旅とメイハネと音楽と

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#88

西アフリカ・コートジボワール取材記〈4〉

文と写真・サラーム海上

アビジャンのホテル朝食ブッフェと屋台街

 3月10日火曜アビジャン、僕は朝の5時前に目が覚めてしまった。コートジボワールと日本との時差は9時間もあり、時差ボケはそう簡単には治らない。しかし、「アビジャン舞台芸術見本市 (Marche des Arts du Spectacle d'Abidjan)」、通称「MASA」の取材は続く。

 今回は滞在していたアビジャン・プラトー地区にある老舗三ツ星『Grand Hotel』の朝食ブッフェから紹介しよう。外国人宿泊客が多い宿だけに、朝食ブッフェは当然コンチネンタル(西洋式)メニューが中心だ。パンやピザ、コーヒーや紅茶、牛乳やジュース、オムレツにソーセージやベーコン、サラダにフルーツ、ヨーグルト、そしてケーキなどが並んでいる。

 アフリカらしい料理が何かないかと探すと、強いて言うなら煮豆料理がアフリカ料理ではないか。白いんげん豆をソーセージやベーコンの切れ端、唐辛子とともに煮込んだもの、ブラジルのフェイジョアーダやフェイジョンに使う黒い豆を少々の肉とともに煮込んだものは、普通のコンチンタル式のブッフェでは見かけない。

 他には、クミンを効かせた羊や牛肉の肉団子を玉ねぎやピーマンと一緒に煮込んだものも中東のキョフテ~コフタと通じる。この辺りを一皿に盛り付ければアフリカの朝食と言えるだろうか?

 

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Grand Hotelの朝食サロンで働く若者たち

 

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Grand Hotelの朝食ブッフェにて、コンチネンタルな朝食だが、少しでもアフリカっぽい豆料理をたっぷり盛り付けた

 

 他にもっとアフリカらしいものはないかな? ありましたフルーツが! 熱帯フルーツの定番のバナナ、パイナップル、パパイヤはあまりうれしくないけど、日本では高級フルーツ扱いのマンゴーが食べ放題なのは嬉しいね。

 マンゴーの木は至るところに生えているし、マンゴーだけが特別というわけではないのだな。しかし、僕はマンゴーだけ何個でもお代わりしちゃう! そのまま食べるのもいいけれど、フルーツを全て角切りにして、ヨーグルトと混ぜてサラダにしちゃうのもエエのぉ。

 

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街角の木になっていたマンゴーの実。羨ましい!

 

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バナナ、パイナップル、パパイヤ、そしてマンゴー!

 

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トロピカルフルーツを入れたヨーグルト、贅沢! これぞアフリカの朝食か?

 

 この日は午前中にプラトー地区の北端にあるMASAの事務所にキリスト教会の聖歌隊を観に行くことから取材を始めた。西アフリカではキリスト教、イスラーム教、更にヴォドゥンのようなアニミズムも広く信奉されている。キリスト教徒はミサの際に賛美歌を歌うが、欧米や日本で歌われている賛美歌とは随分異なり、ポリリズムやポリフォニー、叫びや笑い声、ボディパーカッションなどを駆使したアフリカ仕様に変容したものとなっている。

 午前10時、気温は35度近い暑さ、タクシーで10分ほどでMASAの事務所に到着した。事務所の広い庭の木の下で地元アビジャンの聖歌隊に加えて、トーゴやガーナから来た聖歌隊が三組に分かれてのんびりと練習していた。観客は一人もいないし、コンサートのための機材もない。メンバーに聞くと、この日は練習だけで、コンサートは別の日とのこと。トホホ。公式プログラムを見直すと、練習打ち合わせと書かれていた。プログラムくらいきちんと読めよ……。

 それでも11時半になると、三組が一つのテントの下に集まって合同練習が始まった。指揮者はガーナ人なので英語で話している。それをコートジボワール人がフランス語に訳してメンバーに伝え、その場で全員一緒に歌い始めた。

