台湾の人情食堂

台湾の人情食堂

#83

西台北の輝き再び〈3〉雙連編

文・光瀬憲子

 台北を東西で分けたとき、中山路という幹線道路よりも西側のエリアを西台北と呼ぶ。雙連市場はそんな西台北の代表的な人気朝市だ。MRT雙連駅周辺はオフィス街なのだが、同時に美味しいものが集まるグルメスポットでもある。

 MRT淡水線雙連駅から民権西路駅までの600メートルほどのあいだに所狭しと屋台が立ち並ぶ。サトウキビのジュース、肉まん、果物、更には下着や化粧品まで品揃え豊かだ。ここは台北市の公有市場ではなく、文昌宮という日本統治時代に建てられた廟を中心に人々が集まった結果、徐々に雑貨店や飲食店ができた市場。だから市場の建物はなく、みんなが路面に店を出している。少し早起きして散歩をするにはもってこいのスポットだ。

 散歩がてらに朝ごはんを食べるなら、雙連市場周辺の選択肢は多い。なかでも地元の人たちに人気の4店を紹介しよう。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

サトウキビを削るおじいさんの目の前には洋服店が。これが台湾朝市の常識なのだ

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

雙連朝市にはネギを刻んだクレープ風、豆乳、肉まんなど買い食いできる屋台もある

 

豆乳 

 まずは朝ごはんの定番、豆乳から。

 雙連駅のすぐそばには日本人客もリピートする世紀豆漿大王があるが、今回はあえて地元民御用達の『佳佳豆漿店』を訪れてみよう。美味しい朝ごはんというのは、雙連朝市のメインストリートから路地に入ったところに隠れている。

 佳佳豆漿はメインストリートの中央付近にある文昌宮の脇の路地を東へ進み、民生西路3巷という1本隣の通りに出たところにある。すぐ目の前にある馬偕医院という総合病院の従業員御用達の店で、24時間病院で働く人々のために午前4時から店を開けるという。

 店の中央で鉄板の前に立つ主人と女将さんは早朝からにこやかに客を迎えてくれる。ここは出勤前のサラリーマンや登校前の親子など、地元の人達がよく訪れるが、観光客の姿はそれほど多くない。それでも雙連という場所柄か、日本語メニューが用意されているのでありがたい。

 シンプルな蛋餅(タマゴ巻き)やほんのり温かい豆漿(豆乳)は胃腸が動き出す朝にぴったり。豆漿は甘いもの・塩味・温かいもの・冷たいものを選べるので注文時に伝えよう。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

青い看板が目印の『佳佳豆漿店』は雙連朝市のメインストリートと平行する小さな通り沿いにある

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

途絶えることのない客足に主人も女将さんも大忙し。鉄板の上では常に複数の朝ごはんを調理中

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

筆者お気に入りの甘い豆乳プラス卵。温かいので卵がとろりと固まり、舌触りがよい

 

湯圓 

 佳佳豆漿と雙連朝市のメインストリートを結ぶ民生西路45巷9弄の路地に、3代目の女将がのれんを守るお団子の店『燕山鹹湯圓』がある。台湾では湯圓(タンユエン)として親しまれる、白玉団子に似た団子だ。

 ただし台湾では甘い湯圓とおかずとしての湯圓があり、この店は後者。朝の7時から午後7時まで、地元の人達の小腹を満たす軽食として重宝されている。肉餡入の団子スープはふわっとセロリの風味が漂い、さっぱりとして朝食にもぴったり。

 もうひとつの自慢のメニュー、意麺はお昼どきによく出るという。店内も小奇麗で過ごしやすいが、店頭に突き出した屋台テーブルに腰掛けて、女将さんと常連客の世間話を耳に湯圓スープをすするのもまた楽しい。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

肉餡の入った大きな湯圓(白玉団子)スープはほんのりセロリの香り。肉汁たっぷりの団子も絶品

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

60年続く老舗の『燕山鹹湯圓』は、常連客がおしゃべりに訪れるようなアットホームな店

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

雙連市場のメインストリートから1本路地を入ったところにあるので、旅行者は少ないが、女将さんが朗らかな笑顔で迎えてくれる

 

お粥 

 雙連市場から2ブロックほど離れた雙連街に色あせた看板を掲げるのは『雙連肉粥』(雙連鹹粥としても知られる)。この店も60年にわたり地元民に愛され続けている老舗。午前6時半頃から昼過ぎまでの営業だ。

 一人客が黙って粥を食べているかと思えば、小さな子どもを連れた家族がテーブルを囲んだりしていて、台湾における外食文化の浸透を改めて思い知る。

 シンプルなさらりとした粥だが、細切れ豚肉と小粒の牡蠣が入っているので旨味が凝縮されていてコクがある。お粥とセットでもう1品頼みたいのが紅焼肉と呼ばれる台湾人のソウルフード。豚バラ肉に衣を付けて揚げたものをスライスしている。薄く切ってあるので、バラ肉の脂がしつこくなく、お粥の伴にちょうどよい。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

