台湾の人情食堂

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#87

台湾人と韓国人〈後編〉

文・光瀬憲子 

 似て非なる隣国、台湾と韓国。その違いを考えるシリーズ第2弾。前回は韓国人と台湾人の人付き合いや恋愛について比べてみたが、今回はもう少し社会的、文化的な部分を比べてみたい。

 

看板大国、台湾 

 台湾を初めて訪れたとき、街の中に「招牌」という看板がたくさんあるのを見て、知り合いに「あれはどういう意味?」と聞いたところ「看板」のことだと知った。つまり、台湾には看板屋さんがとても多いといのだ。

 今になってよく考えてみると、看板の需要が多い理由は2つあると思う。

 ひとつは、日本に比べて中小企業が多いため、会社や店の全体数が多く、またしょっちゅう起業したり廃業したりしているので、その都度、新しい看板が必要になるというわけだ。

 もうひとつは、飲食店の数が多いこと。台湾は外食大国だ。1日3食を外で済ませる人も少なくない。そして飲食店は特に看板を必要とする。

 

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「台湾は市場や屋台に活気があり、韓国より飲食店が多い気がする」は、韓国リピーターからよく聞く言葉

 

 一方、韓国はドラマなどからもわかるように、大企業を中心に社会が回っているようなところがある。台湾では「小さくても自分の城を持ちたい」と起業する人が多いのに対し、韓国人は子供の頃から高学歴を目指して勉強し、いい大学、いい会社へと進むことが立派だとされる節がある。日本もどちらかというと韓国に近い社会構造だから、中小企業や小さな飲食店で生計を立て、自己流に生きている台湾人がとても自由に見える。

 台湾の人々によく話を聞くと、やはり生活は苦しい、会社経営は大変だ、とみなグチをこぼす。それでもどこかのんびりしていて、「まあなんとかなるさ」という空気が漂うのは、台湾の温かい気候のせいもあるかもしれない。凍てつく冬をしのがなければならない日本や韓国と違って、台湾の冬はそこまで寒くない。作物が育ちやすいので食物が豊富で、暖房がなくても冬を越せる。

 

 

飲食業に対する意識 

 台湾人は外食することが多いと書いたが、それは夜市に並ぶ屋台や食堂の多さで旅行者の目にも明らかだ。韓国も外食文化は浸透していて、安くて美味しい店はたくさんある。

 ただ、台湾と韓国の最大の違いは、多くの台湾人が飲食業の経営に誇りを持っていることではないかと思う。台湾では外食が当たり前で、人気の飲食店はとにかく儲かる。私が学生時代に知り合った蚵仔煎(牡蠣卵焼き)屋台の一家は、1つ60元の蚵仔煎で4人の子供たちを海外留学や海外移民させた。お父さんのフライ返しが一家を支えていたのである。

 だから、台湾の飲食店は二代目、三代目と引き継がれるパターンがとても多い。一方で、韓国では大企業に勤めて認められたい、という心理が働くため、子に飲食店を継がせたい、親の飲食店を継ぎたいと思う人は多くないようだ。

 

02飲食業に対する矜持を感じさせる台湾の人々

 

 だが、さらに興味深い傾向もある。台湾人は飲食店経営に積極的で、台湾独自の食べ物を大事にする傾向があるものの、外国の食べ物にも寛容だ。これは、かつて台湾という島がオランダ、日本、中国など外国の支配下に長く置かれてきたことが関係している。独自の文化を持ちながらも、常に外からの政府を受け入れ、それに従ってきた台湾人は、外国の文化をうまく受け入れ、許容する体質ができている。その影響か、自国の文化を卑下する傾向も少なからずある。

 例えば、韓国は大企業が多いため、自動車やIT分野において自国の製品があり、国民もそれを支持している。一方で台湾は自社製品よりもOEMなどで力を伸ばしてきた企業が多く、縁の下の力持ちといった感じだ。他国に誇れるブランドがないため、日本やアメリカなどに強い憧れを抱いている。台湾に暮らしていた頃、よく台湾人に「どうして台湾に住みたいの? 日本のほうがよっぽどいいのに」と言われた。日本での暮らしに憧れて留学する台湾人も多い。

 そんな台湾だが、昨今では独自の文化を見直す傾向も出てきている。迪化街には台湾人アーティストがデザインしたお土産が並び、台湾で生産された台湾コーヒー豆のカフェもある。

 

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渋谷には韓国のトッポッキ屋さんと台湾のタピオカミルクティー屋さんが並んでいるスポットがある

 

 日本の渋谷では、韓国のトッポッキスタンドと台湾のタピオカミルクティースタンドが肩を並べている。どちらも若者の行列が途切れない人気店だ。積極的に日本で展開するアジア系飲食店の波に乗って、台湾や韓国の文化がより浸透していくのを願いたい。

 

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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