 地声の発声ではないが、西洋のベルカント唱法の賛美歌とは異なるし、アメリカのゴスペルとも異なる。特に男性が低音で歌うと、地鳴りのような不思議な響きが起こる。そして、その調和をぶち壊すように、叫んだり、囁いたり、胸を叩いたりも交える。ちょうどインドネシア・バリ島の「竹の交響楽」ジェゴグや、中央アフリカのピグミーのコーラスにも通じる気持ち良さだ。一つのテントに三十人以上も集まっているので暑さは尋常じゃないけれど、この音響にいつまでも囲まれていたい。きちんとした会場でのコンサートも楽しみだ。

 

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MASA事務所の庭で練習するコートジボワール、ガーナ、トーゴの混成聖歌隊

 

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今どきのアフリカの女性たちはスマホで楽譜を見ながら歌っている

 

 

 日陰で聴いていたにもかかわらず、正午を過ぎると気温がますます上がってきたので、いったん宿に戻ることにした。

 シャワーを浴び、冷房を18度に設定し、昼寝タイム。すると腹が減って目が冷めたので、午後3時前、今度はMASAのメイン会場文化宮殿へ向かった。

 まだコンサートには早すぎる時間なので、屋台街に行き、すっかり馴染みとなったマキ屋台「Les Delices de l'Ouest(西の美味いもの)」に飛び込んだ。炭火のBBQグリルの上には既にいただいた焼き魚と焼き鶏の他、バナナの葉やアルミホイルで包まれた蒸し煮の料理も並んでいた。

「これは何が入っているんですか?」

「これはブレゼ(煮込み)よ。中身は鶏肉か魚よ」

「では魚のほうを一つ下さい。いくらですか?」

「2500CFA(=約450円)です」

 バナナの葉で包まれているほうが欲しかったのだが、バナナの葉のほうは鶏肉で、魚はアルミホイル包みだった。なんとなく残念。

「ねえ、ムッシュー。そんなに写真を撮るのなら、私も撮ってよ!」といつもニコニコしている屋台の女将さんに話しかけられた。

「もちろん、喜んで。中に入っていいですか?」

 屋台の内側から女将さんを撮影し始めると、屋台の奥にいたおばちゃんたちにも「私たちを撮って!」と呼び込まれた。奥に足を踏み入れると、意外なほど広い場所が野外キッチンとなっていて、5人の女性が大鍋や地面に置かれたたらいの前で働いていた。

 

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連日お世話になったマキ屋台「Les Delices de l'Ouest(西の美味いもの)」

 

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ブリーチした髪と黄色いワンピースをコーディネートした屋台の女将

 

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炭火焼きグリルの上に並ぶアルミホイルで包まれた蒸し煮

 

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開けると中にはもちろんアオティラピア

 

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屋台の内側では女将たちが料理を美しく盛り付ける

 

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さらに屋台の奥は野外キッチン

 

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こちらが主役のアオティラピアたち

 

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アオティラピアとか、アオティラピアとか、アオティラピアとか、見た目はあまり美味そうではないが、味は悪くない

 

 おばちゃんたちから開放され、飲み物屋台のアニキからフランスのビール「カステル」を500CFA(=約90円)で買い、野外テーブルに陣取っていると、10分ほどで料理が運ばれてきた。アルミホイルで煮たシチューはタジン鍋のような土鍋に移され、再度温められ、お米とフライドポテトは別のお皿に供されていた。

 魚は当然いつものアオティラピア。トマトと玉ねぎ、青唐辛子、クミンとパプリカなどで煮込まれたシチューには白身魚の出汁がしっかり出ていて、白米にかけてネコマンマのようにしていただくのは悪くない。

 後に他の店の裏側で女性たちがコチンコチンに凍ったアオティラピアを水に入れて解凍してから鱗をガシガシ落としているのを見た。アオティラピアは冷凍保存して、常温解凍しても、肉質があまり悪くならない優れた食材なのだろう。

 

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飲み物屋台のアニキたち

 

