡って伝えていこう。

 

話題の映画『あなたを、想う。』のなかの台東 

 先日、鑑賞した台湾・香港映画『あなたを、想う。』は、台東の緑島という離島を舞台にした作品だ。台東出身の人たちは不器用だが実直なイメージがある。映画に登場する主人公たちは、台北という都会で暮らしてはみるものの、そこに馴染めず、幼い頃過ごした緑島に思いを馳せる、というシーンが何度か出てくる。

 

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台東の緑島が舞台となっている『あなたを、想う』(シルヴィア・チャン監督)は、海の描写が多い映画。セリフを追わず映像を見ているだけでも心癒やされる。2019年11月2日より渋谷のユーロスペース、横浜シネマリンほか全国で順次公開 

© Dream Creek Production Co. Ltd./ Red On Red

https://www.apeople.world/anatawoomou/

 

 都市化が進んだ西側と比べると、東台湾には昔の台湾の風景が多く残っている。植民地時代の日本家屋も散見され、高層ビルはほとんどない。

『あなたを、想う。』のクー・ユールン扮する主人公のひとりは緑島で観光ガイドの仕事をしている。台北から訪れる若者に島内を案内するのだが、洗練された都会の若者と、台東で暮らす不器用な主人公のコントラストがよく描かれている。

 

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映画『あなたを、想う』の劇中、緑島で観光ガイドをする主人公(クー・ユールン)。不器用で飾らず、都会になじめない素朴さと、やさしい心の持ち主

© Dream Creek Production Co. Ltd./ Red On Red

 

台東へのアクセス話題 

 台東へのアクセスは台鉄(台湾鉄路)という在来線か、または飛行機が便利だ。時間があるなら、台北から東ルートで台東まで南下する列車の旅をおすすめしたい。東台湾は地理的に変化に富んでおり、車窓に海や山のダイナミックな景観を楽しむことができる。

 台北から太魯閣(タロコ)号や普悠瑪(プユマ)号という特急列車に乗っても、台東まで3時間半~4時間かかる。通常の急行列車である自強号だと5時間近くかかるので、移動に半日を費やすことになる。

 そんなに時間を取れない場合は国内線飛行機を利用するといい。台北市内の松山空港を利用するのでアクセスも便利。800元弱(約2800円)の列車の旅に比べると、飛行機はやや割高の1500元前後(約5500円)だが、1時間弱で台東まで行けるので効率的だ。また、行きは旅情優先の列車、帰りは効率重視の飛行機という組み合わせもいいだろう。

 台東は空港も列車の駅も、市内から若干離れているのでバスやタクシーを利用して移動する必要がある。バスは本数が少ないので、時間が合わなければタクシー(12分程度)が便利だ。

 

03台北の松山空港から1時間足らずで台東空港へ。まるでバスに乗るように手軽に乗れるユニー航空の国内線

 

04台東空港から市内へはバスも出ている。30分~1時間に1本程度運行と少ないので、時間がない場合はタクシーで

 

台東を歩く 

 台東市内は道路が広く、バイクや車が行き交う主要道路が何本かあるものの、高いビルが少なく、のんびりとしている。

 台東は実は先住民や客家人が多く暮らす町としても知られており、独特の料理が味わえる。また、天后宮と呼ばれる大きな廟が人々の拠りどころとなっていて、この一角を中心とした旧市街に美味しいものが集まっている。特に寶桑路という小さな通りやその界隈には古い家屋や食堂が残っていて、レトロな雰囲気を楽しみながら散歩できる。

 

05台東市内の目抜き通り。ずらりと並んだ商店街の間をバイクが走り抜ける様子は台湾の地方都市でよく見られる光景

 

06台東旧市街にある天后廟。別名を媽祖廟といい、台東の人々の精神的支柱となっている。廟の周りには屋台が連なっている

 

台東を食べる 

 多彩な台東グルメのなかでも、特に台東人に愛され続けている揚げ物店が寶桑路にある。サツマイモや牡蠣のかき揚げなど、さまざまな素材を揚げてくれる店で、そのボリュームと美味しさにテイクアウト客がひっきりなしに訪れる。

 

07寶桑路にある人気揚げ物店『寶桑小吃部』。イートインのスペースは小さいので、テイクアウト客が多い

 

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店先で音を立てながら豪快に揚げている『寶桑小吃部』。どれを頼むか迷ってしまう。おすすめは「蚵嗲(オディエ)」と呼ばれる牡蠣のかき揚げとサツマイモ

 

 同じ通りで商っている屋台の緑豆湯も絶品だ。ここはおばあちゃんが一人で切り盛りしながら、手作りの味を何十年も守り続けている。

 緑豆湯は台湾各地で飲まれている緑豆の汁粉で、冬は温かいものを、夏は冷たいものをいただく。解熱効果があるので夏の暑い時期にはありがたい。丁寧に火を入れたおばあちゃんの緑豆湯は甘過ぎず、素朴な味わいがある。

 

09おばあちゃんが昔ながらの味を守っている寶桑路の『緑豆湯大王』。丁寧に煮込まれた緑豆湯は甘過ぎず、男性にも人気がある。

10冬は温かいもの、夏は冷たいものをいただける。緑豆には解熱効果がある

 

 台東食べ歩きで必ず訪れたいのが滷味(醤油煮込み)の店。人気店『林記阿達魯味麺食館』は市内でもちょっと外れた場所にあるのだが、わざわざ行く価値がある。店頭のショーケースに並んだ豚モツから好きなものを選ぶと、店の人が分厚いまな板の上でスライスしてくれる。

 モツだけでなく、バラ肉や頬肉、豚耳や尻尾などの希少部位も揃っていて、とにかく味がしみていて美味い。ビールなど酒も数種類置いてあるので、飲み会利用も楽しい。

 

11大皿に豪快の盛られた『林記阿達魯味麺食館』の滷味(ルーウェイ)。盛り付けも美しい。しっかりと味がしみていて、酒のつまみに最高

 

(つづく)

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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