韓国の旅と酒場とグルメ横丁

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#82

古くて新しい鍾路3街の歩き方〈2〉

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 江南偏重、西部偏重(弘大偏重)だったソウルの人気エリア地図を、中心部の旧市街が塗り替えようとしている。その先鋒が益善洞(イクソンドン)を含む鍾路3街(チョンノ3街)だ。前回に続き、鍾路3街の魅力をお伝えしよう。

 日本の飲み屋に関する本や雑誌、ネットの書き込みを見ていると、ときどき「神様が降りてきているような場所」という表現に出合う。平たく言えば、とても絵になる場所、そこにいると不思議と高揚する場所というような意味だろう。

 たしかに我が国にも「神様が降臨している」と言いたくなる場所はある。私が通っている店、通り、ときには街ごとそれを感じることもある。

 今回は鍾路3街のなかで、そんな人知の及ばないポイントをいくつか挙げてみよう。

 

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※地図はクリックすると大きくなります

 

鍾路3街駅3~8番出入口のある屋台通り 

 今や鍾路3街のメインストリートと言ってもよい通り。ここでよく飲むようになったのがいつ頃からなのか覚えていないが、いまや韓流関係で大活躍の日本人の恋愛談義を明け方まで聞いたのが十年ほど前だった気がする。おそらくその頃から頻繁に通うようになったはずだ。

 

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屋台街(2018年9月末撮影)は鍾路3街5番出入口辺りから始まっている

 

上の写真と同じ場所で2018年末に撮った動画。後半に叫び声が入っているが、酔客がエネルギーを発散しているだけなので、怖がらなくていい

 

 当時は今のように通りの両側が屋台で埋めつくされてはいなかった。仁寺洞から鍾路3街の5番出入口のほうに向かい、終電までまだ少し時間があるから、屋台で軽く一杯やろうかというときに利用していたはずだ。

 

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5番出入口と4番出入口の間辺り。屋台だけでなく路面店にも個性的な酒場が多い(2018年9月末撮影)

 

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4番出入口の前辺り(2018年9月末撮影)

 

 十年くらい前は、前回も書いた同性愛者らしき男の子たちが占拠としている屋台街という印象だった。それ以外の利用者、とくに若者やカップルが増えたのはこの4、5年のことだろう。それはこの通りの北側に広がる益善洞の伝統家屋の一部がリノベーションされ、カフェやバーができ始めた時期と重なっている。

 初めてこの屋台街を利用する人はまずは金曜か土曜に行くべきだ。そのにぎわいは日本の人には祭りのように見えるだろう。なかでもとくに迫力があるのが、駅の3番と6番出入口付近だ。ここで飲んだり、酔客たちの写真を撮ったりしていると、「生まれてきてよかったなぁ」「人間ていいなあ」などと思ったりする。その理由を考えるより体験が吉。この連休にぜひ訪れてほしい。

 

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3番と6番出入口の間辺り

 

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有名な豚ハラミ焼肉店『味カルメギサル専門』に至る路地側から見た3番と6番出入口付近

 

 

『味カルメギサル専門』とその周辺 

 この店でどんなものが食べられるかは、拙著や本コラムでもさんざん書いたので割愛する。

 鍾路3街を散歩するとき、『味カルメギサル専門』の前を通らないことはほとんどない。磁場としかいいようのない妖気(陽気)が漂っているからだ。この店で飲むと気分が高揚し、痛飲し、正体をなくし、財布やスマホを忘れる人が多い。

 

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夕方、開店目前の『味カルメギサル専門』。左手に看板が見える『光州チプ』も人気店だ

 

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閉店間際の『味カルメギサル専門』。昨年、店の周囲を囲むテントが新調された

 

 ご夫婦の店で、年輩のご主人がまめまめましく働く姿がかっこよくて気分がよくなる。店がY字路の股の部分に位置しているので、店の両脇をご機嫌なゾンビ(酔客)が行ったり来たりするのを見るのが楽しいなど、理由はまさまざまだ。日本のみなさん、くれぐれもご油断なく。

 

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『光州チプ』側から見た『味カルメギサル専門』(写真中央の左手)

 

敦義洞と益善洞の境界線、『トンテジチプ』辺り 

『味カルメギサル専門』を正面に見て、左手の路地に入り、『光州チプ』の角を左折。そのまま路地を10数メートル歩き、路地を右折する。目と鼻の先にある最初の交差路の右手前が『トンテジチプ』というサムギョプサルの店だ。

 

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この路地を少し行くと右手に『トンテジチプ』が見えてくる

 

 70~80年代風の店構えは、作り物のレトロだとしてもじつによくできている。この辺りでは前述の『味カルメギサル専門』、『光州チプ』に次ぐ人気店といってよいだろう。

 

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『トンテジチプ』の昼と夜

 

『トンテジチプ』辺りの路地は、2009年に公開された日韓合作映画『カフェ・ソウル』(武正晴監督、斉藤工主演)の冒頭に登場している。その頃はまだ益善洞エリアが今のように賑わうとは誰も想像しなかった。当時、この辺りに目を付けるとは、さすが映画の世界の人というしかない。

  武正晴監督はこの数年後、『百円の恋』を撮り、同作はキネマ旬報ベスト・テンに選定され、主役の安藤サクラは主演女優賞を獲っている。

 

(つづく)

 

 

*筆者の近況はtwitter(https://twitter.com/Manchuria7)でご覧いただけます。

 

 

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紀行作家。1967年、韓国江原道の山奥生まれ、ソウル育ち。世宗大学院・観光経営学修士課程修了後、日本に留学。現在はソウルの下町在住。韓国テウォン大学・講師。著書に『うまい、安い、あったかい 韓国の人情食堂』『港町、ほろ酔い散歩 釜山の人情食堂』『馬を食べる日本人 犬を食べる韓国人』『韓国酒場紀行』『マッコルリの旅』『韓国の美味しい町』『韓国の「昭和」を歩く』『韓国・下町人情紀行』『本当はどうなの? 今の韓国』、編著に『北朝鮮の楽しい歩き方』など。NHKBSプレミアム『世界入りにくい居酒屋』釜山編コーディネート担当。株式会社キーワード所属www.k-word.co.jp/ 著者の近況はこちら→https://twitter.com/Manchuria7

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