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どこに行ってもビールはフランスのカステルが主流

 

 

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土鍋に移して運ばれてきたアオティラピアの蒸し煮

 

 食後、前日に続き、古い飛行機前のステージに若手アーティストたちによるショーケースライブを観に行った。ガーナの若い民族楽器オーケストラ、カメルーンのキリスト教ポップスの女性歌手を観た後、司会の男性が「次はマリの女性歌手Salome Dembeleです。僕はマリ人なので、どうしても贔屓してしまいますが、正直言ってアフリカではマリの音楽がナンバーワンです」と言ってから、彼女を紹介した。

 すると、まさにその通りの展開になった。木琴とトーキングドラム中心の民族楽器アンサンブルがとにかくパワフルでミニマルで、彼女の清楚な歌声も素晴らしく、昼からステージ前がダンス天国に急変した。ショーケースライブは新人の登竜門ステージで、MASAにおいてはあくまでサイドステージだが、僕は評価の定まった大御所より、新人のほうが面白く感じる。

 さて夕飯には何を食べようか? ティラピアとか、ティラピアとか、ティラピアとか?

 

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ショーケースライブの最前列にはマリやナイジェリアやガーナの音楽祭のオーガナイザーたちが並び、次代の才能を発掘していた

 

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客席に民族衣装と大型の反響装置付き親指ピアノを持ったナイスガイを見つけ、写真を撮らせてもらう。もちろんミュージシャンだった

 

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カメルーンの新人女性歌手Christiane Moukory。R&Bも入ったアフロクリスチャン歌謡だ

 

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マリの民謡ポップ歌手Salome Dembeleと民族楽器のバンドメンバー

 

 

トマトと香菜のサラダを作ろう

 

 今回のレシピはイスラエルで食べたトマトと香菜のサラダ。完熟のトマトをざく切りにして、紫玉ねぎ、たっぷりの香菜とともにヴィネグレットソースで和えるだけ。トマトが旬の季節に、毎日食べても飽きないサラダだ。

 

■トマトと香菜のサラダ

【材料:2人分】

ミニトマト(または完熟トマト):200g

紫玉ねぎ:1/2個

香菜:40g

塩:小さじ1/2

白ワインビネガー:小さじ2

EXVオリーブオイル:大さじ1

胡椒:少々

【作り方】

1.野菜は冷蔵庫でよく冷やしておく。紫玉ねぎはみじん切りにし、ボウルに入れ、塩、白ワインビネガーを加え、よく混ぜておく。

2.ミニトマトは縦2つ割り、香菜は粗みじん切りにし、1のボウルに加え、胡椒をふって、よく混ぜて出来上がり。

 

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トマトと香菜のサラダ。香菜を使ったサラダは中東ではイスラエルとモロッコ以外ではほとんど見かけない

 

(コートジボワール編、次回に続きます)

 

*この連載の一部をまとめた単行本を、今夏7月に刊行予定です。お楽しみに!

 

*著者の最新情報やイベント情報はこちら→「サラームの家」http://www.chez-salam.com/

 

*本連載は月2回配信(第1週&第3週火曜)予定です。〈title portrait by SHOICHIRO MORI™〉

 

 

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サラーム海上(サラーム うながみ)

1967年生まれ、群馬県高崎市出身。音楽評論家、DJ、講師、料理研究家。明治大学政経学部卒業。中東やインドを定期的に旅し、現地の音楽シーンや周辺カルチャーのフィールドワークをし続けている。著書に『おいしい中東 オリエントグルメ旅』『イスタンブルで朝食を オリエントグルメ旅』『MEYHANE TABLE 家メイハネで中東料理パーティー』『プラネット・インディア インド・エキゾ音楽紀行』『エキゾ音楽超特急 完全版』『21世紀中東音楽ジャーナル』他。最新刊『MEYHANE TABLE More! 人がつながる中東料理』好評発売中。『Zine『SouQ』発行。WEBサイト「サラームの家」www.chez-salam.com

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