台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#90

知っておくと便利な食べ歩き用語事典〈前編〉

文・光瀬憲子 

 台湾旅行の最大の楽しみはグルメ。特に屋台での食べ歩きに重点を置く人も多いだろう。台湾では繁体漢字が使われているため、日本の人なら筆談で通じる言葉も多い。だが、ときとしてまったく通じない漢字もある。以前、台湾に遊びに行った友人が「屋台」と書いて台湾人に見せたところ、まったく通じなかったと困っていた。

 そこで今回は、旅行で役立つ「食のキーワード」を前編と後編の2回に分けて解説したい。

 

屋台=路邊攤 

「屋台料理を食べる」

これをどう言えば台湾人に伝わるのか? 実は案外難しい。「屋台」は台湾では「路邊攤(ルービェンタン)」と呼ばれている。「路邊」は道端、という意味、「攤」は「広げる」という意味がある。つまり、道端で食べ物や品物を広げる商売、という意味だ。

 

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台北の屋台街

 

 そしてもうひとつ、屋台グルメに関するキーワードが「小吃(シャオツー)」とうい言葉。「吃」は中国語で「食べる」を意味する。小さく食べる、つまり軽食などの屋台グルメを指すのがこの言葉だ。台湾と中国本土では使われている中国語が異なる。同じ北京語だが、漢字も用語も異なるため、台湾で使われる北京語のことを「台湾華語」と呼んだりする。「小吃」は台湾で発展した屋台グルメを表す特有の言葉なので、中国本土ではあまり使われていない。

 ちなみに、夜市は台湾でも「夜市(イエシー)」と呼ばれている。

 だから「夜市で屋台料理を食べる」は「夜市」と「路邊攤」と「吃」を組み合わせて「在夜市吃路邊攤」となるわけだ。

02 「在夜市吃路邊攤」(夜市で屋台料理を食べる)の図(板橋の夜市)

 台湾人はとにかく食べることを大切にする。一日三食、プラスおやつに夜食。本当によく食べる人たちだと感心してしまう。朝食を抜くだとか、コーヒーだけで済ませるだとか、そんなふうに食事をおろそかにしないのだ。

朝食=早餐、昼食=午餐、夕食=晚餐 

 朝食、昼食、夕食はそれぞれ早餐(ザオツァン)、午餐(ウーツァン)、晚餐(ワンツァン)と言う。屋台料理に対して、きちんとした食堂やレストランのことを「餐廳(ツァンティン)」と言う。

 台湾の食堂や屋台では、この朝、昼、夜がはっきり区別されている。早朝から昼にかけてしか営業していない朝食店や、昼前から夕方までしか営業していないランチ食堂などが多い。屋台は営業時間を過ぎるときれいに畳まれて、同じ場所に別の屋台が出たりする。食堂やレストランについても、午後3時くらいから休憩に入り、夕方5時から再開、という店がとても多い。旅行中は営業時間をよく調べておくと安心だ。

03 台北西部、艋舺(バンカ)で朝だけ商う牛肉スープの屋台

 一方で、深夜から早朝にかけて営業する店もある。豆乳や饅頭などを売っている朝食店だ。看板に「宵夜」と書いてあることがあるが、これは「夜食」という意味。タクシーが多い台湾では、タクシードライバーのためにこうした深夜営業の食堂も多くある。

 

速食=ファストフード 

 屋台や小さな食堂が多いため、なかなか根付かないのが台湾のファストフードだ。特に台南ではマクドナルドの展開が難しいと言われている。ファストフードは台湾では「速食(スーシー)」だ。英語からそのまま漢字にしているところがおもしろい。

 

菜食=素食 

 一方、この「速食」とまったく同じ発音の別の言葉がある。「素食(スーシー)」という看板を街なかの食堂で見かけたことはないだろうか。これは「ベジタリアンフード」という意味だ。台湾では宗教の関係でベジタリアン人口が案外多い。アメリカでベジタリアンやらヴィーガンやらが流行するずっと前から、台湾には素食文化が根付いていた。野菜はもちろん、豆腐を使った料理が充実しており、肉にしか見えない豆腐料理が幅広く用意されている。

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素食バイキングの店の料理。肉の代わりに大豆を多く用いたものが多い

 

スイーツ=甜品 

 もうひとつ、台湾旅行で外せないのがスイーツだ。スイーツは台湾では「甜品(テェンピン)」「甜點(テェンデェン)」と呼ばれる。「甜」は甘いという意味で、西洋のケーキやチョコレートも、台湾独特の豆花もすべて甜品・甜點だ。

 

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台湾の伝統スイーツ

 

 でもタピオカミルクティーがここに含まれるかというと、微妙な位置づけである。タピオカはやはり「茶」や「飲料」として分類されている。これは台湾独特の飲食店のあり方に関係しているようだ。例えば、かき氷を扱う店ではタピオカティーを扱わないし、タピオカティーを扱う店では豆花を扱わない。日本では「台湾スイーツ」とひとくくりにされて同じ店で扱う物でも、台湾では細かく分類されており、豆花は豆花専門店、タピオカはドリンク専門店で扱うのだ。海外に行くと「日本料理」というくくりでラーメンと寿司が一緒に扱われているようなものである。

 

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台北公館にある人気店のタピオカミルティー

 

 台湾の屋台や小さな食堂は、実に2~3種類だけのメニューを専門に扱い、それだけで生き抜くツワモノが多いのである。

 

(つづく)

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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