韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#92

新刊『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』写真館〈4〉

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北端にある世運商街のビルの屋上庭園からは北側のひとつ隣の清渓商街ビルが一望できる。世運商街(撮影地)ビルと清渓商街ビルは建物両脇の2本の空中歩道橋で結ばれている(2019年8月撮影)

 

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世運商街ビルの内部は中央が吹き抜けになっていて、天井のガラス窓から外の光が差し込む。これほどゆとりのある造りは最近のビルでは不可能だろう。ここに仕事場がほしくなってしまった

 

 前回に続いて、ソウルの注目エリアを紹介する。

 今回取り上げるのは、ここ数年、存在感を増し始めたソウル旧市街を象徴する「ニュートロ(new retrospectiveの略)」の最前線といえる乙支路3街と4街の間に、東西を隔てるように建つ巨大雑居ビル『世運商街(セウンサンガ)』だ。

 世界遺産である宗廟(ジョンミョ)の前から忠武路(チュンムロ)駅まで、南北に連なる7棟(北から世運商街ビル・清渓商街ビル・大林商街ビル・三豊商街ビル・ホテルPJ・新星商街ビル・進陽商街ビル)の総称である。

 

世運商街ビルの屋上庭園に向かうエレベーターからの風景。手前にタシ世運広場、大通り(鍾路)を挟んだ向こう側に宗廟。その向こうの正面に北漢山、左手には北岳山が見える(2019年8月撮影)

 

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屋上庭園から南西方向を望む。右手は乙支路入口駅周辺の高層ビル街、左手には南山とNソウルタワーが見える(2019年8月撮影) 

 

世運商街の歴史、早わかり 

 1967年の竣工だから筆者と同世代だ。ソウルの中心部とはいえ、70~80年代は周辺に高い建物が少なかったこともあり、かなり存在感のある建物だった。しかし、90年代以降、周辺に高層ビルが建ち始め、世運商街の個々のビルの老朽化が進むと、その姿はかなり見劣りするようになった。

 世運商街は、東京でいえば秋葉原のような電機街だったのだが、80年代後半、漢江寄りの龍山(ヨンサン)に新たな電機街ができると、商圏として著しく衰退し始めた。

 当時の成人男性なら、このビル3階のバルコニー部分を歩いているとき、目つきのよくない男に、「裏ビデオを買わないか?」と声をかけられたことがあるはずだ。遅かれ早かれこのビルは撤去されるだろう。誰もがそう思っていた。

 30年後、このバルコニーがペデストリアンデッキ(高架遊歩道)として整備され、個性的なカフェやレストランができ、おしゃれした若者が闊歩するなど、想像もできなかった。

 

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2013年の世運商街。手前から左方向に清渓商街ビル、大林商街ビル、三豊商街ビルが並んでいる。この頃はまだ世運商街ビルと清渓商街ビルは空中歩道で結ばれていない(2013年10月撮影)

 

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世運商街の西側と東側には金属加工などの町工場が密集している。写真はこの辺りを舞台とした映画『嘆きのピエタ』(キム・ギドク監督、2012年)に登場した路地(2013年10月撮影)。世運商街はキム・ユンソク主演の『10人の泥棒たち』(2012年)やチョン・ウソン主演の『神の一手』にも登場しているので、ぜひ観てほしい

 

 2014年3月からは、世運商街の建物を生かしつつ、商圏として活性化させるプロジェクトが始まり、2017年には北端の世運商街ビルとその隣の清渓商街ビルを、清渓川をまたぐように結ぶ空中歩道橋が完成した。

 

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2017年、完成したばかりの空中歩道橋。清渓川をまたぎ、世運商街ビル(右)と清渓商街ビル(左)を結んでいる(2017年9月撮影)

 

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上の空中歩道橋を世運商街ビルの屋上庭園から見たところ(2019年8月撮影)

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空中歩道橋の西側から観た風景。2018年末、大きな話題となった町工場密集地域の撤去作業が進み、更地になっていた(2019年8月撮影)

 

10立ち退きになった工場は鍾路4街の世運スクエア(写真中央)に移転しているという(2019年8月撮影)

 

 現在、この1カ所のみが架橋されているが、2020年末までには大林商街ビルと三豊商街ビルの間(乙支路)、ホテルPJと新星商街ビルの間(マルンネギル)、進陽商街ビルと南山循環道路の間(退渓路)も架橋される予定だ。

 これが完成すれば、宗廟前から南山まで1キロ以上の空中散歩が楽しめるようになる。いわば、「第二ソウル路」の誕生である。

 

3階バルコニーが人気スポットに 

 世運商街3階の西側バルコニー部分には昨秋、『世運電子博物館』が新装オープンしている。北側から南へ進むほど時代が新しくなる常設展示を見れば、この一帯の電機街としての歴史がざっくりわかるようになっている。

 

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世運商街ビル3階の西側バルコニーには、かつては電機関係の簡易店舗が並んでいた(写真上)が、現在は『世運電子博物館』(写真下)が完成し、懐かしいオーディオ機器や80年代のPC、ゲーム機器などが展示されている

 

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『世運電子博物館』の外観

 

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廃材を再利用したアートも展示されている

 

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映写機、モニター、無線機、電子基板、80年代のマッキントッシュなど懐かしいものがずらりと並ぶ

 

 世運商街ビルから空中歩道橋を歩いて清渓商街ビルに渡る。東西のバルコニーでは、ここ1~2年の間にできた洒落たカフェやレストラン、バーが異彩を放っている。ほんの数年前までは若者には見向きもされなかった場所なのに、驚くべき変化である。

 

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清渓商街ビル東側バルコニーには、『ホランイ』や『イメルダ粉食』などの人気のカフェやレストランが並ぶ

 

 清渓商街ビルの東側バルコニーの北端にある『多錢食堂(タチョンシクタン)』は、元々この辺りで働く人たちのための大衆食堂だったが、ニュートロブームでテレビで紹介されて以来、毎夜、サムギョプサルでソジュを乾す若者でにぎわうようになった。

 

16世運商街ビルから清渓商街ビルに渡る空中歩道橋の夜景

 

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夜風に当たりながらの食事が楽しい『多錢食堂』。外での飲食は10月半ば頃まで続く

 

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世運商街の南端(忠武路駅前)にある進陽商街ビル。ビルとビルの間を歩道橋で結ぶ計画は、じつは1967年の竣工時からあったもの。技術的な問題から実現しなかったが、今回のプロジェクトによって50年越しの夢が叶うことになる

 

*次回は世運商街周辺の町工場のディープな雰囲気にどっぶり浸かりながら一杯やれる店をいくつか紹介する。

 

*取材協力

ソウル特別市(市民疎通企画館、都市ブランド担当館)

デジタル朝鮮日報

 

(つづく)

 

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 本連載を収録した新刊『美味しい韓国 ほろ酔い紀行』が、9月14日に双葉文庫より発売になります。韓国各地の街の食文化や人の魅力にふれながら、旅とグルメの魅力を紹介していきます。飲食店ガイド&巻末付録『私が選んだ韓国大衆文化遺産100』も掲載。ぜひご予約ください。

 

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*筆者の近況はtwitter(https://twitter.com/Manchuria7)でご覧いただけます。

 

*本連載は月2回配信(第1週&第3週金曜日)の予定です。次回もお楽しみに!

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

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