台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#86

台湾人と韓国人〈前編〉

文・光瀬憲子 

 台湾にハマるか、韓国にハマるかは紙一重だとよくいわれる。

 私が1990年代半ばに台湾にハマって台湾人と結婚したのは、たまたま台湾との出合いが早かったというだけで、先に韓国と出合っていたら韓国にハマっていたかもしれない。だから、韓国好きの人たちのなかにも、その逆は十分にあり得ただろう。

 どちらにハマるかは紙一重とはいえ、台湾と韓国は人も文化も言葉も食べ物も、大きくちがう。

 私は十年ほど前から縁あって取材で韓国を何度か訪れ、韓国の一般家庭にもホームステイ経験があり、さらに、韓国映画の日本語吹替版の翻訳を担当したことも多々あるので、いつのまにか韓国文化にも親しみを持つようになった。そこで、今回から2回に渡って台湾と韓国の印象のちがいについて触れてみたい。

 

 

飲食店と酒 

 台湾や韓国で食べ歩きをしている人ならわかると思うが、台湾の飲食店にはお酒の置いてある店が少ない。食事をしながらお酒を飲む習慣があまりないのだ。夜市には酒のツマミになりそうな鶏のから揚げや牡蠣オムレツが並んでいるのに、屋台でビールを飲んでいる人はほとんど見かけない。

 そもそも夜市の商売は回転率が命なので、お酒を飲んで長居する客はあまり歓迎されない。飲酒禁止の屋台や店もかなり多い。

 

01左がおなじみの台湾ビール、右が韓国で最近人気のTERRAビール。韓国では珍しいグリーンのボトル

 

 ところが韓国ではたいていの食堂に焼酎やビール、マッコリが置いてあり、食べながら焼酎の瓶を何本も空ける姿が目につく。日本よりもお酒に強い人が多いイメージだ。人付き合いや仕事の面でどこかのんびりとした雰囲気の台湾と比べて、韓国はスピード社会、ストレスの多い社会だというのも酒飲みが多い理由なのかもしれない。また、冬場は寒いので、暖をとる意味でアルコールがほしくなるという面もあるだろう。

02

飲酒スタイルにも台湾と韓国の差が。韓国では1本の酒を共有し、しきりに注ぎ合うが、台湾ではこの写真のように1人1瓶を気兼ねなく飲む姿をよく見かける

 

女性の飲酒と喫煙 

 台湾は日本や韓国と比べて飲酒・喫煙する女性が少ないように見える。

 台湾では女性の飲酒や喫煙は、はしたないこととされているのだろうか?

 いや、「女は〇〇をすべきではない」という男女差別は、韓国や日本のほうが強いと思う。台湾では家庭でも会社でも女性は強い。台湾は植民地時代に日本の影響を受けているため、女性に大和撫子的要素を求める部分も残っているが、基本的には韓国や日本以上に男女平等が浸透している。

 小さな島に多様な民族が暮らしているせいだろうか。台湾では民族、性、性的嗜好について個々のちがいを尊重する意識が発達しているように見える。

 

男性のやさしさ 

 私は過去に台湾に7年暮らし、台湾人と恋愛・結婚した経験がある。結局離婚して日本に逃げるように帰ってきた苦い思い出もあるのだが、それでも台湾男子のおおらかさ、やさしさは強く印象に残っている。

 どこへ行くにも送り迎え付き、食事をごちそうするのは当たり前。何をするにも女性の希望を聞いて、選択肢を与えてくれる。これは恋人関係にある男女に限らず、台湾人全般に言えることだ。

台湾で取材する際、地元の台湾人と知り合ったり、古い台湾の知人を訪ねて行ったりして、いろいろ世話になることが多い。そのときも、「〇〇がいい? それとも、△△のほうがいい?」と常に選択肢を用意してくれるのだ。

 

03

台湾のカップルで思い出すのが、露天の飲食店でなかよく食事をする姿と、スクーターに2人乗りする姿

 

 韓国も最近の若い男性には韓流ドラマに出てきそうなやさしい人が増えた気がするが、台湾と比べると「オレについて来い」タイプが多いと思う。

 取材で知り合う韓国人も、有無を言わさず自分のおすすめ店に連れて行ったり、取材に最後まで付き添ってくれる人が多い印象だ。ひとことでいうと押しが強いのである。面倒見がいいということに他ならないが、こちらのペースでものごとが運べないので、しんどいと感じることともたまにある。

 

04韓国のカップルで思い出すのが、スキンシップ。台湾は韓国より暑いということもあり、韓国ほどベタベタする姿は見られない

 

 

上下関係 

 男女関係だけでなく、上下関係に厳しいのも韓国の特徴だろう。

 日本でいう「体育会系ノリ」のように、目上の人を敬い、トップダウンで、上司に絶対服従のように見える韓国と比べると、台湾は案外アバウトだ。お酒の席でも誰が上司で、誰が部下なのかわからないように見える場面もある。

 会社などもよくいえばアットホームで和やか、悪くいえばルーズな職場が多いのが台湾だ。そんな環境だから、仕事帰りに一杯飲まないとやっていられない! というほどの人間関係のストレスも溜まりにくいのではないだろうか。

 

(つづく)

 

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著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

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