雙連市場のメインストリートから2ブロックほど離れた雙連街と雙連街1巷の交差点にテーブルが並ぶ『雙連肉粥』

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

牡蠣と豚肉が入ったコクのある塩粥。これだけでも美味しいが、もう1つの看板料理、紅焼肉も是非一緒に

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

台湾の屋台では相席も当たり前。家族連れのとなりでサラリーマンが朝食を食べるのもごく自然な風景だ

 

 

 豆乳、団子、粥、と来たら最後は当然、麺である。台湾人は朝から麺を食べる。麺の種類は実に豊富だが、朝食として人気なのは米粉麺。小麦粉の麺と違い、米粉でできた麺は腹持ちがよく、口当たりがさっぱりとしていて食べやすい。味が染みやすいのでスープの旨味をよく吸い取ってくれて、時間が経つと麺にもほんのりと味がつく。

 雙連で地元の常連客に絶大な人気を誇るのが、民生西路のスターバックスのある路地を入ったところにある『雙連古早味大腸米粉湯』。赤い看板が目印だ。路地の角に屋台と木のテーブルだけのシンプルな店構えだが、常に地元の人たちで賑わっているのですぐそれと分かる。

 この店の売りは米粉湯(米粉麺のスープ)に豚頬肉のスライスをトッピングしたボリューム麺。案外さっぱりしているので朝食にもぴったりだが、ランチとしても十分食べごたえがある。早朝ならシンプルな米粉湯と揚げ豆腐という頼み方もおすすめ。すぐとなりのスタンドでは生搾りオレンジジュースが飲めるので、これからの季節、食べ歩きの水分補給に最適だ。

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

雙連市場脇のスターバックスの路地を入ったところにある『雙連古早味大腸米粉湯』は常連客でいつも賑わっている

 

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

自慢の米粉麺に豚頬肉をトッピングしたボリューミーな1品。米粉でできた麺がつるんとして食べやすい

 

14

『雙連古早味大腸米粉湯』のすぐ隣の生搾りオレンジジュース屋台。キャップ付きの小瓶(40元)は持ち歩きに便利

 

 何度訪れても楽しい雙連朝市。滞在中、毎朝訪れて、そのつど違った朝ごはんにチャレンジしてみてもいいだろう。

 

 

(つづく)

 

*7月の6日(土)と20日(土)、本コラムの筆者・光瀬憲子が都内で台湾旅行講座を行う予定です。詳細は追ってtwitterなどでお知らせします。https://twitter.com/keyword101

 

*本コラムの筆者・光瀬憲子が、7月から名古屋の『栄中日文化センター』で台湾旅行入門講座を行います。日程は7月17日、8月21日、9月18日、10月16日(いずれも第3水曜の15:30~17:00で)。内容やお申し込み方法など詳細は追ってお知らせします。

 

 

 

*双葉文庫『ポケット版 台湾グルメ350品! 食べ歩き事典』が好評発売中です。旅のお供にぴったりの文庫サイズのポケット版ガイド、ぜひお手にとってみてください!

 

ƒshoei

ポケット版 台湾グルメ350品! 食べ歩き事典

発行:双葉社 定価:本体648円+税

 

 

*単行本『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』が、双葉社より好評発売中です。ぜひお買い求めください!

 

台湾カバー01

『台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅』 

定価:本体1200円+税

 

 

 

*本連載は月2回(第1週&第3週金曜日)配信予定です。次回もお楽しみに!

 

 

taiwan_profile_new

著者:光瀬憲子

1972年、神奈川県横浜市生まれ。英中日翻訳家、通訳者、台湾取材コーディネーター。米国ウェスタン・ワシントン大学卒業後、台北の英字新聞社チャイナニュース勤務。台湾人と結婚し、台北で7年、上海で2年暮らす。2004年に離婚、帰国。2007年に台湾を再訪し、以後、通訳や取材コーディネートの仕事で、台湾と日本を往復している。著書に『台湾一周 ! 安旨食堂の旅』『台湾縦断!人情食堂と美景の旅』『美味しい台湾 食べ歩きの達人』『台湾で暮らしてわかった律儀で勤勉な「本当の日本」』『スピリチュアル紀行 台湾』他。朝日新聞社のwebサイト「日本購物攻略」で訪日台湾人向けのコラム「日本酱玩」連載中。株式会社キーワード所属 www.k-word.co.jp/  近況は→https://twitter.com/keyword101

紀行エッセイガイド好評発売中!!

taiwan00_book01

台湾一周! 安旨食堂の旅

taiwan00_book02

台湾縦断! 人情食堂と美景の旅

isbn978-4-575-31183-9

台湾の人情食堂 こだわりグルメ旅

ISBN978-4-575-71470-8

台湾グルメ350品! 食べ歩き事典

台湾の人情食堂
バックナンバー

その他のアジアの人情グルメ

ページトップアンカー